2024年10月13日日曜日

13- 日本被団協にノーベル平和賞 核なき世界へ実相広める 被爆者の草の根運動を評価

 ノルウェー・ノーベル賞委員会は11日、今年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表しました。
 ノーベル賞委員会は、授賞理由として「広島と長崎の原爆生存者によるこの草の根の運動は、核兵器のない世界を達成する努力、また目撃証言を通じて核兵器が二度と使われてはならないということを身をもって示してきた」と評価。また、「日本被団協と他の被爆者の代表たちによる並外れた努力は、核のタブーの確立に大きく寄与してきた」とのべました。
 しんぶん赤旗に「ノーベル平和貴授貴理由」の全文が載りましたので併せて紹介します。
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日本被団協にノーベル平和賞 核なき世界へ実相広める 被爆者の草の根運動を評価
                      しんぶん赤旗 2024年10月12日
 ノルウェー・ノーベル賞委員会は11日、今年のノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に授与すると発表しました。長年の地道な活動で、被爆の実相を世界に広げ、核兵器の非人道性を明らかにし、核兵器禁止条約へのうねりをつくり出してきた活動が認められたものです。
 ノーベル賞委員会は、授賞理由として「広島と長崎の原爆生存者によるこの草の根の運動は、核兵器のない世界を達成する努力、また目撃証言を通じて核兵器が二度と使われてはならないということを身をもって示してきた」と評価。また、「日本被団協と他の被爆者の代表たちによる並外れた努力は、核のタブーの確立に大きく寄与してきた」とのべ、「肉体的な苦痛と痛切な記憶にもかかわらず、大きな犠牲を伴う自らの体験を、平和のための希望と活動にささげることを選んだすべての生存者に栄誉を授けたい」としています。
 日本被団協は被爆者の唯一の全国組織として、広島・長崎への原爆投下から11年後の1956年8月10日、第2回原水爆禁止世界大会の2日目に長崎で結成されました。結成宣言=世界への挨拶(あいさつ)は「自らを救うとともに、私たちの体験をとおして人類の危機を救おう」とのべ、「ふたたび被爆者をつくるな」と叫び続けてきました。
 原爆が被爆者のいのち、からだ、くらし、こころに加えた被害を明らかにし、「核戦争起こすな、核兵器なくせ」「原爆被害に国家補償を」の二大要求をかかげ運動。悲惨な体験を国内はじめ世界で証言し、国連での原爆展も開催。被爆の実相を広め続けてきました。
 2016年には、被爆者が初めて世界に呼びかけた「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(ヒバクシャ国際署名)を開始し、20年までに1370万2345人分の署名を国連に提出しました。
 こうした国内外での被爆者の訴えが世界の人びとを動かし、17年、核兵器禁止条約の国連会議での採択に大きな役割を果たしました。
 17年には核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が平和賞を受賞しています。

日本被団協代表委員 田中熙巳さん


 日本被団協がノーベル平和賞を受賞できたことは本当にうれしいです。
 ロシアが核威嚇を繰り返し、世界でブロック対立が起きている中、核兵器が使用されるのではないかと本気で心配していました。
 被爆者は、「核兵器と人類は共存できない」とずっと訴えてきました。そのことが多くの人に通じたのではないかと思います。
 被爆者が国内や世界で被爆の実相を広げ、共同のなかで核兵器禁止条約をつくらせてきました。さらに、核廃絶を目指した条約の強化に努めなければなりません。
 そのためには、日本政府が禁止条約を批准するだけでなく、核兵器廃絶に向け、世界のリーダーになってほしい。
 多くの皆さんに呼びかけたい。日本の禁止条約の署名・批准と、核兵器廃絶に向けて、一緒に声をあげ、行動してほしい。

         日本被団協のあゆみ

1945年 広島、長崎に原爆投下。終戦
  54年 米の太平洋ビキニ環礁での水爆実験で第五福竜丸など被災
  55年 第1回原水爆禁止世界大会(広島)
  56年 日本被団協結成。第2回原水爆禁止世界大会(長崎)
  63年 東京地裁、「原爆裁判」で「原爆投下は国際法違反」の判決
  77年 NGO被爆者問題国際シンポジウム-原爆被害を全面的に解明
  78年 第1回国連軍縮特別総会に日本被団協代表38人が参加
  82年 第2回国連軍縮特別総会(SSDⅡ)で、山口仙二日本被団協代表委員が
      演説。ニューヨークで100万人大行進
  96年 国際司法裁判所が勧告的意見「核兵器の使用と威嚇は一般的には国際法違
      反」
2005年 日本被団協ニューヨーク行動
  10年 日本被団協ニューヨーク行動。国連本部で原爆展
  15年 日本被団協ニューヨーク行動。国連本部で原爆展
  16年 「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」発表
  17年 核兵器禁止条約が国連会議で採択
  21年 核兵器禁止条約が発効



核タブー平和な未来の前提 日本被団協のノーベル平和貴授貴理由
                      しんぶん赤旗 2024年10月12日
 ノルウェー・ノーベル賞委員会が11日、2024年のノーベル平和貫を日本被圀協に授与すると発表した声明文の全文は以下の通り (原文は英語)。

 ノルウェー・ノーベル賞委員会は、2024年のノーベル平和貫を日本の団体、日本被団協に贈ることを決めた。被爆者としても知られる広島と長崎の原爆生存者による、この草の根の運動は、核兵器のない世界を達成する努力、また目撃証言を通じて核兵器が二度と使われてはならないということを身をもって示してきたことによって平和貫を受賞する。
 1945年8月の原爆による攻撃に対して、世界的な運動が起こり、そのメンバーは核兵器がもたらす破滅的な人道的結果についての関心を高めるためにたゆみなく努力してきた。徐々に、力強い国際的規範が発展し、核兵器の使用は道徳的に容認できないとの悪の烙印を押した。この規範は核のタブーとして知られるようになった。
 広島と長崎の生存者である被爆者の証言は、この大きな文脈において、比類のないものである
 この歴史の証人は、個人の物語に依拠し自らの体験に基く教育的キャンペーンを創出し、核兵器の拡散と使用に対して緊急の警告を発することで、世界中で核兵器に対する幅広い反対をつくり出し、強めてきた。被爆者は、描写を超えたものを描き出し、思考を絶したものを考え、核兵器が引き起こした理解を超えた痛みと苦しみをどうにか理解する上で私たちを助けてる
 ノルウェー・ノーベル賞委会は、それにもかかわらず、一つの励まされる事実を認めたい。それは、過去80年近く発の核兵器も戦争で使用されていないという事実である。日本被団協と他の被爆者の代表たちによる並外れた努力は、核のタブーの確立に大きく寄与してきた。だからこそ、核兵器使用に対するこのタブーが今日圧力を受けていることは、不安を呼ぴ起こしている。
 核大国は、保有核兵器を現代化・改良しつつある。新たな諸国が核兵器を取得する準備を進めているように見える。現在進行中の戦争で核兵器を使用するとの脅迫が行われている。人類史のこの瞬間において、核兵器とは何かを思い起こす価値がある。世界が目にしたこれまでで最も破壊的な兵器だということを。
 来年は、米国が投下した2発の原爆が、広島と長崎で推12万人の住民を殺害してから80年である。それに匹敵する数の人々が、その後の歳月でやけどや放射線障害で亡くなった。今日の核兵器ははるかに大きな破壊力を持っている。数百万人を殺害する能力を持ち、気候に壊滅的な影響を与えるだろう。核戦争はわれわれの文明を破壊しかねない。
 広島、長崎の業火を生き残った人々の運命は長い長い間、隠蔽され、無視されてきた。1956年、各地の被爆者団体は太平洋での核実験の犠牲者とともに、日本原水爆被害者団体協議会を結成した。略称は日本被団協である。同団体は、日本で最大かつ最も影響力のある被爆者の組織となった。
 アルフレッド・ノーペルの世界観の核心は、真剣に取り組む個人は変化をつくり出せるという信念だ。今年のノーベル平和賞を日本被団協に授与することで、ノルウェー・ノーベル賞委員会は、肉体的な苦痛と痛切な記憧にもかかわらず、大きな犠牲を伴う自らの体験を、平和ための希望と活動にささげことを選んだすべての生存番に栄誉を授けたい
 日本被団協は、核軍縮が緊急に必要だというごとを世界に想起させるために、数千の証言を提供し、決議や公的なアピールを出し、毎年、国とさまざまな平和会議に代表を送ってきた。
 いつの日か、歴史の証人としての被爆者は、私たちのなかに存在しなくなる。しかし日本の新しい世代が、力強い記憶の文化と粘り強い献身を通じて、被爆壽たちのメッセジと体験を引き継ぎ、前に進んでいる。彼らは世界中の人たちを励まし、教育している。このようにして、彼らは核タブーを維持することを助けている。これは、人類にとって平和な未来の前提となるものである。
 2024年のノーベル平和貴を日本被団協に授与する決定は、アルフレッド・ノーベルの遺志を確実なものにするものである。ノーベル貴委員会は、核軍縮と軍備管理の闘士たちに平和貴を授与してきたが、今年の授貴は、その輝かしいリストに新たに名を加えるものである。
 2024年のノーベル平和貴は、人類にとって最大の利益となる努力を認めるというアルフレッド・ノーベルの遺志を実現するものである。
                          2024年10月11日 オスロ


ノーベル平和賞 日本被団協受賞
これが国際社会の声「核抑止」から脱却 今こそ
                      しんぶん赤旗 2024年10月12日
 1945年8月、広島・長崎に原爆が投下され、まもなく80年となるタイミングで、核兵器廃絶に向けて地道な取り組みを続けてきた日本被団協がノーベル平和賞を受賞しました。長年、核兵器廃絶へ国内外で地道な努力を続けてきた被団協や無数の被爆者、そして街頭で署名に取り組んできたすべての市民に対する評価といえます。

 2017年、人類史上初めて核兵器を違法化した核兵器禁止条約が国連で122カ国の賛成により採択され、同年のノーベル平和賞は核兵器廃絶国際キャンペーン(CAN)が受賞。そして今年は、同条約の採択を草の根の運動で進めてきた日本被団協の受賞です。核兵器はいかなる理由でも二度と使用してはならない、核戦争は絶対に起こしてはならない、核兵器は今すぐに廃絶しなければならないというのが、国際社会の明確なメッセージであるといえます。
 世界の現状を見れば、ロシアが繰り返し、ウクライナでの核使用の可能性を明言。米国や中国は核弾頭や戦略爆撃機・潜水艦の近代化を進めています。ノーベル委員会はそうした現状を踏まえ、「人類史上のこの瞬間に、核兵器が何であるかを思い起こす価値がある。核兵器とは、世界がこれまでに見た中で最も破壊的な兵器である」と指摘しています。

 本来なら、唯一の戦争被爆国である日本政府がそうしたことを国際社会に訴え、「核兵器のない世界」を主導する責任があります。ところが、政府は米国の「核抑止」に固執する立場から核禁条約への参加を拒否。同条約締約国会議へのオブザーバー参加さえ否定しています。そればかりか、「核の傘」=「拡大抑止」をいっそう強化するための日米閣僚級協議まで創設しました。石破茂首相にいたっては、就任直前に発表した米シンクタンクへの寄稿文で、米国との「核共有」や「核持ち込み」を主張“国是”である「非核三原則」を明確に否定。最悪の補完勢力である維新・国民も「核共有」や原子力潜水艦の保有を繰り返し主張しています。
 立民の主張も核禁条約締約国会議へのオブザーバー参加にとどまっており、条約参加を明言していません。

 政府やこれら各党に共通しているのは「日米同盟絶対」の立場です。中国やロシアに対抗するため、米国の「核抑止」を絶対視していることです。
 政府はこれ以上、国際社会に恥ずべき姿をさらすことをやめ、ただちに核禁条約への参加を決断すべきです。核兵器の惨禍を訴える先頭に立ち、「核抑止」から抜け出す道を選ぶべきです。(竹下岳)