世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました。
記事ははじめに「30年前に小選挙区制に変わって以降、選挙をするたびに政治は悪くなって行った。国民生活も社会制度も外交も、選挙のたびに悪くなり、悪い方へ悪い方へ変わって行った」と書いています。
この30年間の中ほどの2009~2012年(約3年3ヵ月間)には、国民の輿望を担って民主党政権が登場しました。しかし鳩山由紀夫政権は党内の反対勢力によって9か月ほどで引きずり降ろされ、菅直人内閣そして次の野田佳彦政権に移る間に支持率は底をつき、再び自民党に政権を奪い返されてしまいました。民主張政権がひと時のアダ花で終わった原因は、彼らはそもそも政権担当の経験も覚悟もないままに政権につき、マニフェストを疎かにする党内の異端分子が政権に就いたためで、菅・野田の両首相とも財務省に取り込まれて、消費税率のアップを目指したことで国民の反感を招いたからとされています。
そして「選挙後の永田町の構図を描くと、自民党の党内抗争の末に、①高市自民と維新の右翼系、②石破自民と公明と野田立憲・玉木国民の保守中道系、③リベラル左派の弱小政党群、の3勢力に分かれて対抗する配置が展望される」と、世に倦む日々氏は見ています。
そうなると「少なくとも過去4回の国政選挙では、(1)安保法制と(2)消費税5%と(3)原発という大きな問題が争点となってきたが、今回、野田立憲党が(1)(2)(3)で自民党と基本政策を合わせたことにより、(1)(2)(3)は国政を二分する争点ではなくなり、(1)(2)(3)は無視していい〝左翼の政策要求″となってしまった」としています。
また日本の現実を見れば、「中小企業の倒産件数が10年ぶりの多さになっていて、その原因は物価上昇によるコスト高であり、とても経営努力で対応できるレベルではない。為替を適正化するしかないが、マスコミはそうした要求はせずに株価が下がるから金利はゼロ水準に抑えよと言うが、間違っている」と述べています。
「粉ミルクが値上がりしたため赤ちゃんに薄めて飲ませているシングルマザーがいる。ミルクを薄めると栄養やカロリーが不足し、脳の発育・発達が遅れるリスクがある」「新宿では若い女性が毎晩何十人も立ちんぼ売春しているのに、そうして現実をそのままにして選挙が行われている」「東京23区で熱中症疑いでの死者が248人という報道があったが大半が高齢者で、うち8割余りの213人がエアコンを使っておらず、その中の58人がエアコンのない部屋で命を落とした」「日本国憲法25条には〝すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する″という規定があるのに何故、熱中症死しなければならなかったのだろうか」とも述べています。
「7月には〝広がる若者の孤独死″の報道があった。3年間に東京23区で742人が確認されている。~ 大半は自殺に違いない。精神の疾患、あるいは身体の重病を抱えていた可能性がある。餓死もあるかもしれない。彼らは、若いのにどうして死ななければならなかったのか。憲法25条は彼らを救えないのか」「これは貧富の差の拡大と窮乏化の問題であり、資本主義の矛盾の問題である。こうした注目されない悲劇の一方で、資産家とその子たちは株で大儲けし、Xで日銀に金利を上げるなと圧力をかけ、資本主義日本の繁栄を謳歌している」「何故国会で取り上げないのか」とも。
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政界再編含みの裏金解散総選挙 ー 選挙をするたびに政治は悪くなり国民は不幸に
世に倦む日日 2024年10月11日
10/1 に石破政権が成立し、10/9 に衆議院を解散した。野党の選挙協力態勢が整わない間に、総裁選で「選挙の顔」の看板を挿げ替え、マスコミを使って宣伝を撒き散らし、電光石火で解散して現有議席を維持しようという、いつもの自民党の選挙戦略が、予定どおり目論見どおりに今回も目の前で繰り返された。8/14 に岸田文雄が退任表明し、総裁選が事実上始まって以降、ずっと永田町のニュースで社会全体が漬け込まれ、後藤謙次や田崎史郎や久江雅彦や中北浩爾や山口二郎がテレビに出ずっぱりで、無意味で低俗な政局漫談を流してギャラを荒稼ぎしている。気分が悪い。これまで何度、衆議院の解散の場面を見てきたことだろう。30年前に小選挙区制に変わって以降、選挙をするたびに政治は悪くなって行った。国民生活も社会制度も外交も、選挙のたびに悪くなり、悪い方へ悪い方へ変わって行った。
今回の選挙の争点は「自民党の裏金問題」である。裏金問題を揚棄し払拭するべく自民党は早期解散に出たのだが、政界評論家たちの現感触では自民党の形勢が芳しくなく、東京など大都市で票を減らし、現有258議席から20-30議席減らして単独過半数(233議席)の維持が微妙だと言われている。前回の記事で自民党総裁選を総括して、自民党の戦略が裏目に出て党が弱体化する事態となったと書いたが、それが現実の選挙情勢となって早くも表面化しつつある。現時点から投票まで2週間余りの日数しかなく、よほど日本会議が総力を挙げてテコ入れしないと、安倍派の現職裏金議員、特に安倍晋三に依存して順風の選挙しか知らない4回生以下は厳しい選挙戦になるだろう。自民党はこの解散総選挙を通じて、大きく石破茂派と高市早苗派に分裂しつつあり、選挙後に二つに割れるのではないかと観測されている。
中北浩爾や山口二郎は、自らの主観的願望を予想に投影させて、極右の高市(旧安倍)系が自民党内で抗争の末に異端となり、石破茂が政権を安定化させるべく野田立憲と大連立を組む図を仮想し、その方向性を積極歓迎する見方を示している。その展開に流れる可能性は小さくないが、中北浩爾と山口二郎が見落としている要素として維新の問題があるだろう。維新は野田立憲よりも自民党と親和性の高い政党であり、石破自民よりも高市自民と理念政策の一致点の多い集団である。すなわち、ヨリ極右的な性格が強い政党だ。だから、仮に自民党が石破系と高市系の二つに割れるとして、馬場維新が石破自民と連携するとは限らず、イデオロギー的には高市自民と結合する方が自然と言える。この場合、カギを握るのは菅義偉で、現在は石破系に与しているけれど、党内抗争となったとき、その立場を一貫させるかどうかは不明だ。
菅義偉は、竹中平蔵を師と仰ぐ過激なネオリベ原理主義者であり、安倍政治の純粋な継承者に他ならない。今回の総裁選では小泉進次郎担ぎが失敗に終わり、次善の策として石破陣営を選択した。策士岸田文雄の術計が功を奏した図だ。だが、もともと親安倍の菅義偉と脱安倍の岸田文雄とでは立ち位置に温度差があり、それは小泉進次郎も同様である。小泉進次郎が日本会議に詫びを入れ、夫婦別姓は撤回すると踵を返せば、菅・小泉は安倍系主流として本籍を復活させられる。すなわち岸田文雄と離れ、高市早苗と合流する旋回となるだろう。そのときは高市早苗の方が多数派となり、石破・岸田の方が少数派となる。多数派となった高市派が維新と組んで安定政権を作る。菅義偉が石破陣営に着いた理由は、高市早苗では衆院選に負けると判断したからで、アメリカが高市早苗を却下した所為だ。アメリカが高市早苗を容認すれば条件は一変する。
以上の分析と整理を元に選挙後の永田町の構図を描くと、自民党の党内抗争の末に、①高市自民と維新の右翼系、②石破自民と公明と野田立憲・玉木国民の保守中道系、③リベラル左派の弱小政党群、の3勢力に分かれて対抗する配置が展望されるところとなる。このとき、野田立憲は全体が一同で石破自民と連立に動くことはなく、例によって党内で左右対立の悶着と騒動となり、少数左派が切られて追放され、その一団が小さな新党を作り、③のブロックを構成する一となるだろう。③は、左派立憲と日本共産党とれいわ新選組と社民党が肩を寄せ合う小さな群落となる。仮にこうした3極鼎立の状況となれば、普通に考えて、支持率の上で多数を取るのは②の保守中道であり、マスコミ(松原・後藤・久枝・佐藤・中北・山口)は②を強力にエンドース(⇒裏書保証)する応援団となり、世論の支持を②に流し込むべくフル回転するに違いない。支持率の比は、①が25%、②が30%、③が10%という具合だろうか。フランスに近い政治構図だ。
問題は政策である。裏金問題をテーマに選挙が行われ、上のような勢力構成へと分解変化したとき、政策の問題はどうなるか。過去4回ほどの国政選挙では、(1)安保法制と(2)消費税5%と(3)原発という大きな問題が争点となってきた。結果的に、反動側の勝利によって(1)も(2)も(3)も政策の実現や前進は封じられたが、対立軸となってきた意義は大きく、マスコミもそれを無視できない政治環境が続いてきたと言える。が、今回、野田立憲が(1)(2)(3)で自民党と基本政策を合わせたことにより、(1)(2)(3)は国政を二分する争点ではなくなった。(1)(2)(3)で政策転換を求める側は少数異端となり、(1)(2)(3)は無視していい「左翼の政策要求」となってしまった。この意味は小さくない。特に、憲法改正についてきわめて危険な状態になったと言える。上の3極鼎立の図では、①と②が改憲賛成で、改憲反対は③の少数派に押し込められてしまう。従来は、立憲民主の中に賛成反対が混合していたため、改憲反対派が国政の中で完全に異端化されずに済んでいた。
重要な選挙なのに、裏金問題ばかりが表面に浮上し、マスコミが騒いで人々を関心づけるネタとなっている点が釈然としない。国民の暮らしの問題が前面に出ないことに違和感を覚える。中小企業の倒産件数が10年ぶりの多さになっていて、原因は物価上昇によるコスト高である。物価上昇の原因は円安であり、これまで1ドル110円で輸入できた原材料が1ドル150円になっているのだから、とても経営努力で対応できるレベルではない。それなのに、為替を適正化せよという要求はマスコミに上がらず、株価が下がるから金利はゼロ水準に抑えよという声ばかり大きく響いている。国民民主党の玉木雄一郎も、立憲民主党の泉健太もそう主張している。株を売買して資産を膨らましている者の利益ばかり優先され、原材料の値上げで悲鳴を上げている中小零細業者の苦境が顧みられない。ずっと異常な円安が続き、大企業は空前の暴利を得て、内部留保は膨らみ続けている。
一方、粉ミルクが値上がりしたため、赤ちゃんに薄めて飲ませているシングルマザーがいて、新聞記事になりネットで話題になっていた。生活の節約のため、やむを得ず追い込まれてそうなった。テレビ報道では紹介されていない。ミルクを薄めると栄養やカロリーが不足し、脳の発育・発達が遅れるリスクがあると小児科の医師が警告している。本当に残念で悲しい現実だ。選挙なのにこの事実が取り上げられないことにも歯痒さを感じる。新宿では若い女性が毎晩何十人も立ちんぼ売春している。その現実をそのままにして選挙が行われている。令和のからゆきさんになって、ハワイや豪州や米本土や韓国に売春に出かけている。とんでもなく国が貧しくなり、貧富の差が激しくなり、貧しい者が生きるお金を得られなくなった。選挙で真っ先に論点になるべき問題だと思うが、正面から取り上げる政治家や政党がない。1日7時間労働も結構だが、その前に時給2000円が先だろう。
今年の夏、9/3 までの統計で、東京23区で熱中症疑いでの死者が248人という報道があった。大半が高齢者。うち、8割余りの213人がエアコンを使っておらず、その中の58人がエアコンのない部屋で命を落とした。そのNHKの放送も見たけれど、58人がなぜ部屋にエアコンを設置していなかったのかは説明がない。155人の部屋にはエアコンがあったが、使用されてなかったとある。なぜ使用されてなかったのだろう。電気代の節約のためか、エアコンが故障していたのか、NHKは(厚労省の広報報道のはずなのに)事情を説明していない。この絶望の真実が、特に社会問題や政治問題とならず、見逃されて済まされている。日本国憲法25条には「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という規定がある。この原則があり、国家の責務があるのに、58人はなぜ熱中症死しなければならなかったのだろう。なぜ自己責任で見捨てられるのか。
国会で取り上げられないのが不思議だ。NHKは、必ず一晩中エアコンを点けっぱなしにしましょうと注意を発するが、エアコンを買うお金のない人はどうすればいいかは言わない。相談する窓口はここですとも言わない。結局、お金のない高齢者は(自己責任ですので)熱中症で死んで下さいと言っている。10年前に株投資を始めなかったあなたの自己責任ですと言っている。憲法25条の存在は言上げされない。新宿の立ちんぼや令和のからゆきさんも同じで、どうしてこの問題が国会で真剣に議論されないのか不思議だ。深刻な人権問題だし、国の恥だし、政府と社会の恐るべき不作為であり病理だろう。この問題を倫理の痛みもなく放置して、常態化させて、何が「ジェンダー平等」なのか。女性国会議員たちは、立ちんぼの現状を恰も「職業選択の自由」の「多様性」のように素通りして、クォータ制を早くやれと報道番組で喚いている。土井たか子が見たら何と言うだろう。
7月には「広がる若者の孤独死」の報道があった。3年間に東京23区で742人が確認されている。これもNHKのニュースかクロ現で報道していた。おそらく、熱中症で死亡した高齢者の件を担当した同じ厚労省の関係先からの情報だろう。民放の報道番組では見た記憶がない。大半は自殺に違いない。精神の疾患、あるいは身体の重病を抱えていた可能性がある。餓死もあるかもしれない。彼らは、若いのにどうして死ななければならなかったのか。憲法25条は彼らを救えないのか。国会で論戦された記憶はない。若者若者と言いつつ、この国は貧乏な若者には苛酷だ。せめて、選挙の機会にこの問題を取り上げ、政策討論で民意を喚起する政党はないだろうかと思う。貧富の差の拡大と窮乏化の問題であり、資本主義の矛盾の問題である。こうした注目されない悲劇の一方で、資産家とその子たちは株で大儲けし、Xで日銀に金利を上げるなと圧力をかけ、資本主義日本の繁栄を謳歌している。
今回の選挙も、おそらく投票率は上がらないだろう。ギャラ稼ぎで浮かれて得意満面の中北浩爾や山口二郎の思惑とは裏腹に、有権者の45%は相変わらず醒めて諦めて硬直したままだと思われる。どれほどアクロバティックな政界再編や大連立の激動と転変があっても、政治は変わらず、変わらないどころか、いつものように悪い方へ悪い方へ、国民が貧しく不幸になる方へ転がって行く。政治の報道は賑やかだが、単に政治のゲームを消費しているだけで、その市場で浮薄で奸佞な業者(中北や山口)が繁盛しているようにしか見えない
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。