観光都市みなかみ町(群馬県)は、福島原発事故で国から「汚染状況重点調査地域」に指定されたために観光事業に大打撃を受けていましたが、空間線量が基準値を下回ったという見通しのもとに、指定解除のための放射線量調査を19日から開始しました。
環境省の求める200箇所のデータが基準値をクリアしていれば、全国で初めての指定解除になるということで、結果が注目されます。
その一方で福島市の山あいの地域では、一旦除染しても線量がまた上がってしまう事態が起こり、住民からは「何度除染すればいいのか」と悲鳴が上がっています。
◇ベラルーシに視察団
21日、福島市が組織したベラルーシ視察団(団長:瀬戸市長、公募市民15人を含む)が出発します。
ベラルーシはチェルノブイリ原発事故で最大の放射能汚染被害を受けた国(被曝後に独立)で、これまで福島県民の視察が相次ぎましたが、一般公募市民を含む視察団は初めてということです。
以下に東京新聞と福島民友ニュースの記事を紹介します。
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【群馬】 みなかみ 放射線量 最多の200カ所で最終調査を開始
東京新聞2012年11月20日
東京電力福島第一原発事故で、国の「汚染状況重点調査地域」に指定された後、詳細調査で空間放射線量が基準値を下回り、指定解除に向けて環境省と調整中のみなかみ町は19日、最終的な放射線量調査を開始した。
調査は、同省からの要請に基づき、これまでの調査で最多の約二百カ所を対象に行われ、10日間ほどで測定が終了する見通し。町ではデータがそろった段階で同省に結果を報告し、判断を待つ。
町環境課の話では「今回の調査で基準値を超えなければ、解除になると思う」という。解除が実現すれば全国で初めてとなる。 (山岸隆)
福島 終わらぬ除染 線量が再び上昇
東京新聞 2012年11月20日
東京電力福島第一原発事故で飛散した放射性物質を除去する作業(除染)を終えた福島県の山あいの地域で、除染後しばらくすると放射線量がまた上がるケースが出ている。風雨で運ばれた放射性物質が、道路脇や軒先に再びたまり、線量を上げているとみられる。除染の難しさが顕在化した形で、住民からは「何度除染すればいいのか」と悲鳴にも似た声が上がっている。(榊原智康)
福島市東部の大波地区では、半年前に除染したが、局地的に線量の再上昇が起こっている。町会長を務める栗原俊彦さん(71)の測定では、ある民家の軒先では事故後、毎時10マイクロシーベルト(0・01ミリシーベルト)以上の線量があり、今年三月に除染で1・8マイクロシーベルトにまで低下した。だが、十月には7・8マイクロシーベルトにまで戻った。
別の民家前の道路脇でも、除染で1・5マイクロシーベルトに下がったが、十月には10マイクロシーベルトにまで上昇した。
いずれの値も地表付近の値で、腰辺りの高さだと値はぐんと落ちるが、生活圏に線量を放つ物質が残っていることが不安材料であることに変わりはない。
同市の除染担当者は「屋根や雨どいの除染で、取り切れずに残った放射性物質がはがれて、雨で下に移動し、軒先などに濃縮された可能性がある」と分析する。大波地区では、民家の除染は進んだが、地区の大部分を占める森林はほぼ手付かず。山の斜面から水や土砂が流れ込むような道路脇などでは、除染をしても、また放射性物質が流れ込み、線量の再上昇につながっているとみられる。
山のふもとにある福島市渡利地区でも除染した道路の側溝に再び砂などがたまり、3~4マイクロシーベルトの線量に上がった場所がある。
市役所の出張所などの計測データでは、除染後は大波、渡利両地区とも線量が大幅に下がっている。ただ、除染後に線量が再上昇する地点があるのは事実で、きめ細かな対応が必要になる。東北大の石井慶造教授(放射線工学)は「ある程度汚染されてしまった地域では、除染は一度では終わらない。息の長い取り組みが必要だ」と話している。
「生の声聞きたい」 福島市民ら21日ベラルーシへ
福島民友ニュース 2012年11月20日
旧ソ連チェルノブイリ原発事故で最大の放射能汚染被害を受けたベラルーシを訪ね、放射線影響や対策について話を聞こうと、福島市が組織する視察団が21日、出国する。東京電力福島第1原発事故後、県民の同国への視察は相次いでいるが、公募で選ばれた一般市民が加わる初の視察団となる。参加する市民らは「汚染地域の住民がどんな生活を送っているか、直接聞きたい」と口をそろえる。背景には、同国民の生の声が福島県に十分に伝わっていないのではないかとの思いがある。
福島市は「市民が自ら学び、自らの対策に役立ててもらいたい」と視察事業を企画し、9月補正予算に2700万円を計上した。瀬戸孝則市長が団長を務め、公募で選ばれた市民15人を含む視察団が、同州のホイニキ地区を訪れ住民の話を聞くなどする。「本人に聞かないと分からない放射線への思いなどを聞きたい」。視察に加わる福島大3年の本間美雪さん(21)はそう話す。同じく視察団に参加する福島赤十字病院看護部副部長の会沢英子さん(53)は「福島でこれから結婚し、子どもを育てる若い職員の相談に乗れるよう、現地の話を聞きたい」と言う。