2012年11月16日金曜日

原発審査指針を業界出身者や学者だけで作成


 14日の原子力規制委で、国の原発設計指針が民間規格を取り入れたもので、その民間規格は原発に深く関わる業界出身者や学者だけで作られている実態が、問題となりました(学者の中には業界出身の教授らも当然います)。 

 2006年に原発耐震指針の見直しを行った際にも、既設の原発に影響しないようにとの考えから、官僚(原子力安全・保安院)が主導して極めて不十分なものにまとめられたと言われています(そのため抗議の辞任をした良心的な学者もいました)。 
 現行の原発耐震基準では「震度6」にも持たず、現実に先の中越沖地震では柏崎刈羽原発が多くの破損を生じ、昨年の東日本地震では東日太平洋側の全ての原発が破損事故を起こしたことは、武田邦彦教授が繰り返し指摘しているところです。
 新しいメンバーになったのを機に、それらのことが見直されるのは絶対に必要なことです。
 以下にしんぶん赤旗の記事を紹介します。
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民間規格で原発審査指針 業界出身者や学者だけで作成
規制委の島崎氏が批判
しんぶん赤旗20121115 

 原子力規制委員会(田中俊一委員長)が14日開いた定例委員会で、国が原発の指針類を作るに当たって、日本電気協会や日本原子力学会などで定めた民間規格を取り入れている問題が議論になりました。委員の1人から、民間規格が原発に深く関わる業界出身者や学者だけで作られている実態が示され、「身内で身内のことを決めていると、とられかねない状況」と批判する声が上がりました。

 審査に使われている指針類が、業界作成の指針にもとづいている問題は、住民運動団体が「中立性、公平性、公開性が担保されていない」と、繰り返し指摘してきたものです。 

 会合では、今後も従来通り、これらの規格を活用するかどうかが議題となりました。事務局の原子力規制庁が、国の原発耐震指針類に、日本原子力学会、日本機械学会、日本電気協会が定めた民間規格を取り入れていた経過を報告。旧経済産業省原子力安全・保安院の職員が、民間規格の策定過程に参加し、投票などの意思決定に関わってきたことなどを説明しました。

 方針案では、今後も民間規格を取り入れることを続け、規制委が民間規格策定過程に参加するものの、投票などの意思決定に関わらないとしました 

 これに対し、島崎邦彦委員長代理が、「三菱重工業、富士電機、日立GEニュークリア・エナジー、東芝…。大林組原子力本部、竹中工務店原子力火力本部、鹿島建設原子力部…」と、日本電気協会が策定した民間規格の一つ、原発耐震設計技術指針を決めた構成メンバーの出身企業を読み上げました。構成メンバーには、ほかに東京電力など電力会社11社も含まれています。 

 島崎氏は、構成メンバーの学識経験者も含め「第三者的な人は少なく、非常に一方的」と指摘。国会の事故調査委員会が東京電力福島第1原発事故の教訓として、規制機関が事業者の「とりこ」となっていたと批判していた点にも触れて、「また同じことになると心配している」と述べました。 

 また、島崎氏は、民間規格を取り入れるやり方がアメリカの仕組みを参考にしていると説明された点についても「アメリカと日本の安全文化は大違い。同じやり方を持ってきても通用しがたい」と批判。民間規格の策定に参加した経験がある更田(ふけた)豊志委員も、「速記録がない。議事録が公開されているといっても、策定のプロセスを追跡できるかどうか。速記録を残せるように検討してはどうか」と、現状の民間規格の透明性には問題があるとしました。

 こうした議論を受けて、方針の決定は次回以降に見送られました。 

    「規制のあり方根本的変換を」
伊東達也・原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員の話 

東京電力福島第1原発事故の後、東電が地震や津波、過酷事故に対する備えを怠っていたことが次々明らかになりました。その背景に、国が原発の安全基準づくりを、原発推進側の企業の代表や学者らが占める民間機関にまかせてきたことがあります。私たちは、推進側のとりこにされた原子力規制のあり方を改めるよう繰り返し要求してきましたが、国は一顧だにしませんでした。規制委員の中から、それについて意見が出されたことは歓迎すべきことだと思いますが、問題は規制のあり方を根本的に変えることであり、そのために私たちもさらにがんばります。