原発がなくても電力不足にならないことなどを情報発信していくシンクタンク「城南総合研究所」が今月設立されました。
経団連や電力会社、あるいは電力会社(の広告費)に頭の上がらないマスメディアが盛んに、「原発を動かさないと日本経済は大変なことになる」と主張していますが、本当にそうなのか、「原発やむなし」と考えている人たちを理詰めで説得するデータが、これからどんどん発信されるということです。
たとえば私たちは火力発電の燃料の大半が「石油」だと思いがちですが、石油の占める比率は火力発電の僅か15% に過ぎません。他は、石炭※が40%、天然ガス(LNG)が40%、その他が5%です。石油=原油が高価であることを宣伝する一方で、この事実は殆ど語られません。
※ 第二次石油危機後の1980年代に、多くの発電所で重油ボイラーを微粉炭ボイラー(石炭を粉にして吹き込む方式)に改造し、燃料を値段の安い石炭や天然ガスに切り替えました。
因みにそのコストは2008年時点で、1万kcalあたり原油は75円弱に対して石炭は12円です。天然ガス(LNG)も石油よりもかなり安く購入していますが、それでも米国の6倍かそれ以上の価格だと言われています。
また現行の原発の発電コストには、廃燃料の処理費が含まれていませんし、電気代に電源開発促進税の名目で含まれている年間4000億円の金額(これらは原発地域への交付金など、殆ど原発関係に使われます)なども含まれていません。
勿論、結局は国民が負担することになる今回の原発災害関係費数十兆円も含まれていません。
ですから原発の発電コストが安いというのはウソです(単に手持ちの核燃料を使う限りは当面燃料の出費がないということ)。
実際にアメリカで最近発電所が売りに出されたそうですが、原発に関しては割高なので買い手がつかなかったということです。
いずれにしても今後電力事情や原発に関しての正確な情報が得られるのは、脱原発を進めていく上で大変に心強いことです。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
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シンクタンク新設 城南信金 「理詰めで原発ゼロ」
東京新聞 2012年11月28日
原発がなくても電力不足にならないことなどを情報発信していくシンクタンク「城南総合研究所」を今月新設した城南信用金庫(本店・東京都品川区)。
吉原毅理事長は、本紙のインタビューで「原発に関する正確な情報を行き渡らせるためには、独自のシンクタンクを立ち上げるしかなかった」と意義を説いた。
経済団体や電力会社が、原発を動かさないと日本経済は大変なことになる-と主張していることに対し、吉原氏は「『原発やむなし』と考えている人たちを理詰めで説得するため、データや事実で勝負したい」と述べた。
活動の第一弾として「事故が再び起こる前に原発を廃炉にすることが、経済的にも正しい」とするリポートを発表。
大学教授ら専門家の研究成果を足がかりに、原発を稼働し続けると、かえって電気料金は大幅に上がるはず、といった試算を示している。
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「原発やむなし」 目覚まして
東京新聞 [3.11後を生きる] 2012年11月28日
「原発に頼らない安心できる社会」を目指す方針を掲げる城南信用金庫が今月スタートさせたのが「城南総合研究所」。原発がなくても経済や社会は成り立つという専門家の分析を、分かりやすく情報発信していくのが狙いだ。旗振り役の吉原毅理事長は「原発やむなしと考えている自称『現実主義者』に目を覚ましてもらいたい」と訴える。(白石亘)
◆「お金中心に考えすぎ」
原発を動かさないと、電力不足になって停電が起きる─。こうした情報が盛んに流される中、電力不足が懸念された夏場を乗り切ったのは周知の通り。
幼い子を持つ母親らは、放射能の被害など安全面からも原発の恐ろしさを痛感している。それでも各種の世論調査を見ると、経済的な理由などから「原発はやはり必要」と考える人たちが一定程度、存在するのも事実だ。
彼らに脱原発を思いとどまらせているのは、原発を止めると、電力が足りなくなったり、電気代が大幅に上がってしまうという「二つの懸念」というのが吉原氏の見立てだ。原発に関する正確な情報が行き届いていないとみる。
城南信金は原発事故を受け、昨年4月に脱原発を宣言。以来、専門家と意見交換を重ね、蓄積してきた知識をベースに、シンクタンクを設立した。主に原発のコストと電力不足をテーマに、専門家によるさまざまな切り口での分析を分かりやすい言葉で世の中に広げる「媒体」を目指す。
シンクタンク業務を手掛けるのは、城南信金企画部の担当者11人で、専門家に取材した結果をリポートにまとめる。第一弾のリポート(A4判4枚)は1万部作製し、店頭で預金者や取引先の中小企業などに配っている。
シンクタンクの「理論的な支柱」となる名誉所長には、加藤寛・慶応義塾大学名誉教授を迎えた。歴代の自民党政権下で経済政策のブレーンを務め、旧国鉄の分割民営化などに取り組んだ著名な経済学者。吉原氏は学生時代、慶大の加藤ゼミで学んだ門下生で、加藤氏は就任を快諾したという。
脱原発を宣言してから、休みも返上して講演会などに飛び回る吉原氏。志に賛同した取引先の中小企業が節電商品を開発して売り出すなど、活動の輪は着実に広がっている。
意外な応援団もいる。本紙が研究所の設立を報じた今月9日、城南信金本店に小泉純一郎元首相から電話が入った。「よくやった、と激励されました」と吉原氏。元首相は4月に城南信金が開いた講演会でも「原発を推進していくのは無理。原発の依存度を下げていくのが、これから取るべき方針」と訴えたという。
一方で、「原発ゼロは非現実的」と言う人たちから、「会社に損失が生じるから、原発を止めるわけにはいかない」「電気代が上がると、生活が苦しくなる」との本音を聞くにつけ、「お金や自分のことばかり考えているのが現代社会の病理」と痛感するという。
「みんな自分のことで精いっぱいなのは分かる。だけど、お金を中心にモノを考えすぎて、地域やお客さんの幸せを切り捨ててしまっていいのか。今こそ社会の連帯を取り戻し、間違ったことはやめるのが大人の責任だ」
◆脱原発は雇用を拡大
シンクタンクの城南総合研究所が発表した第一弾のリポートに、名誉所長に就いた加藤寛慶応義塾大学名誉教授が寄稿した。「脱原発は新産業の幕開けをもたらし、景気や雇用の拡大になる」として、日本経済を活性化させる観点からも、原発ゼロを訴えている。
加藤氏は、電力9社による地域独占体制について「原子力ムラという巨大な利権団体をつくり、独占の弊害が明らか」と指摘。かつて自らが改革に取り組んだ旧国鉄を引き合いに「国鉄は独占を排除し、分割民営化により国民を向いた経営に転換した」と説明、独占にメスを入れるよう訴えた。
さらに「古い電力である原発を再稼働しても、決して日本経済は活性化しない」と指摘。太陽光や風力といった再生可能(自然)エネルギーなど発電方法が多様化し、節電や蓄電池の分野でも技術革新が急速に進んでいることを挙げ、「原発に依存したこれまでの巨大な電力会社体制も、近い将来は時代遅れになり、恐竜のように消滅するだろう」と予測した。
その上で「脱原発にかじを切れば経済の拡大要因になり、中小企業などものづくり企業の活躍の機会が増える。経団連は雇用が減ると言うが、むしろ脱原発は雇用拡大につながる」と、経済効果の大きさを強調している。
このほかリポートでは、原発のコスト構造を検証した。経済産業省のエネルギー白書によると、1キロワット時当たりの発電コストは原発が5~6円、火力が7~8円。しかし、これには原発のある地域に支払われる巨額の交付金は含まれていない。立命館大学の大島堅一教授の試算によると、原発が10.3円、火力が9.9円で、原発の方が割高になっている。
さらに、使用済み核燃料の保管や処理に掛かる費用もかさむことから、「原発のコストは恐ろしく高価で、将来、大幅な電気料金の値上げにつながる。原発を廃炉にすることが経済的にも正しい判断」と結論づけている。