2013年4月10日水曜日

砂川事件 伊達判決要旨 

 
 砂川事件の最高裁判決が、政府と最高裁が一体となって米国に屈従してなされた汚辱に満ちたものであることが明らかになりました。その一方で一審の伊達判決を読むときわめて明朗明快であって、裁判官の良心のみに基づいて何ものをも憚ることなくなされたものであることが分かります。
 まさに憲法9条に関する記念碑的な判決です
 
 判決文はインターネットで読むことができますが、訴訟の全範囲にわたり独特の息の長い表現様式で言及しているのでややとっつきにくい点があります。そこで事務局で「憲法9条」と「日米安全保障条約(アメリカ駐留軍)」に関する部分を要約しました。
         これ自体が地裁が発行する暫定的要約文の可能性があります
(要約にあたってはセンテンスを短く区切ったり、一部の語句を日常的な言い方に換えたりしましたので、ご了承下さい)

 以下に紹介します。詳細は下記のURLで原文をお読み下さい。
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砂川事件 伊達判決 要旨 事務局 要約

 判決 東京地裁 昭和34年3月30日
                    (裁判官 伊達秋雄 清水春三 松本一郎)
■ 主  文
 本件各公訴事実につき、被告人坂田茂、同菅野勝之、同高野保太郎、同江田文雄、同土屋源太郎、同武藤軍一郎、同椎野徳蔵はいずれも無罪。

■ 理  由  (要旨 『 』内の文言は憲法前文からの引用)
[1][4]  省 略

[5] 日本国憲法第9条は、自衛権を否定するものではないが、侵略的戦争は勿論のこと、自衛のための戦力を用いる戦争及び自衛のための戦力の保持をも許さないとするものである。
この規定は政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにしようとするわが国民が、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚した結果、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を維持しよう』とする決意に基くものであり、単に消極的に諸外国に対してわが国の軍国主義的、侵略主義的政策についての反省を示そうとするに止まらず、正義と秩序を基調とする世界永遠の平和を実現するための先駆たらんとする高遠な理想と悲壮な決意を示すものである。
憲法第9条の解釈は、こうした憲法の理念を十分考慮して行うべきで、単に文言の形式的、概念的把握に止まつてはならないし、合衆国軍隊の駐留自衛上やむを得ないとする政策論によつて左右されてはならない

[6] 合衆国軍隊の駐留と憲法第9条の関係は、が国に駐留する合衆国軍隊はただ単にわが国に加えられる武力攻撃に対する防禦若しくは内乱等の鎮圧の援助にのみ使用されるものではなく、戦略上必要と判断した際にも当然日本区域外にその軍隊を出動し得るので、わが国が自国と直接関係のない武力紛争の渦中に巻き込まれ、戦争の惨禍がわが国に及ぶおそれがある。
従つて日米安全保障条約政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起きないようにすることを決意した日本国憲法の精神に反する

[7]外部からの武力攻撃が為された場合合衆国がわが国の要請に応じ、既にわが国防衛のため国内に駐留する米国の軍隊を直ちに使用する現実的可能性は非常に大きい

[8]わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的で合衆国軍隊の駐留を許容していることは、指揮権の有無、合衆国軍隊の出動義務の有無に拘らず、日本国憲法第9条第2項前段によつて禁止されている陸海空軍その他の戦力の保持に該当する
したがってわが国内に駐留する合衆国軍隊は憲法上その存在されない

[9]合衆国軍隊の駐留が憲法第9条第2項前段に違反し許すべからざるものである以上、合衆国軍隊の施設又は区域内の平穏に関する法益が刑事上、民事上の保護以上の厚い保護を受ける合理的な理由は存在しないので、国民に対して軽犯罪法の規定よりも特に重い刑罰をもつて臨む刑事特別法第2条の規定は、憲法第31条に違反し無効

[10] 省 略