3日には参院で憲法審査会が開かれ、「二院制」をテーマに2人の大学教授を招いて質疑が行われました。席上「首相公選制」に対しては講師から「議会に基盤のない公選首相が誕生するのは問題」という見解が表明されました。
4日には衆院の憲法審査会が開かれ第五章「内閣」をテーマに各党が議論しました。ここでは首相のリーダーシップの強化について意見が交わされました。
以下に関係の記事を紹介します。
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二院制の意義主張 井上氏 「チェックと民意反映」参院憲法審
しんぶん赤旗 2013年4月4日
参院憲法審査会が3日、「二院制」をテーマに加藤一彦東京経済大学教授、加藤秀治郎東洋大学教授を呼んで質疑を行いました。
加藤一彦氏は衆参両院制の意義を (1)多様な民意の反映 (2)第一院の補完機能 (3)慎重審議の励行 (4)議会内の均衡の要請などから説明。「ねじれ国会は、両院制の本質的問題ではなく、憲法の想定内の問題だ」と強調しました。一方、加藤秀治郎氏は「衆参ねじれは重大な問題で、国政はまひしている」と指摘。与党の政権運営を保障するために参院改革が必要だと述べました。
日本共産党の井上哲士議員は、両院制の意義について「一院で多数を占める政党が内閣を構成するのだから、一院制では内閣に対する国会のチェック機能が果たせなくなる」「多様な民意の反映を保障する制度としても二院制は大事だ」と主張。憲法43条が規定する「全国民を代表」する国会議員を選ぶ選挙制度について質問しました。
加藤一彦氏は「全国民の代表者ということを前提として選挙制度を考えれば、比例代表かなという話になる」と答えました。
また、維新が主張する首相公選制についての見解を同党の水戸将史議員が聞いたのに対し、加藤一彦氏は「選挙で選ばれた首相が議会解散権など強力な権限をもつ。これはポピュリズムからファシズムに移行する」と批判。加藤秀治郎氏は「首相公選制の実態がわかれば賛成する人はあまりいない。議会に基盤のない公選首相が誕生した途端にとんでもない国になる」と述べました。
衆院憲法審 「内閣」議論 首相権限強化 与党内隔たり
東京新聞2013年4月5日
衆院の憲法審査会は四日、第五章「内閣」をテーマに各党が議論した。自民党が首相のリーダーシップを強化するため、行政への指揮監督権など、専権事項の拡大を訴えたのに対し、公明党は反対する姿勢を強調。与党内で見解の相違が目立った。 (岩崎健太朗)
首相のリーダーシップ強化をめぐっては、自民党の岸信夫氏が、行政への指揮監督権や国防軍の最高指揮権など、首相が閣議に諮らずに単独で行使できる専権事項を拡大した党の改憲草案を説明。日本維新の会、みんなの党、生活の党がそれぞれ権限拡大に前向きな考えを示した。
一方、公明党は自民党と連立政権を組む立場から、大口善徳氏が「連立政権の運営は与党間の政策の擦り合わせが不可欠。閣内でも与党各党を代表する閣僚の全会一致の政策決定が実態になじむ」と、首相権限の突出をけん制。その上で「リーダーシップを発揮できないのは、制度的な問題か、政治手腕のためか、検証する必要がある」と皮肉った。
民主党の古川元久氏は、行政機関への指揮監督権強化の必要性は認めたものの、民主党政権で設置した国家戦略室の意義を強調。「リーダーシップ強化は法律や運用の改善で実現できる」と訴えた。
維新とみんなは「現在は国民の意思とは無関係の首相が誕生している」として、国民が首相を直接選ぶ首相公選制の導入を提案した。
自民党からは、ポピュリズム(大衆迎合型政治)に陥る懸念のほか、野党から首相が選出された場合、立法府と行政府の方針に相違が生まれ混乱する可能性がある-などとして慎重意見が相次いだ。
憲法第5章「内閣」めぐる各党の主張
自民
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議院内閣制の元で首相のリーダーシップを強化。①内閣の指揮監督・総合調整権 ②衆院解散の決定権 ③国防軍の最高指揮権 ― を首相の専権事項に
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民主
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首相主導の政府運営を確立。行政機関を指揮監督する「執政権」を、従来の行政権の概念から切り離す。現行法律や運用の改善で実現できる。
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維新
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首相のリーダーシップ強化のため、行政権の主体を首相とする。首相公選制を導入する際には、一定数の国会議員の推薦が必要などの要件を検討する。
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公明
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現行憲法でも首相は内閣を代表する地位を有している。閣議決定は、首相独断での権限行使への最低限の歯止め。改める必要はない。
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みんな
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首相や内閣が予算編成権や人事権を掌握し、権限を強化。首相公選制は、改憲しなくても、国民投票を実施して結果を国会議員が尊重すれば可能。
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共産
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沖縄の基地問題や原発事故の対応など、内閣の職務執行の現状は民意に背いている。憲法が定める内閣の権能に照らした検証こそが必要。
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生活
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議員内閣制は維持。首相のリーダーシップを強化するため単独で行政各部の指揮監督・総合調整を行えるよう明文化が必要。
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