2013年4月1日月曜日

首相がマスメディアのトップと個別に会食  


 安倍首相が、大手5紙・共同通信それに在京のTV会社のトップと、個別に高給割烹等で会合を行いました。

メディアは「権力の監視役」であるべきで、現実に欧米メディアにはメディア経営者は大統領や首相とは在任中接触は控えるのを不文律とする例があるそうですし、日本新聞協会も倫理綱領に、「国民の知る権利はあらゆる権力から独立したメディアの存在によって保障される」と明記しているということです。

しかし実態はどうなのでしょうか。

国際ジャーナリスト組織が1月末に発表した「世界各国の報道の自由度ランキング」によると日本は53位でした※1。報道後進国もいいところです。
※1 2月1日付「日本のマスメディアは極めて政権寄り」
また新聞通信調査会が行った世論調査では、NHKや新聞の報道に対しては70%の人たちが「信頼」しておらず、政治報道に対しては75%の人たちが「公平でない」と思っているということです※2
※2 11月30日付「大新聞やテレビの報道は国民に信頼されていない」

日本のマスメディアの幹部には忸怩たる思いはないのでしょうか。 

 近年の報道のあり方を見ても実に異常です。
昨年以降、マスメディアはスクラムを組んで消費税増税の必要性を訴えました。(その実新聞の消費税アップには反対し、政府に対して例外措置を要請しています)
 TPPに対しては一見中立風を装いながら果物や肉の値段が下がることを強調する一方で、交渉の驚くべき不明朗性や協定によってアメリカに蹂躙される可能性については、殆ど語ることをしません。それはどのマスメディアも同様で、やはりスクラムを組んでいます。
 またかなり可能性の出てきた自民党の改憲草案についても、それがいかに基本的人権を抑圧し戦前の社会に戻しかねないものであるかを、どのマスメディアも明らかにはしていません。 

東京新聞などの地方紙や日刊ゲンダイなど、ごく一部のメディアを除くマスメデイアが「メディア スクラム」と言われるものを組んで体制側に迎合している姿には、かつての悪夢に通じるものがあります。
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大手5紙・在京TVトップ 首相と会食 
元官邸記者「首相批判の記事 載せにくいよね」
    しんぶん赤旗 2013331 

 安倍晋三首相が就任以来続けてきた大手5紙トップとの会食懇談が28日夜の朝比奈豊・毎日新聞社長との会合で一巡しました。3カ月で新聞トップを総なめにした首相の思惑は、どこにあるのか。
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 安倍首相と大手紙トップとの「宴会」は、17日に、渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長と東京・丸の内のパレスホテルの高級割烹で3時間近く会ったのが最初でした。
 
 翌8日にANAインターコンチネンタルホテル内の日本料理店で産経新聞の清原武彦会長、熊坂隆光社長。
 27日は帝国ホテル内の中国料理店で朝日新聞の木村伊量社長。
 同15日は東京・白金台の高級割烹「壺中庵」で共同通信社の石川聡社長。
 38日は帝国ホテル内フランス料理店で日本経済新聞社の喜多恒雄社長。
 同15日は芝公園のフランス料理店でフジテレビの日枝久会長(フジサンケイ・メディアグループ最高経営責任者)。
 同22日はテレビ朝日の早河洋社長。
 
 そして同28日は椿山荘内の日本料理店「錦水」で「毎日」の朝比奈社長というわけです。

 毎回、ほぼ2時間を超える長談議に及んでいます。日時は異なりますが、政治権力者との会食懇親の席に「権力の監視役」であるべき大新聞の社長が、これほど轡(くつわ)を並べる図は、いかにも異様です。
 大手紙首相官邸クラブ・キャップ経験者は語ります。「社トップが首相と会食懇談した日程は翌日付の紙面に『首相の動静』として載る。同じ紙面に首相批判の記事は載せにくいよね」

 首相と新聞社トップの懇談は取材現場の記者に無言の影響を及ぼしていると指摘します。
 欧米メディアには、現職メディア経営者は現職大統領、首相在任中は接触は控えるのを不文律とする例があります。政治の最高権力者が接触を求めるのは政治的な意図がないはずはなく、無防備に会うのは権力との癒着につながったり、不明朗な関係がメディアの信頼性を損ない、ひいては民主主義社会を支える「国民の知る権利」がゆがめられる恐れがあると考えるからです。

 日本新聞協会が定める新聞倫理綱領は、国民の知る権利は「あらゆる権力から独立したメディアの存在」によって保障されると明記しています。自分たちで決めた「倫理綱領」に照らして疑問の声がでなかったのでしょうか。
 日本新聞協会は115日、消費税増税にあたって新聞に軽減税率を適用するように求める声明を出しています。昨夏の消費税国会で消費税増税を推進する立場から報道キャンペーンを展開し、増税のレールが敷かれたら、新聞だけは例外として消費税を軽くして、という言い分は世論の批判を浴びたものでした。
 一連の首相と大手紙トップとの会食懇談の結果として、新聞に対する消費税の軽減税率適用がほぼ固まったとも新聞界の一部で伝えられます。恩恵を受ければ、受けた相手にたいする筆も鈍るというものです。

 新聞の権力監視機能は著しく低下しているとは最近のジャーナリズム論のもはや「定説」です。首相との懇談を受けて、各紙の憲法報道に影響が表れてくるだろうとの指摘が新聞界にはあります。
 社トップが安倍首相と数時間も懇談した各紙は、報道姿勢との関係を購読者に説明する責任を負っているのではないのか。