「この人は人間でない」という言葉で始まっています。
温厚そうな五十嵐氏が敢えてそう述べて、「重ねて安倍首相の辞任を要求する」というのはよくよくのことです。
また植草一秀氏も「国民の生命・自由・幸福追求尊重しない安倍首相」と題するブログで、痛切に安倍首相の言動を批判しています。
「より重大な問題は、こうした安倍政権の暴走を厳しく糾弾する論調が、完全に抑圧されていることである。 政府の責任を適正に問うことができないのなら、国は衰退の坂道を転げ落ちる以外に、道はなくなってしまうだろう」という言葉で(、公表部分を)終えています。
二人はそれぞれ元大学教授で、かつては気鋭の政治学者(五十嵐氏)であり、気鋭の経済学者(植草氏)でした。
権力に追随して惰眠を貪るメディア界や政界、そして衰退の坂道を転げ落ちようとしている国を切実に憂えて発された言葉です。
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日本人人質2人を見殺しにした安倍首相の辞任を重ねて要求する
五十嵐仁の転成仁語 2015年2月3日
この人は人間ではない、と強い嫌悪を感じました。テレビに映る安倍首相の顔を見たときです。
政治家で、それも一国のリーダーであれば、たとえ保守や極右であったとしても、それなりにまともな人間なのではないかと、今まではそう思ってきました。しかし、安倍さんは違うようです。それに、橋下さんや石原さんも……。
殺された後藤さんには、2人の幼い娘さんがおられます。この2人の娘さんは、「イスラム国」(IS)を名乗る過激派武装集団によってお父さんを奪われてしまいました。
下の娘さんはまだ生まれたばかりで、上の娘さんも2歳だそうです。お父さんの記憶は残らないでしょう。
その娘さん2人と一緒に残された奥さんの嘆きと怒りはいかほどでしょうか。手を下したのはISですが、その要求を無視し、救出のために何もせず、何もできずに2人の人質を見殺しにしたのは安倍首相です。安倍さん、あなたの手は血で汚れている!!
ISは2人を人質に取り、2億ドルの身代金の支払いを求めてきました。これについて、日本政府は交渉することなく、期限が過ぎたために湯川さんは殺されました。
その後、ISはヨルダンに収監されている死刑囚と後藤さんとの交換を要求し、その釈放を求めてきました。しかし、日本政府は直接交渉するパイプを持たず、期限までに要求が満たされなかったために後藤さんも殺されてしまいました。
IS側の要求に対し、「テロには屈しない」と言い続けて安倍首相は無視しました。そうすれば2人とも殺されるであろうことを十分に知りながら……。
安倍首相や官邸には、最初からこの2人を救う気がなかったのではないでしょうか。覚悟の上でのシリア入りである以上、「自己責任」ではないかという思いが強かったように見えます。
菅官房長官は記者会見で、身代金を用意していたかについて質問され、「それは全くない。100%ない」と明確に否定し、イスラム国と交渉する気は「全くなかった」と述べました。殺されても仕方がないという立場で見殺しにしたということでしょう。
何とかして救い出したいという気持ちが少しでもあれば、このような微妙な時期に中東諸国に行こうなどとは考えなかったでしょうし、そこで「イスラム国対策として」の2億ドル拠出を表明するような無神経なことも控えたでしょう。中東は歴訪しても、イスラエルとの親密な関係を誇示するような態度はとらなかったはずですし、有志連合の一員でISISを空爆したパイロトが捕虜になっているヨルダンを訪問したり、現地対策本部を作ったりすることは避けたにちがいありません。
しかし、安倍首相は、このような配慮や慎重さを全く示しませんでした。拘束されている人質のことなど、頭の隅にもなかったからです。
それどころか、この機会を絶好のチャンスだと捉えていたようです。世界に自分を売り込むことができる良い機会だと。
『週刊ポスト』2月6日号(1月26日配信)には、次のような記事「安倍首相中東訪問 外務省は時期悪いと指摘も首相の反応は逆」が出ていました。これを読めば、安倍首相の思惑が、はっきりと見て取れます。
安倍晋三首相は、1月17日~21日にかけて中東歴訪を行なったが、出発前の1月7日にフランスで週刊紙銃撃テロ事件が起きると、外務省内から今回の首相の中東訪問は「タイミングが悪い」という声が上がった。
ところが、安倍首相の反応は逆だった。官邸関係者がこんな重大証言をした。
「総理は『フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている』とうれしそうに語っていた。『世界が安倍を頼りにしているということじゃないか』ともいっていた」
周囲はその言葉を聞いてさすがに異様に感じたという。関係者が続ける。
「総理は総額25億ドル(約3000億円)の中東支援についても、『日本にとってはたいしたカネではないが、中東諸国にはたいへんな金額だ。今回の訪問はどの国でもありがたがられるだろう』と自信満々で、常人の感覚とは違うなと感じた」
テロは対岸の火事で、自国民の人質には一顧だにしないのが「積極平和外交」の実態だったのか。
安倍首相の「イスラム国」を名指ししての「挑発行為」の裏には、このような思惑が隠されていたということになります。「フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている」「世界が安倍を頼りにしているということじゃないか」「日本にとってはたいしたカネではないが、中東諸国にはたいへんな金額だ。今回の訪問はどの国でもありがたがられるだろう」という首相の言葉とされている発言からは、今回のような事件が起きる危険性への備えも、人質となっていた湯川さんや後藤さんに対する配慮も全くうかがうことができません。
そして、「イスラム国対策」を明示しての中東諸国への資金拠出を表明し、イスラエルとの友好関係を誇示しました。それが今回の事件のきっかけでした。
ISからの殺害予告ビデオの配信は、この安倍首相の言動に対する報復としてなされたことは明らかです。湯川さんを殺害したあとの動画では、「日本政府が72時間以内に何もしなかったから殺害した。アベがハルナを殺害したのだ」と明言しています。
しかし、新聞・テレビは一連の政府交渉の失態を一切指摘しようとしません。『週刊ポスト』2月13日号(2月2日配信)は「人質事件でテレビ各局に出演している中東専門家が異常な情報統制の実態を語る」として、次のような証言を報じています。
「テレビの収録で政府の対応の不手際で湯川さんが殺害された問題や後藤さんを巡る3か月間の交渉が失敗した問題を指摘しても、編集段階でカットされて番組で報じられることはない。生放送でも、司会者が話題を変えてしまう。どのテレビ局も対応は全く同じでした」
事実上の情報統制がなされているということでしょうか。その結果、「政府の対応の不手際」や安倍首相に対する責任追及が曖昧になるということがあってはなりません。
昨日のブログでも指摘していたように、後藤さんの殺害が明らかにされたビデオでも「安倍(首相)よ、勝ち目のない戦争に参加するという無謀な決断によって、このナイフは健二だけを殺害するのではなく、お前の国民はどこにいたとしても、殺されることになる。日本にとっての悪夢を始めよう」と、安倍首相が名指しされていました。問題は安倍首相にあったのです。
首相の無分別と自己顕示欲が引き起こした悲劇が、今回の人質殺害事件であったことは明らかです。ひとりの愚かな首相の無分別な行動が、平和国家としての日本のイメージを大きく転換させ、世界中の日本人を危険にさらすことになってしまいました。
しかも、このような惨事に便乗して集団的自衛権行使容認のための安保法制の整備を進め、「邦人救出」を名目に中東などに自衛隊を派遣できるようにしようとしています。このような「火事場泥棒」的目論見を断じて許してはなりません。
安倍首相の罪の大きさからすれば首相を辞任しただけでは済まないと思いますが、まずはその座を去ることによって責任を取るべきでしょう。重ねて、事件のきっかけを作っただけでなく、日本人人質2人を見殺しにした安倍首相の辞任を強く求めるものです。
国民の生命・自由・幸福追求尊重しない安倍首相
植草一秀の「知られざる真実」 2015年2月 3日
安倍政権の暴走を止めなければこの国は終わる。
安倍政権の基本姿勢は明確だ。国民の生命を守ることなど二の次、三の次である。
「人命第一」というのは、単なるウソだった。信用できる余地はゼロである。
2名の邦人がイスラム国に拘束され、身代金を要求されているときに、安倍首相は何をしていたのか。自由になる時間が十分に確保できた年末年始に安倍首相が時間を費やしたのは、ゴルフ、高級ホテルでのグルメ三昧、コンサートである。
驚愕の事実は、安倍政権が邦人救出のための身代金交渉を一切行わなかったことを自慢げに吹聴していることだ。
何のことはない。人命を救出する意思さえ持たなかったことになる。むしろ、積極的に人命が失われる方向に行動したと言われても反論できないだろう。
1月17日は、阪神淡路大震災から20年の時間を迎えるタイミングだった。安倍首相はこの慰霊式典に参加することなく、フランスでのテロ発生で警戒感が強まる中東に出かけていった。そして、安倍晋三氏が発した言葉がこれだ。
「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」
1月17日、阪神淡路大震災から満20年のこの日、安倍首相はエジプトで開催された「日エジプト経済合同委員会」でこう述べたのである。
邦人2名がイスラム国に拘束されるなかで、イスラム国を空爆で壊滅させるために戦う周辺国に2億ドルの支援を発表したのである。
これに呼応して、イスラム国が2億ドルの身代金をyoutube映像を通じて求めた。
安倍首相はこの事態に対して、イスラエルで日章旗とイスラエルの六芒星の国旗を背景に次のように述べた。
「卑劣なテロはいかなる理由でも許されない。断固として非難する。」
そして、安倍首相は現地対策本部をヨルダン国に設置することを指示した。
ヨルダン国に現地対策本部を設置したことが、湯川さんと後藤さんの救出を極めて困難にした主因である。
一連の推移を見ると、安倍首相にはそもそも、邦人2名を救出する意思が存在しなかったとの疑いが浮上する。
他方、イスラム国の出現には不透明な部分が多くある。
イスラム国の出現で最も利益を得ているのは誰か。この視点も重要である。
イスラエルは有志国連合を通じて、アラブ諸国との敵対関係を緩和している。
また、米国の産軍複合体は、中東地域における武器弾薬、兵器の販売を急拡大させる格好の素材を得たことになる。イスラエルが米国の産軍複合体と直結する存在であることは言うまでもない。
安倍首相は日本を米国の産軍複合体の利益共同体に組み入れるために行動しているように見える。
邦人の命を救う=人命第一の方針が取られたのなら、政府の対応はまったく異なるものになったはずだ。
邦人が拘束されて身代金を要求された際、人命第一の方針で対応するなら、身代金交渉に応じる対応が取られるの普通である。
身代金交渉に応じることは、他の多数の邦人の拘束リスクを高めるから、人命第一の原則に反するとの反論は示され得る。
しかし、フランスやドイツは身代金を支払って人質の命を救出したと見られている。
そして、その後にフランス人やドイツ人の拘束が増加したとの事実も確認されていない。
また、身代金交渉などについて否定的な見解を示している米国も、アフガン戦争の際には人質交換などの対応を示している。
邦人を見殺しにしておいて、「身代金交渉は一切していない」ことを自慢げに語る安倍政権の暴虐ぶりを主権者は直視する必要がある。
より重大な問題は、こうした安倍政権の暴走を厳しく糾弾する論調が、完全に抑圧されていることである。
政府の責任を適正に問うことができないのなら、国は衰退の坂道を転げ落ちる以外に、道はなくなってしまうだろう。
(以下は有料ブログのため非公開)