「イスラム国」人質殺害事件で、安倍政権は、連日国会で野党から追及されていますが、問題となっている中東訪問時のスピーチに関しても「言葉が不適切だったとは考えていない」などという主張を繰り返し、肝心の救出の交渉についても「最善を尽くしたが、その具体的な内容は避けたい」と逃げるだけです。それでは検証は進みません。
この問題に限らず、安倍首相は自分が不利になることについては、国会でも常に質問をはぐらかしてまともに答えずに、関係のない話を延々と繰り返すのを常として来ました。
これらはすべて国会の速記録に載るので、そこには質問に対する回答の貼り付け場所を間違ったとしか思えないようなチグハグな問答が羅列されることになります。
一体後世の人たちはそれを読んでどのように理解するのでしょうか。
それにしても安倍首相とその政権は、官邸の別働隊かと思われるような政権擁護派の援護を背景にして、なぜああまで話が核心に触れることを忌避しているのでしょうか。
哲学者で文芸評論も行っている山崎行太郎氏は、「安倍政権への批判に対して、逆に安倍政権批判をするべきではないという議論が、安倍政権の周辺から湧き起こっているのはまことに不可思議な光景である」として、「安倍首相は、明らかに批判に怯えそれを極度に恐れている。それは安倍やその支持者達が、人間的にも思想的にも極めて脆弱でひ弱だからである。批判や糾弾に怯えるような人間は政治家にも最高指導者にもなるべきではない(要旨)」と述べています。
民放では少しずつ人質殺害問題の検証番組が登場するようになりました。
LITERAは8日の記事:「安倍政権にまた人質見殺しの新事実が …相次ぐ失態暴露に公安が口封じ逮捕の動き?」で、2月7日に放映されたTBSの『報道特集』を取り上げ、政権が人質を救う上で如何に「不作為」に徹したかということと、それとは逆にそれを知っている証人たちや政権批判者たちを官憲が弾圧しようと策動していることを伝えています。
LITERAの記事と山崎行太郎氏のブログを紹介します。
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安倍政権にまた人質見殺しの新事実が
…相次ぐ失態暴露に公安が口封じ逮捕の動き?
LITERA 2015年2月8日
「イスラム国」人質殺害事件での日本の対応について、国会では連日、野党から追及が行われている。しかし、安倍晋三首相は問題となっている中東訪問時のスピーチに関しても「言葉が不適切だったとは考えていない」などと正当性を主張するばかり。肝心の交渉については、「(政府は)もっとも効果的な方法を考えた」(菅義偉官房長官)と言い張るが、その詳細は「具体的な内容は避けたい」(岸田文雄外相)の一点張り。
それも当然だろう。官邸は湯川遥菜さんと後藤健二さんを救うための方策など何も講じていなかったのだから、具体的内容などいえるわけがない。
実際、昨日2月7日放送の『報道特集』(TBS系)でも唖然とさせられるような新事実があきらかになった。それは、湯川さんと後藤さんの殺害予告動画が公開された1月20日以降、日本政府がイスラム国へ送った日本語の「音声メッセージ」の存在だ。
音声メッセージの送り主は、「実在するシリア臨時代理大使」。音声の長さは25秒。その内容は、以下の通りだ。
「私、○○○(番組では○の部分は音声を伏せている)は日本政府の代表である。日本政府は日本人2名の無事な生還について真剣である。当該2名のフルネームと生年月日はそれぞれ、湯川遥菜1972年○○○○、後藤健二1967年○○○○である」
2人の映像がアップされた後に政府がこんな初歩的なメッセージを、しかも日本語で送るなんてことがありうるのかと思うのだが、この音声メッセージはどうも本物らしい。
今回、音声メッセージを公開したのは、イスラム国とパイプをもつイスラム法学者の中田考氏。中田氏に音声メッセージを送ってきた人物は、イスラム国の司令官であるウマル・グラバー氏だ。ウマル氏は上級幹部と話ができ、バグダディ容疑者とも何度か会っているという重要人物。昨年9月、中田氏はウマル氏から拘束されていた湯川さんに対するイスラム国の裁判で通訳を依頼され、ジャーナリストの常岡浩介氏とともにイスラム国の支配地域に赴いたが、空爆の開始により湯川さんとは対面できずに帰国。10月にはイスラム国の関係先として公安から家宅捜査を受けたことで、湯川さん解放のために再びシリアへ渡航することもできなくなった。そしてウマル氏との接触をおさえざるを得なかった。しかし、1月20日の殺害予告動画公開を受け、中田氏は再びウマル氏と連絡するようになったという。
ウマル氏が中田氏に繰り返し伝えていたのは、「とにかく時間がない」ということだった。要求に対して日本政府が答えていない──そのことに苛立っている印象を受けたと中田氏は言う。そんななか、中田氏はウマル氏から「翻訳をしてくれ」という依頼が入る。それが、前述した日本語の音声メッセージだ。
ウマル氏は「(この音声メッセージが)ほんとうに日本政府のものか確認したい」といい、そして「これが正しいものか」と中田氏に質問した。この状況では中田氏も「私にもわかりません」と答えるしかなかったのだが、ウマル氏は音声メッセージの信憑性について「決して信用していない」と中田氏に伝えた。
緊急性を感じた中田氏は、深夜4時という時刻だったがすぐさま外務省の邦人テロ対策室に連絡。音声メッセージが本物かどうかを問い合わせたが、外務省の返答は「本物だと思ってもらっていい」という回りくどい表現のもの。ちなみに『報道特集』の取材に外務省は「具体的な交渉の内容は明らかにできない」としつつも、今回の事件の交渉内容を知る外務省幹部が日本語の音声メッセージをイスラム国側に送ったことを認めたという。
つまり、音声メッセージは本物であり、政府の対応は2人の動画がアップされて数日たった段階でまだこんな程度のレベルだったのである。ウマル氏に信憑性を疑われるのも当然で、中田氏は番組内でこのように解説している。
「真剣だと言ってもですね、日本政府の代表といわれる人間がそのレベル(シリア臨時代理大使、ヨルダンの日本大使館参事官の兼務)の人間であるというのは、やはり……。もちろん首相ではなくともですね、少なくとも外務大臣や副大臣、名前の確認できる人でなければですね、真剣だと言っても先方には伝わらないように思います」
しかも、ウマル氏が伝えてきたイスラム国側の要求内容を中田氏はすべて外務省に報告したが、外務省から中田氏への連絡は一度もなかった。
湯川さんが殺害された後、ウマル氏は中田氏にこう伝えてきたという。
「先生、事態を理解してください。我々としてはできる限りのことをやったんだけれども、上の命令なので私にはこれ以上のことができなかった。非常に残念である」
それ以降、ウマル氏からの連絡は途絶え、トークアプリのアカウントも消えている。
ようするに、日本政府は中田氏というイスラム国側と交渉するたしかなパイプがあったにもかかわらず、しかも中田氏は自ら外務省にすべてをつぶさに報告していたのに、それを完全無視したのだ。
安倍首相は今月2月5日の参議院予算委員会で、「こういう出来事が起こりますとですね、中田さんだけではなくて、自分はこういう(交渉)ルートがあるから協力したいという人は結構出てくるんですよ」「やたらめったらに『お願いします』とすれば、(交渉が)うまくいかないのは常識」「このような申し出に簡単に乗るわけにはいかない」と話したが、なんの説得力もない。
中田氏のことを信用できないというのはわかるが、政府はこの段階で小学生のようなメッセージを日本語で送るくらいしかできていなかった。交渉を中田氏に任すということはしなくても、もう少し踏み込んだメッセージを中田氏経由で届けてもらうとか、具体的な交渉に入るための段取りをイスラム国側にヒアリングしてもらうくらいのことはできたはずだ。
しかし、政府はそれすらもやらなかった。それは怠慢というより、そもそも安倍首相と官邸には救出のための具体的対策を講じる気など最初から一切なかったということだろう。
それだけでも十分唖然とさせられるが、じつはもっと呆れかえる話がある。なんと、この中田氏を現在、公安がマークし、身辺調査を行うべく動き回っているというのだ。
「公安が目を付けているのは中田さんだけではなく、常岡浩介さんも同様にターゲットとなっている。公安が嗅ぎまわっているのは、ふたりを逮捕できる材料。何かしら理由をつけて逮捕することで、ふたりを黙らせるのが公安の狙いです」(公安担当記者)
先にもふれたように、湯川さん拘束の後、中田氏と常岡氏が公安の妨害を受けていなければ、湯川さんは助かっていた可能性がある。そして後藤さん拘束と2人の殺害が予告された後には、「(人質解放の)交渉ができるのなら、イスラム国に行く用意がある」とさえ申し出ていた。それを無視しただけなく、いまもなお、中田氏と常岡氏を逮捕しようとしている。今回の『報道特集』で中田氏は政府の失態をあきらかにしたわけだが、こうした告発を力で押さえ込もうとしているのだ。
事実、2月4日の衆議院予算委員会で山谷えり子国家公安委員長は、「イスラム国関係者と連絡を取っていると称する者や、ネットでイスラム国支持を表明する者が国内で所在することも承知している」と答弁。そうした人物への警戒を徹底的に強化する方針を公表したが、“テロ対策”を謳って、交渉の詳細を知る人物の口封じをする意図が透けて見えるかのようだ。
「山谷氏が委員長になってからというもの、公安はやり口が露骨になってますからね。何をやるかわからない。新左翼過激派にやっているような、ホテルを偽名で泊まった、免許証の住所変更をしなかった、などの微罪逮捕もありうるし、中田さんや常岡さんなど、イスラム国とパイプがある人物だけでなく、この問題で政府に批判的な専門家を片っ端から洗っているという話もあります」(前出・公安担当記者)
だが、こうした政府の人質見殺し、そして卑劣な批判封じを追及する動きはまったくない。ほとんどの大手メディアが政府に睨まれるのを恐れ、人質事件における政府の対応についての検証を放棄。そして、『報道ステーション』(テレビ朝日系)や今回の『報道特集』など、真っ当に安倍政権の対応を検証しようとした番組に対しては、政府と連動するようにネットからヒステリックな批判の声があがっている。
たとえば、『報道特集』はこの中田氏の証言にかぎらず、1月28日にアメリカからヨルダン政府に圧力が加わり後藤さんの解放を阻んでしまったことや、かつてイスラム国に拘束されたスペイン人の人質解放に成功したヨルダン人弁護士が協力を申し出たものの、日本政府からはなしのつぶてだったことなど、かなり踏み込んだ検証を行った。
が、ネットの反応は逆。同番組への「偏向報道」の大合唱が起き、こんな書き込みであふれている。
「反日TBSの報道特集が報ステ超えしたぞ!」「なんだ?この放送局は?ISの犬畜生じゃないの」「テロリスト批判は無く、“日本の過ち”と日本が諸悪の根源の様な口振りの報道特集」
このままヒステリーが広がっていけば、公安による不当な逮捕劇が行われても、それに対する批判は「イスラム国のスパイを許すな!」という大合唱にかき消されてしまうだろう。そして、「テロとの闘い」を名目に安倍政権の言論取り締まりはどんどん強化されていく。オーバーではなく、言論統制国家はすぐその先にあるといっていい。
(田部祥太)
安倍首相は、何故、「安倍政権批判」に怯え、恐れるのか?
批判に弱い安倍晋三に政治家の資格なし? ひ弱な独裁者は、より強大な権力にすがりつく!
哲学者=山崎行太郎の「毒蛇山荘日記」 2015年2月8日
政治家は批判されるものである。批判されるのが職業である。それ故に政治家は、一般庶民とは異なり、一目置かれる存在となるのである。
ところで、「イスラム国」人質事件で、日本人人質を見殺しにした安倍政権だが、そのことに端を発した安倍批判が、国民の間から湧きおこっている。しかし同時に、安倍政権の周辺からは、安倍政権批判を、逆に批判・否定し、安倍政権批判をするべきではないという議論が湧き起こっている。まことに不可思議な光景である。
安倍首相は、明らかに、安倍政権批判に怯え、それを極度に恐れている。何故、安倍首相やその周辺、あるいは安倍政権支持者達は、安倍政権批判を恐れるのか?私は、恐らく、安倍晋三やその支持者達が、人間的にも思想的にも、極めて脆弱な、ひ弱な存在だからだろうと予想する。だから政権批判や安倍批判を、一国の命運を預かる総理総裁として、堂々と受け止めることができないのである。
私は、批判や糾弾に怯えるような人間は、政治家にも最高指導者にもなるべきではないと考える。肝心な国民の生活や生命財産の保持という大問題が疎かになり、専ら、自分の個人的な「生活問題」や「精神問題」が、仕事の中心になるからである。それでは政治家失格である。
(以下は有料ブログのため非公開)