2015年2月15日日曜日

曽野綾子氏の人種隔離容認に非難が集中

 作家の曽野綾子氏が、産経新聞に毎週水曜日連載の「透明な歳月の光」第629回「労働力不足と移民」で、“「適度な距離」保ち受入を”と題して、高齢者の介護のための人手を補充する手段としての労働移民を取り上げ、「高齢者の面倒を見るのに、ある程度の日本語ができなければならないとか、衛生上の知識がなければならないとかいうことは全くない」ので、労働力として受け入れることに問題はないが、「居住区だけは白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい(要旨)」と書いたことに対して多くの批判が寄せられました。

 外国人の介護労働者に対する蔑視も相当なものですが、海外からはまず人種隔離(アパルトヘイト)の思考に対して非難が集中しました。

 アメリカのウェブメディア『デイリービースト』は、首相のブレーンが「日本にアパルトヘイトを望む」、『ロイター』は「政府のブレーン、アパルトヘイトを賛美し、首相に恥をかかせる」とそれぞれ書き、『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、曽野のコメントとして、「私も人間ですから、過ちを犯します。しかしこの記事について、誤りがあるとは思いません」と述べたことを報じています
 
 そうしたところ南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使が、アパルトヘイトを許容する内容が含まれているとして、産経新聞に13日付抗議文を送っていたことが分かりました
 また、アフリカに関する活動を行っているNGO「アフリカ日本協議会」も13日付で、産経新聞と曽野綾子氏に対して抗議文を送りました。
 
 曽野氏は安倍首相に重用され、内閣のブレーンの一人として政府諮問機関委員などを多く務めています。
 そのうえ2014年の道徳教科書には『誠実の人』として登場していますが、その評判は決して芳しくはありません。
※ 2014年10月31日 曽野綾子が新版の道徳教科書に載る 
 
 毎日新聞の記事とアフリカ日本協議会の抗議文を紹介します。
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産経新聞:曽野氏コラム、南ア大使も抗議文 人種隔離許容
毎日新聞 2015年02月14日 
 産経新聞が掲載した作家の曽野綾子氏のコラムにアパルトヘイト(人種隔離)を許容する内容が含まれているとして、南アフリカのモハウ・ペコ駐日大使が同紙に抗議文を送っていたことが14日分かった。同紙によると抗議文は13日付。
 
 問題視されているのは、産経新聞11日付朝刊の「労働力不足と移民」と題したコラム。曽野氏は労働力不足を緩和するための移民受け入れに言及し、「20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」などと書いた。
 
 同紙によると、ペコ大使は「アパルトヘイトを許容し、美化した。行き過ぎた、恥ずべき提案」と指摘。アパルトヘイトの歴史をひもとき、「政策は人道に対する犯罪。21世紀において正当化されるべきではなく、世界中のどの国でも、肌の色やほかの分類基準によって他者を差別してはならない」としているという。
 
 一方、NPO法人「アフリカ日本協議会」(東京都)も抗議文を送り、コラム撤回を求めている。
 同紙は公式サイトに、小林毅・執行役員東京編集局長名で「当該記事は曽野綾子氏の常設コラムで、曽野氏ご本人の意見として掲載しました。コラムについてさまざまなご意見があるのは当然のことと考えております。産経新聞は、一貫してアパルトヘイトはもとより、人種差別などあらゆる差別は許されるものではないとの考えです」とのコメントを掲載した。【町田徳丈】
 
 
産経新聞 曽野綾子さんのコラムへの抗議文
2015年2月13日 
「アフリカ日本協議会」
このコラムが掲載された2015年2月11日は、故ネルソン・マンデラ氏が釈放されて、ちょうど25年目にあたる日でした。その記念すべき日に、南アフリカの人びとが命をかけて勝ち取ったアパルトヘイトの終焉と人種差別のない社会の価値を否定するような文章が社会の公器たる新聞紙上に掲載されたことを、私たちはとても残念に思います。
(中略)
曽野綾子氏と産経新聞社には、当該コラムの撤回と、南アフリカの人々への謝罪を求めます。また、このような内容のコラムが掲載されるに至った経緯、および人権や人種差別問題に関する見解を明らかにすることを求めます。