2015年2月6日金曜日

テロとの戦いをずっと続けていたい それが米国の本音

 テロ行為は確かに非難されるべき犯罪です。
 衆議院は5日の本会議で、イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人殺害事件について、「非道、卑劣極まりないテロ行為を強く非難するとともに、決してテロを許さない姿勢を今後も堅持することを表明する」などとした決議を全会一致で採択しました。
 参議院でも6日の本会議で同様の決議を採択する見通しです。

 ところで「テロとの戦争」はアメリカが約20年ほども前から口にしてきましたが、いまだになくなりません。それどころか当面の対象とされる「イスラム国」は極く近年になってから出現した勢力です。

 アフガニスタン戦争の当事者であったアルカイダはアメリカが以前に育てたものでしたが、この「イスラム国」はどうなのでしょうか。シリアの現政権を倒すのに利用されているとか、主力部分には攻撃をかけないとか、裏でアメリカとつながっているというような説が流れています。
 
 中東情勢に詳しい西谷文和氏が、アメリカが「イスラム国」を作り出したことを、イラク戦争の戦後処理に沿って極めて具体的に説明しています。
 アメリカがイラク戦争後に行ったスンニ派に対する過酷な仕打ちが、彼らをアルカイダに追いやり、それがやがて「イスラム国」に変貌を遂げたというものです。
 西谷氏は、そのようにして目的意識的にテロ勢力を作り、そのテロ勢力とずっと戦争を続けていたいというのがアメリカの本音だ、としています。
 
 武田邦彦氏も4日のブログで、アメリカは巨大な軍事産業と闇の資金を抱えていて、「常に戦争をしなければ国家がもたない」という状態にあるために、第二次世界大戦後もベトナム戦争、キューバ危機、アフリカ紛争、イラク戦争、アフガニスタン戦争、そして中東と、際限なく戦争を続けているとしています。
 アメリカはそうした国々との戦争を経たのち、今はテロ勢力を戦争の相手としていて、昨年夏にイスラム国を空爆し兵士民間人を8000人も殺害したのは、それによって「(報復)テロ勢力を増やしたい」からと考えられるとしています
 そんな風にして常に戦争をしていないと自分たちが立ち行かないと考えているのであれば、実に不道徳を極めた国家です。
 
 奇しくも二人の識者がそれぞれ独自の考察から、アメリカは対テロ戦争をずっと続けたいのだとする見解を示しました。突飛な逆説のように見えて現実と良く整合しています。
 
 対テロ戦争・・・それは空爆による大量破壊・大量殺戮ということです。有志国連合による空爆は既に2000回を超えています。1回の空爆で一体どれほどの爆弾が投下されるのでしょうか。
 人質を拘束したり自爆テロを行うなどは確かに犯罪ですが、その規模は空爆によって引き起こされる破壊と殺戮とは比べものにもなりません。そうした現実は冷静に踏まえておく必要があります。
 
 西谷文和氏と武田邦彦氏のブログを紹介します。
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残忍なように見えるイスラム国を作って、テロとの戦いをずっと続けたい
 ・・・これが米国の本音
西谷文和 晴耕雨読 2015年2月5日
ツイッター 2015年2月1~2日
イスラム国の正体を暴く というDVDを作った。
イスラム国とはいったい何者なのか?
その質問に答えるためには2003年のイラク戦争を分析する必要がある。
米国はフセインを倒した。政権を倒したのだから、そこで戦争を終えるべきだった。
戦争後、米国の占領政策が今の事態を招く
 
米国はすぐにイラク軍を解体した。約40万人の兵士は、武器を持ったままリストラされた。兵士の多くはスンニ派だった。ふるさとのファルージャやモスルに帰っていった。
米国はそのファルージャやモスルで暴虐の限りを尽くす。多くの市民を虐殺していった。
元兵士の多くは、このときアルカイダに入るこれがイスラム国の火種となる。
 
米国はフセイン時代の官僚もリストラした。官僚たちもスンニ派のふるさとに帰っていく。当然、米軍の虐殺で家族を殺された。この元バース党の官僚たちもアルカイダに吸い寄せられた。
イスラム国の組織は、バグダティをトップに、イラク担当、シリア担当の軍人がいる実際にはこの2人の軍人が戦術を練っていると考えられる。2人とも元イラク軍の幹部。
 
2人の軍人の下に、国会にあたる評議会があって、その下に県知事を配置している。
こんな組織を考え、機能させるのは、元バース党の官僚だろう。つまりイスラム国は「テロ組織と国家との中間」のようなものになったイスラム国はイラク北部のモスルを陥落させ、銀行を強奪。さらに油田を押さえて1日約2億円の原油収入を得た。
そして人質を利用した身代金ビジネスで肥え太っていった。この金で戦闘員を雇い、「イスラム国民」に食料や電気などの「アメ」を配って支配していった。「ムチ」は恐怖政治。
 
つまり米国はフセインを倒した後、イラクをわざと無政府状態にした。なぜか?
それが石油の強奪なのだ。戦争後、欧米の石油メジャーがやって来て、イラク原油の75%を奪っていく。イラク政府に入るのはわずか25%だ。それも入札なしの契約で。
通常、中東地域では不利な契約でも51%は国家がとるイラクを無政府状態にすれば、メジャーは「取り放題」なのだ。
 
実際にフセインは1970年代にイラク原油施設を国有化した。イギリスは撤退させられた。米英はフセインが敵だった。「強い政府」ができれば米英は困る。むしろ無政府状態が好ましい。戦争でバグダッドの町は破壊された。
 
ゼネコンも来る忘れてはならないのがブッシュ、チェイニーは石油&建設資本の番頭。ラムズフェルドもライスもパウエルも。イラク人は一連の事態を目の当たりにして来た。「テロとの戦い」の本質は、軍需、石油、鉄鋼、治安ビジネスの求めるところ。本質はここにある
 
事態を逆から見ることが大事。「イスラム国が残忍だからテロとの戦いを強化する」これが安倍首相の見方。事実は逆で、「残忍なように見えるイスラム国を作って、テロとの戦いをずっと続けたい」。これが米国の本音。
 
米国はイラク戦争で財政破綻しているので、「日本の金で戦争したい」も本音。で、集団的自衛権に結びつけられていく。日本の金は戦争に、つまり米国にむしり取られる。
もし自衛隊も参戦するとなると、(これだけは食い止めたいが)自衛隊員は肉体も心もぼろぼろになる。この治療費は税金だ。
 
米国は戦費&兵士の医療費で破綻寸前。福祉も教育も削られる。日本がそうなっていいのか今からおはよう朝日で、今回の事件を振り返ります。日本政府の責任が大きいことを指摘したいです。
 
安倍首相は「罪を償わさせる」と述べた。これは有志連合に入って、空爆補助または空爆をすると言うことに等しい。なんでわざわざこのコメント入れるかな?ケンカして負けたやくざが「覚えてやがれ!」と毒づくのに似ている。
まぁ安倍首相ならこのレベルかな?
 
後藤さんは空爆参加を望んでないぞ
          (中 略)
本日の夕方、関テレ「ニュースアンカー」で今回の人質事件について語ります。
おそらくこれが最後。
後藤さんのご冥福をお祈りするとともに、このような事件が二度と繰り返されないように、真の解決の方向について、話が進むことを期待しています。
 
 
(ニュース解説)テロを防ぐ具体的方法・・・アメリカの本当の気持ち
武田邦彦 2015年02月04日
   音声ブログ ↓
 
「テロを憎む」とか「テロは許せない」と言われます。あまりにも当然で、こんなことを20年も言っているのだから、テロを無くそうとはしていないことは明らかです。人というのは本当に目前のことを解決しようとすると、必死にその「方法」を考えます。
 
「食べていけない」というとその社会に文句を言う先に、ともかく就職先を探しますし、子供の成績を上げようとすると「どうしたら成績が上がるだろうか」と考えます。
つまり単に「テロを憎む」と20年も言っている状態というのは、「本当はテロをなくしたくないけれど、表面的にはできるだけ強く言っておいて、裏ではテロが発生するように行動する」ということだからです。
 
アメリカは巨大な軍事産業と闇の資金を抱えていて、「常に戦争をしなければ国家が成り立たない」という状態にあります。そのために、すでに戦争が終わって70年を経るのにまだ日本や韓国に多くの軍隊を駐留させています。
第二次世界大戦後も、ベトナム戦争、キューバ危機、アフリカ紛争、アフガニスタン、そして中東と限りなく戦争を続けています。もちろん、アメリカにとっても若者を遠い異国に駐留させ、あるいは戦争になったらその命を奪うのですからデメリットもあります。でもそれを超えたメリットがあるからこそ、戦争を仕掛けるのです。
 
その典型的な例がフセイン大統領を絞首刑にしたイラク戦争でした。
遠因となったのは9.11のニューヨークのテロ事件ですが、まずは話をスッキリさせるために9.11から始めたいと思います。このテロの犯人がアルカイーダであり、首謀者がビンラディンであるとしてアフガニスタを攻めます。ここまでは問題はありますが、一応の筋は通っています。
 
しかし、当時のブッシュ大統領は国内事情と自らの支持率との関係で、どうしても戦争を拡大しなければなりませんでした。日本に住んでいて平和の中で人生を送っていると、わざわざ戦争したくないはずだという先入観がありますが、そんなことが本当なら、アメリカは自らの意思で戦争をやめることができるのですから、「お人好し」の議論をしているわけには行きません。
 
アメリカが常に考えていることは、どうしたら戦争のきっかけを作ることができるかということです。その一つが「フセイン大統領が大量破壊兵器を持っている」ということでした。戦争をしたくないなら、こんな大げさなウソをつく理由はありません。
でも、アメリカは今まで、インディアンとの戦い、スペインとの戦い、日本、そしてベトナムとの戦争でしたが、今では「テロを増やすための行動」をやっています。それが2014年(昨年)の夏にアメリカがイスラム国を空爆し、兵士6000人、民間人2000人も殺害しました。イスラム国の隣にアメリカがあるなら、まだ「自衛のため」といえますが、国連も無視して自分だけの判断で空爆をするのは「テロを増やしたい」からと考えられます。
表面で言っていることだけを考慮するような「子供のような日本人」から脱する必要があるでしょう。