沖縄県は名護市辺野古基地建設で沖縄防衛局が設置しているコンクリート製の「トンブロック」(10~45トン)がサンゴなどを傷つけている問題で、作業の一時停止を指示する方向で調整に入りました。
このブロックは浮具(フロート)や浮標灯(ブイ)を固定するためのアンカーで、当初は厚手の鉄板を使用しましたが軽すぎて用を足せなかったために急遽トンブロックに変更したものです。
県は大浦湾内でのブロック設置場所が、昨年8月に県が岩礁破砕許可を出した区域よりも大幅に外側であることなどを問題視し、防衛局からの回答次第では岩礁破砕許可の取り消しも含めて検討しているということです。
またトンブロック(アンカー)の投入に対して、10日、市民ら2662人が連名で翁長雄志県知事宛てに、防衛局が進めているアンカー設置作業を中止させ、防衛局に新たな岩礁破砕許可申請を求める勧告を出し、県の勧告に従わないのであれば、本工事の岩礁破砕許可自体を取り消すことを要求する緊急要請書を提出しました。
これに同行した沖縄国際大学の佐藤学教授は記者会見で、「(先に設置した前知事の埋め立て承認に瑕疵がなかったかどうかを検証する)第三者委員会の検証結果が出る時に本工事が始まっていたら意味がない。県知事は今こそあらゆる権限を使って止めなければならない」と強調しました。
一方、辺野古の新基地建設では、名護市議会の議員ら6人が11日午前、船上から作業現場を事前視察しましたが、オイルフェンス内を航行していたところ、海上保安官が男性船長(29)のライフジャケットの胸ぐらをつかむなどして船を拘束しました。乗り合わせていた議会軍事基地等対策特別委員会長は、「暴力的な警備をしていることが分かった。明日(12日)の要請の場で抗議したい」と話しました。
3つの記事を紹介します。
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辺野古サンゴ破壊 県、岩礁破砕許可取り消しも
琉球新報 2015年2月12日
(沖縄)県は11日までに、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けて沖縄防衛局が設置しているコンクリート製の「トンブロック」(10~45トン)がサンゴなどを傷つけている問題で、作業の一時停止を指示する方向で調整に入った。移設予定地に面した大浦湾内でのブロック設置場所が、昨年8月に県が岩礁破砕許可を出した区域の外であることなどを問題視した。県は12日にも防衛局からトンブロックについての回答を受けて早急に対応を決めるが、岩礁破砕許可の取り消しも含めて検討している。
県首脳は11日、「対応は急がれる。指示や取り消しなど岩礁破砕を許可した際に付した条件について議論する」と述べ、許可に際して付した「条件に違反した場合は取り消すことがある」との条項に当たる可能性を示唆した。
県は昨年8月、防衛局が申請した172ヘクタールの埋め立て予定地に係る岩礁破砕を許可したが、防衛局は現在、沿岸から最大約2キロ離れた臨時制限区域に沿ってブロックを設置している。
これを県農林水産部は問題視し、県漁業調整規則に基づく岩礁破砕の再協議の必要性などを判断するため、防衛局側にブロックの仕様などを含めて2度にわたり質問をしている。
防衛局は取材に対し「ブロックを設置している場所に関して県は昨年、フロートを固定するアンカーの設置許可は不要と説明しており、あらためて協議する必要はない」と答えている。
これに対し県は「これほど大きなブロックを設置する作業について協議がないのは疑問だ」と話している。
防衛局は大浦湾で立ち入りを制限する臨時制限区域を海上で示す浮具(フロート)や浮標灯(ブイ)を固定するため、数百キロ~数十トンのブロックを設置。計75の設置予定地のうち約20カ所で設置が完了、仮置きも含めて海中の約60カ所にブロックを沈めたとみられる。
ブロックの設置でサンゴを傷つけていることを受け、翁長雄志知事は10日、取材に対し「事実関係を確認して対応する」と述べた。
「アンカー中止を」 市民有志、知事宛てに2662人署名
琉球新報 2015年2月12日
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり10日、市民ら2662人が連名で翁長雄志県知事宛ての緊急要請書を提出した。市民らは大浦湾で防衛局が進めているアンカー設置作業を中止させ、防衛局に新たな岩礁破砕許可申請を求める勧告を出すよう要求した。元名護市議の宮城康博さん(55)がインターネットなどで呼び掛けた。
宮城さんが7日に署名を呼び掛けると次々と広まり、2日間で署名は2千人を超えた。短期間に多くの署名が集まったのは辺野古埋め立て承認に関する有識者委員会の検証中も、基地建設作業が強行されることへの焦燥感が表れている。
「県民とすべての憂慮する市民有志」の要請文は、アンカー設置作業がサンゴや岩礁を破壊していることを指摘し、県が一刻も早く防衛局に勧告することを求めた。さらに防衛局が県の勧告に従わないのであれば、本工事の岩礁破砕許可自体を取り消すことを提案した。
同日午後、宮城さんと沖縄国際大学の佐藤学教授らが県海岸防災課を訪れ、赤崎勉課長に要請書と署名を手渡した。宮城さんは「県が検証する間にも工事が進む。危機感を持っている」と訴えた。赤崎課長は、仮設桟橋に関する再質問を検討していることを話した上で「知事と両副知事に伝える」と答えた。
記者会見を開いた佐藤教授は「委員会の検証結果が出る時に本工事が始まっていたら意味がない。県知事は今こそあらゆる権限を使って止めなければならない」と強調した。
海保、船長の胸ぐらつかむ 市議視察船を一時拘束
琉球新報 2015年2月12日
【辺野古問題取材班】米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、12日に海上保安庁などに過剰な警備について抗議する名護市議会の議員ら6人が11日午前、船上から作業現場を事前視察した。議員たちが「暴力的で過剰な警備は許さない」と呼び掛けながら、臨時制限区域を示す油防止膜(オイルフェンス)内を航行していたところ、海上保安官が船を一時拘束した。
議員たちは取材陣と同じ船に乗っていた。船が拘束される際、海上保安官が男性船長(29)のライフジャケットの胸ぐらをつかみ、緊迫した。船には定員の13人が乗っていたが3、4人の海上保安官が乗り込み、一時定員オーバーとなった。海保のゴムボートで船をオイルフェンス外にえい航した。同議会軍事基地等対策特別委員会の大城敬人(よしたみ)委員長は「暴力的な警備をしていることが分かった。明日の要請の場で抗議したい」と話した。
午後にはオイルフェンス内でカヌーに乗って抗議していた市民3人が一時拘束された。