植草一秀氏による安倍首相批判記事を紹介します。
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安倍首相の邦人拘束事件対応は正しかったのか
植草一秀の「知られざる真実」 2015年2月 2日
イスラム国による邦人拘束事件を契機に安倍政権の基盤が揺らぐ状況が強まると予測される。
イスラム国の残虐な行為が非難されるべきことと、日本政府が邦人拘束事件にどのように対応するべきであったかは、別の問題である。
安倍首相の邦人拘束事件に対する対応は、失敗の連続であったと言うべきである。
安倍首相はイスラム国に対する批判とは別に、安倍政権の政策対応の失敗に対して責任を明らかにする必要がある。
安倍首相が自ら自らを律することが出来なければ、適正な検証を行い、安倍首相の責任を適正に問うのが議会の役割である。
通常国会が開会されているから、主権者を代表する国会議員は、適正な対応を示すべきである。
安倍首相の邦人拘束事件に対する対応は失敗の連続であった。
湯川遥菜さんがイスラム国によって拘束されたことがyoutube投稿によって明らかになったのが昨年8月17日である。
その直前、米国を基軸とする有志国連合がイスラム国に対する空爆に踏み切った。
湯川さんがどのような背景でイスラム国に拘束されることになったのかについても検証が必要である。
湯川さんは民間軍事会社を創設し、その活動の一環としてシリアに入国したとされるが、湯川さんの軍事会社の関連に政治家や衆議院議員選挙立候補者の関わりが指摘されている。
米国がイスラム国空爆を開始し、湯川さんがイスラム国に拘束された直後にあたる9月下旬、安倍首相はニューヨークで有志国連合によるイスラム国空爆と、空爆によるイスラム国壊滅を支持する発言を示した。
外務省サイトに紹介されている、安倍首相とイラクのマスーム大統領と会談における安倍首相の発言は次のものである。
「日本は,イラク政府も含む国際社会のISILに対する闘いを支持しており,ISILが弱体化され壊滅されることにつながることを期待する」
安倍首相がエジプトのシシ大統領との会談で示した見解は、日本経済新聞が、
「首相「空爆でイスラム国壊滅を」 エジプト大統領と会談」
の見出しで伝えた。
「安倍晋三首相は23日午後(日本時間24日朝)、エジプトのシシ大統領と会談し、米軍による過激派「イスラム国」掃討を目的としたシリア領内での空爆について「国際秩序全体の脅威であるイスラム国が弱体化し、壊滅につながることを期待する」と述べた。」
安倍首相は邦人がイスラム国に拘束されているなかで、イスラム国が空爆によってせん滅されることを期待することを表明したのである。
自分の娘が暴力団に誘拐されて身代金を要求されているときに、暴力団の拠点に爆弾を落として暴力団をせん滅することを希望すると公言したようなものである。
後藤健二さんがイスラム国に拘束されたのは10月25日のことである。
NHKや日本政府が後藤さんのイスラム国入りに関与しているのではないかとの推測もある。
そして、イスラム国は後藤さんの妻を通じて、10億円、ないし20億円の身代金要求を日本政府に突き付けた。
日本政府は水面下で邦人救出に向けて交渉を実行したと考えられる。
この段階で、ある程度低い身代金で二人の邦人の生命を救出することは十分に可能であったと思われる。
現に、フランスやドイツはイスラム国を交渉して、身代金と交換に人質を救出することに成功してきたと伝えられている。
ところが、安倍政権は邦人の救出を実現できなかった。
その後に、12月総選挙が実施されたが、安倍首相は人質問題が外部に漏れることを防ぐことに力を注ぎ、邦人救出を優先しなかったのではないかと推察される。
選挙が終わっても安倍首相の行動には緊迫感が見られなかった。
邦人が生命の危険に晒されているなかで、安倍首相は年末年始の休暇を、高級ホテルでの会食、コンサート鑑賞、ゴルフ三昧で過ごしたのである。
邦人を何が何でも救出するとの姿勢は、かけらにも表出されなかった。
そして、1月にフランスでテロが発生し、安倍首相の中東訪問に対する反対意見も表出したと見られるが、安倍首相は予定通りに中東を訪問して、1月17日、エジプトでの「日エジプト経済合同委員会」で次のように述べた。
「地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します。」
これは外務省のサイトに掲載されている文言であり、公式のものである。
ポイントは、
「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」
である。
そして、この直後、イスラム国がyoutube映像を用いて、日本政府に2億ドルの身代金要求を提示した。
安倍首相はイスラエルで会見を行い、ヨルダン国に現地対策本部を設置して対応したが、今回の事態を招いた。
邦人殺害と伝えられているが、事実の厳密な確認はまだなされていない。
殺害事実が本当に存在したのかどうかについての厳密な確認がまずは急務である。
(以下は有料ブログのため非公開)