2015年2月10日火曜日

「鉱毒悲歌」(足尾鉱毒事件) 28日から上映

 足尾鉱毒事件で廃村に追い込まれた谷中村を舞台にした映画「鉱毒悲歌」が28日から、宇都宮市で上映されます
 映画は、宇都宮市職員だった立松和平さんや、宇都宮大生らが40年近く前に撮影したものを編集して昨年6月に完成させたものです(上映時間1時間43)。これまで宇都宮市や佐野市で上映されましたが、ロードショーは今回が初めてです
 
 明治期東アジア一の産出量を誇った足尾銅山は日本の公害の原点でした。
 銅の精錬過程で出される煙害で足尾町周辺の村はいくつも廃村になりました。また鉱毒を含む排水渡良瀬川に流され、その河川水を農業用水として使った流域を始め、広い範囲に立ち枯れ病などの稲作被害が発生させました
 しかし主要な輸出品であったために国策でその増産が進められました。
 
 渡良瀬川流域の栃木県谷中村は、稲作被害に苦しめられた挙句に明治39年に洪水防止用の遊水地にするために、強制的に廃村にさせられ住民は退去させられました。
 衆議院議員の田中正造は11年の議員生活の大半を足尾鉱毒問題に費やし、遊水地問題が浮上すると谷中村に住んで、農民の反対運動の先頭に立ちその地で無一文の状態で生涯を終えました。
 
 足尾鉱毒事件も、さらに多数の被害者を生み出した水俣病事件も、国策の生産活動に由来した大公害でした。福島原発の大惨事本質において共通しています。
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よみがえる足尾の叫び 「鉱毒悲歌」28日から上映
東京新聞 2015年2月8日
 足尾鉱毒事件で廃村に追い込まれた谷中村(現栃木市)を舞台にした映画「鉱毒悲歌(こうどくひか)」が28日から、宇都宮市江野町の「宇都宮ヒカリ座」で上映される。初日には、映画の製作委員会委員長の谷博之・元参院議員の司会で「田中正造大学」の坂原辰男事務局長と出演している作家の故立松和平さんの長男・横松心平さんのトークショーを開催。東京電力福島第一原発事故を例に、市民が犠牲になる公害との共通性などを語る。 (後藤慎一)
 
 昨年六月に完成した映画は、宇都宮市職員だった立松さんや、宇都宮大生らが四十年近く前に撮影。長く「お蔵入り」になっていたフィルムを編集して一時間四十三分にまとめ、宇都宮市や佐野市で上映された。一定期間のロードショーは今回が初めて。
 
 モノクロの映像は、人の背丈以上もあるヨシ原をかき分け、谷中村があった墓地にたどり着く場面から始まり、足尾銅山の煙害で壊滅した地域の姿などを細かく記録。足尾鉱毒事件と深く関わった田中正造を知る男性や、谷中村から北海道佐呂間(さろま)町に移り住んだ元村民らの貴重な証言が残されている。
 
 坂原さんは「映画の製作背景や、出演者の解説をしたい。原発事故では、住民が(地域から)追い出されるという、谷中村と同じことが起きている。足尾鉱毒事件も終わっていない」などと指摘。横松さんも「父が作品を書くずっと前から足尾の活動に取り組んでいたんだなあ、としみじみ感じる」と話しており、同じ作家として仕事の軌跡を振り返る。
 
 トークショーは二十八日午後二時五十分から。映画の上映期間は三月十三日までの予定。料金は大人千円、高校生以下八百円。
 
写真
  映画の「鉱毒悲歌」の冒頭シーンに出てくる谷中村の墓地