2015年2月26日木曜日

70年談話 首相認識に与野党から牽制

 主要なメンバーは安倍首相と歴史認識などの価値観が一致しているといわれる“戦後70年談話に関する有識者会議”が、25日、初会合を行いました。
 
 戦後50年に当たって出された村山談話と、戦後60年に当たって出された小泉談話を比べると、「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことに痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明する」の下線部分は両者で一字一句も違っていません
※ 2015年1月20日 「戦後70年談話」の最大の障害は (五十嵐 仁氏) 
 
 それに対して安倍首相は、村山談話と小泉談話など歴代内閣の立場を「全体として引き継ぐ」と表明していますが、「植民地支配と侵略」「痛切な反省と心からのおわび」といった文言を用いることには否定的です。
 
 それに対して与野党から、首相の歴史認識を疑問視し、国の内外に不必要な反響を引き起こすとして、「明解に継承すべきだ」と牽制する声が上がっています。
 
 時事通信の記事を紹介します。
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「歴史修正」内外から疑念=安倍首相認識にけん制相次ぐ
時事通信 2015年2月25日
 安倍晋三首相は25日、今夏に発表する戦後70年談話に関する有識者会議を始動させ、検討作業に本格着手した。首相は「未来志向」を前面に出す構えだが、首相の一連の言動から、戦後50年の村山談話などが明示した植民地支配や侵略へのおわびの意思を希薄にしようとしているのではないかとの疑念が国内外で高まりつつある。与野党からは、首相の歴史認識をけん制する声が相次いだ。
 「わが国は積極的平和主義の下、より大きな役割を果たしていく」。首相は官邸で開いた有識者会議初会合の席上、今後の国際貢献への姿勢を強調することにこだわりを見せた。談話の柱の一つに「大戦の反省」も据えたものの、踏み込んだ発言はしなかった。
 首相は、村山談話と、その内容をほぼ踏襲した戦後60年の小泉談話など歴代内閣の立場を「全体として引き継ぐ」と表明している。だが、「植民地支配と侵略」「痛切な反省と心からのおわび」といった文言を用いることには否定的だ。第2次政権発足後の2度の戦没者追悼式典ではアジア諸国への加害責任に言及せず、2013年末の靖国神社参拝の正当性を主張し続けていることから、新たな談話が「歴史修正主義」的な色彩を帯びかねないとの警戒感は与野党を問わず根強い。
 
◇与野党幹部「明快に継承を」
 自民党の高村正彦副総裁は25日、記者団に「50年談話、60年談話を継承することが明快であればあるほど、これからどういう国になるのかにスポットライトが当たる」と指摘。公明党の石井啓一政調会長も会見で「多くの国民が納得し、海外からも評価が得られる談話を期待している。政府・与党のコンセンサスが必要だ」と述べ、与党との事前協議を重ねて求めた。
 民主党の岡田克也代表は記者会見で「国会で何度聞いても首相は『侵略』や『植民地支配』を引き継ぐと言わず、懸念はある」と不満を表明。維新の党の江田憲司代表は講演で「深い反省のキーワードを外すと不必要な反響を生む」と語り、共産党の穀田恵二国対委員長も会見で「村山談話の核心部分を否定する談話は必要ない」と発言、それぞれ首相をけん制した。
 中韓両国も「侵略の罪を歪曲(わいきょく)しようとする者がいる」(王毅中国外相)、「歴史認識が後退してはならない」(韓国外務省報道官)などと警戒感を持って見守っている。同盟国の米国も首相の歴史観には敏感で、首相の靖国参拝の際には直ちに「失望」を表明した。
 ただ、こうした声は首相にとってはあくまで「外野」。首相が信頼を置く自民党の谷垣禎一幹事長は記者団に「戦前のことばかり言うのは間違いではないか」と、未来志向に重きを置くことに理解を示した。有識者会議の座長代理に就いた北岡伸一国際大学長も会合後、記者団から「植民地支配と侵略」などの文言を継承するか問われ、「世界と日本、歴史の流れを全体的に捉えるべきだ」と否定的な見解をにじませた。