しんぶん赤旗日曜版1月12日号が、5日号に引き続いて高市議員の政治報告書問題・連続追及第5弾を出しました。
これは政治資金規正法によれば1回のパーティで20万円超のパーティー券収入を得た場合には、その団体名等を報告書に記載しなければならないのですが、21年度、19年度共に高木議員の政治資金報告書には「自民党山添村支部」が22万円のパーティー券を購入していたにもかかわらず、団体名などが記載されていなかったというものです。
その指摘に対して、高市氏が代表の「自民党奈良県第2選挙区支部」は、パーティー券の購入は6名分の12万円が正しく、残りの10万円は別の用途であったとして、それに対応させて「自民党山添村支部」からの「訂正後の領収証」に差し替えられ、そのための「訂正願」が添付されました。
ところが日曜版編集部が確認したところ、相手方の山添村支部の関係者は全く「訂正願」の発行には関与せずに。そうした書類が発行されていることも知らず、すべては「自民党奈良県第2選挙区支部」の会計責任者の木下(高木議員)秘書が作成していたことがプロの筆跡鑑定士によって判明しました。
政治資金規正法に合致するように実態とは違うことを、後付けで領収書などを作り直してよいのであれば規正法の意味はありません。
編集部の問い合わせ(取材)に高市事務所からは今回も期限までに回答がなかったということです。
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高市大臣秘書が〝証拠隠滅″ 規正法違反逃れるため
領収書と訂正願 別団体のはずが同じ筆跡
現職閣僚の公設秘書が〝証拠隠滅″-。政治資金規正法違反の疑いで刑事告発されている高市早苗経済安全保障担当相をめぐる重大疑惑が浮上しました。高市氏とともに告発された同氏の公設第1秘書が、〝違法の証拠″である別団体の政治資金収支報告書の〝訂正″や、領収書の差し替えをおこなっていた疑いが編集部の取材で判明しました。連続追及第5弾です。
取材班
筆跡鑑定で判明
高市氏が代表の「自民党奈良県第2選挙区支部」は2021年7月開催の政治資金パーティーで、奈良県の「自民党山添村支部」から22万円の収入を得ながら、収支報告書の購入者欄に記載していませんでした。
規正法は、1回のパーティーで20万円超のパーティー券を購入した団体名などを収支報告書に記載するよう義務づけています。
上脇博之・神戸学院大学教授は昨年12月5日付で、第2選挙区支部代表の高市氏と、同支部の会計責任者で高市氏の公設第1秘書の木下剛志氏を規正法違反(不記載)の疑いで奈良地検に刑事告発しました。
告発後の昨年12月19日、山添村支部は収支報告書(21年分)のパーティー券購入費を22万円から12万円に訂正。差額の10万円は「その他の支出」に計上しました。提出済みの22万円の領収書を削除し、高市氏側が再発行した12万円の領収書に差し替えました。告発で〝違法の証拠″とされた収支報告書や領収書は、〝合法″なものに変えられました。
今年1月13日の記者会見で高市氏は「廃棄してくれと言った22万円の領収書を使って向こう(山添村支部)は報告をつくってしまった。すでに(山添村支部の収支報告書は)修正されている」と弁明しました。
知らぬ間に訂正
しかし編集部の取材に山原村支部の現代表者の福井新成・元山添村議は「訂正のことは全然知らなかった。事前も事後も報告はなかった。会計帳簿を持っている西君に確認してほしい」と回答。会計責任者の西忠護・山添村議は「私は訂正に関与していないので聞かれてもわからない。誰が訂正したかも知らない」と証言しました。
総務省自治行政局政治資金課は「収支報告書の訂正は、当の政治団体において事実にもとづく申し出があった場合に認める」と説明。山添村支部の代表も会計責任者も知らない訂正を誰がしたのか…。
編集部が情報公開請求で入手した高市氏側発行の12万円の領収書。そのクセの強い筆跡が、山添村支部の収支報告書の「訂正願」や、訂正箇所に書かれた文字と酷似していました。
領収書を発行したのは高市氏側。別団体の山添村支部の訂正の筆跡と同じはずがありません。しかもその筆跡は、高市氏の公設第1秘書の木下氏が記載した文字と似ていることがわかりました。
編集部は ①12万円の領収書 ②「訂正願」 ③木下秘書が会計責任者を務める第2選挙区支部の収支報告書に記載された文字-などについて、筆跡鑑定人の吉本邑稀(ゆうき)氏に鑑定を依頼しました。
鑑定の結果、①②③の筆跡はいずれも同一人物のものであることが判明しました。(下記)
「党」や「令」に共通の特徴 筆跡鑑定した吉本氏は、自民党の「党」の字が決め手の一つと指摘。「正しい筆順は、真ん中の縦画が1画目で、次に左、右の面.しかしこの文字は左、真ん中、右の順に書かれ、筆順が違うのが特徴です。真ん中と右の線をつなげるクセもあり、こういづた書き方は珍しい『希少性』(独特のクセや特徴)があり、同ー人物に間違いありまゼん」 万吉本氏は続けます。: 「『党』や『民』は、はね方が大きいという特徴があります。『令』の字は1画目が長く独特。点画を横棒のように書くクセがあり、『主』の字も同様です。文字の線同士が離れる『接画開』(せっかくかい)という共通の特徴もみられます」 |
「木下」のハンコ
第2選挙区支部の収支報告書の文字が書かれた部分には「木下」の印が押されています。同じく木下秘書が会計責任者を務める「高市早苗連合後援会」の収支報告書にも「木下」の印があり、その文字の筆跡とも一致。①②③の文字は木下秘書が書いた疑いが濃厚です。被告発人である木下秘書が法違反を逃れるため、〝違法の証拠″を12万円の〝合法の領収書″に差し替え、別団体の収支報告書を訂正した疑いが出てきました。
事実だとすれば、現職閣僚の公設秘書が、自身と閣僚である高市氏を守るために〝証拠隠滅″をした、という前代未聞の事態になります。
高市氏は1月13日の会見で、12万円の領収書は21年7月当時に切り直したもので、差額の10万円分は個人宛てに領収書を再発行したと主張しました。
この発言や山添村支部の訂正は虚偽だとして、上脇教授は1月16日、規正法違反(虚偽記入)の疑いで高市氏や木下秘書らを再度、告発しました。
その3日後の1月19日、山添村支部は21年分の収支報告書を再び訂正。昨年12月の訂正で「その他の支出」に計上した10万円を削除し「翌年への繰越額」を10万円増額しました。
この訂正について山添村支部の会計責任者の西氏は取材に「(記者からの電話で)初めて知った」と話します。この筆跡も再鑑定で「同一人物のもの」(吉本氏)と判明。高市氏の発言や上脇教授の告発を受け、木下秘書がつじつまを合わせるため山添村支部の収支報告書を再度訂正した疑いが出てきました。
編集部の取材に高市事務所は期限までに回答しませんでした。