2023年2月19日日曜日

トマホーク500発一括購入は百害あって一利なし(日刊ゲンダイ)

 中国の汪文斌副報道局長が14日「日本は客観的かつ公正な立場を維持し、米国の大げさな騒ぎに追随しないでほしい」と述べました。これは「気球問題」に関連したものですが敢えてここに引用したのは、本来であればこうした発言こそ、戦争を放棄した日本が、対立している国(米国・中国など)に対して行うべきものと思ったからです。いまや日本はそうした立場から遥かに逸脱してしまいました。

 岸田政権が発足以後一貫して米国の尻馬に乗って中国を仮想敵国と見做しているのは、浅ましく異常なことです。現在「日中」間には尖閣諸島の領有権問題での対立がありますが、これは田中角栄政権時代に中国の周恩来首相との間で「この問題は棚上げする」ことで合意していたものを、民主党政権時代に日本の巡視船が中国漁船の船長を逮捕したことでパンドラの箱を開けてしまったのでした(巡視船の管轄は国交省で当時の国交相は前原誠司)
 それは兎も角、正体不明の気球が日本の領空を飛んだことはこれまでにもあったのに日本は放置して来ました。それが米国で気球を撃墜する事案が起きると、一転して中国を名指しして大騒ぎを始めたのでした。これでは岸田政権が「米国と一緒に危機を煽るマッチポンプの役割を演じている」と言われても仕方がありません。

 日刊ゲンダイに、「加速する岸田暴政 トマホーク500発一括購入は百害あって一利なし」とする記事が載りました。
 政府は23年度にジェット推進巡航ミサイル・トマホーク(飛行距離1200~2500km約500発を一括で購入する方針を決め、2100億円余の予算を計上しました。これは岸田政権が、「先制攻撃」を前提とする米国の「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)を導入する資格を得るために独断で決めたものです。
 ではトマホークは政府が謳う「抑止力」になっているのでしょうか。
 軍事評論家の前田哲男氏
「仮想敵国の中国や北朝鮮のロケット兵器(音速の5~10倍)は発射後5~6分で日本に到達するのに対して、トマホークはジェット推進で音速以下なので、日本から中国に発射しても到達するまでに1時間はかかる。これでは日本に対する攻撃を思いとどまらせるのは難しい(要旨)」… 要するに抑止力にもならないと述べています。
 正に百害あって一利なしのシロモノということです。
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加速する岸田暴政 トマホーク500発一括購入は百害あって一利なし
                         日刊ゲンダイ 2023/02/16
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
日本は客観的かつ公正な立場を維持し、米国の大げさな騒ぎに追随しないでほしい
 中国外務省の汪文斌副報道局長が14日の記者会見で、日本政府に対して自制を求めた「怪しい気球」をめぐる問題。米国は4日に自国上空を漂う気球を「中国の偵察気球」と断定して撃墜して以降、同じような正体不明の気球を3度にわたって撃墜した。これに対し、最初に撃墜された気球について、「民間の観測用」などと反論していた中国側も「米国の気球が中国領空に不法侵入した」と猛反論。太平洋戦争時に日本軍が飛ばした風船爆弾のごとく、今や気球が米中対立の新たな火ダネになりつつある。
 それにしても、米中といえば、そろって宇宙空間に複数の偵察衛星を飛ばし、互いの軍事基地や政府施設などを常時監視している──というのが世界の常識だ。それなのに今さら、「おまえ、偵察気球を飛ばしただろ」「いや、おまえだ」などと罵りあっている姿は滑稽と言うよりほかない。
 15日付の東京新聞1面で、漫画家の佐藤正明氏が「気球存亡合戦」と題し、軍服姿で大砲を構えたバイデン大統領と習近平国家主席が互いに「白い気球」を打ち上げる様子をシニカルに描いていたのも理解できるだろう。

 過去を振り返れば、戦争はささいなきっかけから始まるケースが少なくない。偶発的な衝突を避けるためにも日本が米中両国に対して冷静さを求める橋渡し役になってもいいはずだが、暴走しているのが岸田政権。「奇貨居くべし」と、米国と一緒に中国に対して拳を振り上げているのだからクラクラしてしまう。

岸田は米国と一緒に危機を煽るマッチポンプ
「外国の無人偵察用気球の領空侵犯は断じて受け入れられない」
 防衛省は14日、2019年11月の鹿児島県、20年6月の仙台市、21年9月の青森県にそれぞれ飛来した物体を含む、過去に日本領空内で確認された気球型の飛行物体について、中国の無人偵察用気球と「強く推定される」と発表。外交ルートを通じて中国に事実確認を申し入れたという。
 松野官房長官も15日の会見で、「同盟国、同志国と緊密に連携しつつ、これまで以上に情報収集、警戒監視に努めていく」と説明していたのだが、いやいやちょっと待て。ならば、鹿児島や仙台市などで気球が確認された時になぜ、情報収集や必要な対応を取らなかったのか。20年6月の仙台市上空で正体不明の気球が確認された際には、当時、防衛相だった河野デジタル相が会見で、面倒くさそうに「気球に聞いてください」などと言い放っていたではないか。
 それなのに米国が撃墜したと報じられた途端、中国を名指しで批判して大騒ぎしているのだから何をかいわんや。15日の自民党国防部会などの合同会議では早速、日本領空で確認された飛行物体を撃墜する場合の武器使用基準を見直す考えも防衛省側から示されていたが、米国の姿勢を見た日本政府が、足並みをそろえようと慌てふためいているとしか見えないだろう。
 沖縄国際大大学院の前泊博盛教授(安全保障論)がこう言う。
「なぜ今、急に大騒ぎしているのか。何か軍拡化するため、43兆円もの予算を配分するための条件を整えているかのようです。岸田政権は米国と一緒に危機を煽るマッチポンプのような役割をしているのではないかと疑いたくなります。『同盟国、同志国と緊密に連携』『包囲網』などとも言っているが、これは外交ではありません。軍事(協力)です。これでは中国が警戒するのも当たり前。岸田政権は盛んに台湾有事を訴えていますが、有事を起こそうとしているのは日本ではないのかとさえ思ってしまいます」

抑止力どころか日本が攻撃されるリスクが高まるだけ
 そもそも防衛省はこれまで、気球などは安全保障上の脅威には当たらないと判断していたはず。浜田防衛相は領空侵犯した気球の撃墜は自衛隊法84条で可能としているが、同法の規定では、外国の航空機が領空侵犯した場合、自衛隊が必要な措置を講じることができる、とあるだけ。どのような気球やドローンであれば撃墜対象となるのか、条件も基準も曖昧だ。
 例によって法律解釈を勝手にすっ飛ばし、閣議決定で気球撃墜も可能──とするハラなのかもしれない。自民党政権に飼いならされた大メディアが、こうした独善的な手法に対して何ら批判の声を上げないから、岸田政権はやりたい放題。一事が万事この調子で、何でも米国に右へ倣え。気球騒ぎと同様、それが如実に表れているのが、憲法破壊とも言うべき、敵のミサイル基地などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)で使用を想定する米国製巡航ミサイル「トマホーク」(射程約1600キロ)の購入だろう。
 政府は2023年度に約500発を一括で購入する契約を米国と結ぶ方針を決定。同年度予算案では2113億円が計上され、米軍の装備品を調達する有償軍事援助(FMS)で調達する予定だ。米軍と同じ最新型といい、26年度から海上自衛隊のイージス艦への配備を開始。27年度の配備完了を目指すというのだが、ハッキリ言って中国を刺激し、米国を喜ばせるための買い物だ。

米国は日本をフル活用して中国を牽制したい
 軍事評論家の前田哲男氏がこう言う。
「政府は抑止力のためにトマホークを購入──と説明していますが、抑止力の効果は低いでしょう。なぜなら、(仮想敵国の)中国や北朝鮮のロケット兵器は発射後5~6分で日本に到達します。しかも、これらを数百発単位で保有している。これに対し、トマホークはジェット推進です。つまり、マッハ1以下の旅客機と同じですから、仮に日本から中国に発射しても1時間はかかる。これでは日本に対する攻撃を思いとどまらせるのは難しいと言わざるを得ません。米国は日本をフル活用し、中国を牽制したい。岸田政権はその米国側の意向に沿ってトマホークを購入したのでしょう。喜んでいるのは米軍事産業だけです」
 元陸自レンジャー隊員の井筒高雄氏も「そもそもトマホークは米国主導下でしか使えません。日本の自衛隊が単独では使えないミサイルなのです。そんなミサイルが何発あっても抑止力にはならないでしょう。まあ、ないよりもマシぐらいのレベルです」と言い、こう続ける。
米国は対中国を意識し、日本に軍事的な負担をさせるために日本にトマホーク購入を持ち掛けたのではないでしょうか。おそらく沖縄を中心として配備を検討しているのでしょうが、中国や北朝鮮が保有するミサイルの性能の方がトマホークよりも格段に上。つまり、抑止力にならないばかりか、かえって日本の(標的になる)リスクが高まるだけだと思います」
 いやはや、専門家から見れば、トマホークは抑止力どころかリスクが高まるというのだから、まさに百害あって一利なし。しかも、それを1000億円単位で購入というのだから狂っている。「聞く耳」が自慢だった岸田首相だが、どうやら米国の意見しか耳に届かないらしい。一刻も早く総理大臣の椅子から引きずり降ろさないと、この国は戦争に巻き込まれる危険が近づくばかりだ。