2023年2月5日日曜日

いまはもう「戦時体制」 反戦・戦争回避の行動を早く(前法大総長 田中優子氏)

 しんぶん赤旗日曜版2月5日号に、前法政大学総長の田中子氏の「いまはもう『戦時体制』 反戦。戦争回避の行動を早く 黙らされず『戦争は嫌』声あげよう」という寄稿文が載りました。
 岸田政権は、国会審議もないまま戦後の安全保障原則の大転換をすすめています。日本のインフレ率は既に4%に達し、この先国民の生活や日本の経済がどうなるかの見通しが立たない中でも、5年間に43兆円を投じて大軍拡(=大増税)を行おうとしています。
 ウクライナで米国が参戦しないのは台湾有事に備えてのことと言われるなか、櫻井ジャーナルは5日「米軍のアフガンからの撤退はウクライナでの戦争準備のためだった可能性」という記事を出しました。
 そうであれば、アフガン⇒ウクライナ⇒台湾 とつながる米国の世界戦略の下での「台湾有事」は、高い確度で起きることになります。
 田中氏は、「戦争になれば、~ 多数の死者が生まれれば、徴兵、学徒出陣などの戦前の記憶は、昔話でなくなります」、「今、早く反戦、戦争回避の行動をしていかないと間に合わない。戦争を回避すること、外交で戦争を起こさない努力をすること、いろんな努力が必要です。多くの人が言い続けなければ、政府はその努力をしません」と述べています
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いまはもう「戦時体制」 反戦・戦争回避の行動を早く
黙らされず「戦争は嫌声あげよう
          法政大学名誉教授・前総長 田中優子さん
                     しんぶん赤旗日曜版 2023年2月5日
 岸田政権は5年で43兆円、GDP(国内総生産)比2の[防衛費」を打ち出しました。国会審議も総選挙もなく、戦後の安全保障原則の大転換をすすめています。
 軍拡・大増税の道は、労働者の賃上げ、ひとり親家庭、非正規労働者、性的マイノリティーなど公的支援の政策を棚上げすることになります。
 戦争になれば、経済はさらに悪化します。多数の死者が生まれれば、徴兵、学徒出陣などの戦前の記憶は、昔話でなくなります。
 女性は戦前、大日本婦人会など、銃後を守る存在として我慢を強いられ、「国を守るため」と組織化されていきました。 私たちは十分に警戒する必要があります。黙らされることなく、「戦争は嫌だ」と声を上げる必要があります。

「女たちの会」署名広げて
 私を含め13人の女性が「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」を立ち上げ、1月14日からネット署名を呼びかけています。6万2千人以上が賛同しています。2月8日には署名提出の記者会見を行います。
 求めているのは、①軍事費GDP比2を撤回すること ②歯止めなき軍拡を押し進めることをやめ、女性や子ども、若者や社会的弱者の目線に立った政策をすすめること-です。

米国がまた戦争を起こす
 私は、「反戦の準備をしよう」と、「東京新聞」のコラム(1月15目付)で書きました。文中引用したジョン・レノンの「平和を我等に」はベトナム戦争の反戦歌です。
 私の若いころはベトナム反戦運動が広がったときでした。アメリカは勝つと思ってベトナムに侵略したものの泥沼化しました。米兵が沖縄からベトナムに飛び立ち、また戻ってくる。私は横浜に住んでいました。厚木の米軍基地が近く、電車に乗ると米兵が電車に乗っている。生々しいことが目の前の出来事としてありました。
 そして、アメリカがアジアでまた戦争を起こす気がしています
 今はもう「戦時体制」だと私は思っています。日本は2015年の安保法制の成立によって集団的自衛権の行使を認めました。度は「敵基地攻撃能力」保有のもとで、日本が攻撃を受けなくてもアメリカの艦船などが攻撃されれば、日本が相手国を攻撃することが現実のものとなります。
 報復されれば、真っ先に沖縄が犠牲になります。全国展開している自衛隊の基地、米軍基地も全部使うというのですから、日本列島全体が攻撃対象になります。
 「戦時体制」だと思う一つには、菅政権から始まった学術会議への介入の問題もあります。
 今、1930年代ととてもよく似ていると感じています。31年に満州事変がおこり軍備拡張が進むなかで、京都大学の滝川事件(33年)、美濃部達吉の天皇機関説事件(35年)が立て続けにこりました。学問や思想・言論への統制が強化されました
 軍事的な拡大だけでなく、研究などの日常にも戦争は入り込んできます。

 こうしたことも、黙っていれば始まると思います。
 「ここから戦争」という区切りはありません。ウクライナ侵略をしたロシアも宣戦布告をしませんでした。かつて日本も、満州事変にしろ、真珠湾攻撃にしろ、宣戦布告などしませんでした。何かの事件を□実に、徐々に戦争は始まります。始まれぱ泥沼化します。
 私たちには歴史的な経験があります。
 今、早く反戦、戦争回避の行動をしていかないと間に合わない。

 戦争を回避すること、外交で戦争を起こさない努力をすること、いろんな努力が必要です。多くの人が言い続けなければ、政府はその努力をしません。