2023年2月23日木曜日

日本の兵器が命奪う 武器供与 JVCが危険性訴え

 政府・自民党内ではウクライナ支援や友好国との関係強化を旗印に、殺傷能力のある武器の輸出解禁を目指す声が高まっているということです
 安倍政権「武器輸出三原則」「防衛装備移転三原則」と言い換えて、制約は設けたものの事実上武器輸出の解禁に踏み切りました。それをいままた運用指針緩和して、殺傷能力を持つ武器輸出を認めれば、敵基地攻撃能力の保有に続く安保関連政策の大転換となります。
 日本国際ボランティアセンター(JVC)は21日、国会内で集会を開き、政府が昨年末に閣議決定した安保関連3文書にもとづいて、外務省が政府開発援助(ODA)とは別に他国の軍に対して武器や軍事インフラの供与を進めようとしていることについて、問題点や危険性を訴えました。
 しんぶん赤旗と東京新聞の記事を紹介します。
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日本の兵器が命奪う 武器供与 JVCが危険性訴え
                       しんぶん赤旗 2023年2月22日


問題提起する今井高樹日本国際ボランティアセンター(JVC)代表理事(右)と(左へ)発言者の畠山、望月の各氏=21日、参院議員会館



 日本国際ボランティアセンター(JVC)は21日、国会内で集会を開き、政府が昨年末に閣議決定した安保関連3文書にもとづいて、外務省が政府開発援助(ODA)とは別に他国の軍に対して武器や軍事インフラの供与を進めようとしていることについて、問題点や危険性を訴えました
 JVCの今井高樹代表理事は「事実上、ODAで堅持してきた『非軍事原則』の破棄だ」と指摘。「これまで軍事支援をしてこなかったことが、国際協力の現場での安全につながっていた」と語りました。

 ピースボートの畠山澄子共同代表は「日本製の武器がどこかで人の命を奪うことにつながりかねない」と危機感を表明。日本が堅持してきた平和主義と全く性質の異なるものだとして「私たち市民が声を上げなければならない」と述べました。

 集会では、東京新聞の望月衣塑子記者が「非ODAの他国軍支援について」と題して報告しました。安保3文書と連動して非ODAの他国軍支援が新設された経緯などを説明。政府・自民党関係者が「悲願成就」「今後どんどん拡大する」と語ったことなどを告発しました。
 集会には日本共産党から井上哲士、紙智子、山添拓の各参院議員が出席しました。


「殺傷能力ある武器輸出を」政府・自民に高まる解禁論 ゆらぐ禁輸三原則 識者「平和国家像の支え失う」
                         東京新聞 2023年2月23日
 ロシアによるウクライナ侵攻から1年を迎え、政府・自民党内ではウクライナ支援や友好国との関係強化を旗印に、殺傷能力のある武器の輸出解禁を目指す声が高まっている。安倍政権が「武器輸出三原則」の禁輸政策を転換し、輸出を認めた「防衛装備移転三原則」の運用指針の規制緩和を検討する。殺傷能力を持つ武器輸出を認めれば、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に続く安保関連政策の大転換となり、識者は「平和国家像の支えを失い、東アジアの軍拡につながる」と危ぶむ。(川田篤志)

◆不満を漏らす自民党議員
 「不法な侵略を受けるウクライナの防衛目的でも、現行では殺傷力のある装備品を移転(輸出)できない。殺傷性ではなく、安保上、日本と関係を深めていく国かで考えては」。自民党の熊田裕通氏は今月の衆院予算委員会で、欧米が戦車や弾薬を供与する中、日本は防弾チョッキや民生車両などの支援にとどまる現状に不満を漏らした。
 浜田靖一防衛相は「装備移転は日本にとって望ましい安保環境の創出や、国際法違反の侵略などを受けている国への支援のため重要な政策手段だ」と答弁。原則として殺傷能力のある武器輸出を認めていない運用指針の変更に前向きな姿勢を示した。
 岸田政権は昨年12月に閣議決定した国家安全保障戦略で、装備品輸出は防衛協力の「重要な手段」と位置付けた。殺傷能力のある武器の輸出解禁の圧力は「ウクライナ支援」を名目に自民党内で強まっており、有志議員は21日、国内の防衛産業強化や防衛装備品の輸出拡大を目指す議員連盟を設立し、国会内で初の総会を開いた。

◆国内防衛産業の収益強化ねらう
 政府・自民党にはウクライナへの軍事支援で欧米各国と足並みをそろえたい思惑がある。対中国を念頭に東南アジアへ武器輸出して安保協力を強化し、国内防衛産業の収益強化につなげる狙いもある。
 一方、「平和の党」を掲げる公明党は、統一地方選挙への影響を懸念し、大幅な規制緩和に慎重姿勢を示す。政府・与党は4月以降に運用指針の見直しの議論を本格化させる構えだ。
 武器輸出を巡っては、政府は1960〜70年代以降、憲法9条の平和主義に基づき、国際紛争を助長しないとの理念のもと、武器輸出三原則で事実上の禁輸政策を続けてきた。
 安倍政権では2014年、全面禁輸を見直して「防衛装備移転三原則」として国際平和への貢献や日本の安全保障に資する場合、紛争当事国などを除き輸出を解禁。ただ、運用指針で、共同開発国を除き、戦車や戦闘機などの武器の輸出は認めてこなかった。

 学習院大の青井未帆教授(憲法学)は、殺傷力のある武器の輸出を解禁すれば「紛争を助長せず、武器で利益を得る国ではないことで保っていた平和国家像が崩れてしまう」と指摘。「武器を送ることだけがウクライナ支援ではない。国家像を180度転換し、軍事力を背景に外交をする国になるのか、国会も含め国民的議論が必要だ」と語る。