2023年2月10日金曜日

LGBT差別と自民統一協会/差別主義者守るため差別禁止反対(植草一秀氏)

 岸田首相は1日の国会答弁で、「同性婚を法制化すると家族観や価値観、社会が変わってしまう」からと反対する姿勢を示しました。岸田氏が何かにつけて基準にしたがるG7(主要7か国)では、日本以外は選択的夫婦別姓制度やLGBT法を成立させています。

 これではG7の議長国として示しがつかないからと、自公は急遽「LGBT理解増進法案」を提出するようですが、お茶を濁す対応でしかありません。この法案は21年にも提出されようとしたのですが、自民党の一部から法案中の「差別は許されない」の文言が許容できないという声が上がり、提出に至りませんでした。今回も自民党の高市早苗氏が「文言を調整する必要がある」と主張しています。
 自民党の極右メンバーがLGBT関係の法案に頑なに反対しているのは要するに「家父長制」に反するからで、憲法違反の「家父長制」を口に出来ないから「社会の秩序を乱す」などというG7には通用しない大げさな物言いになっている訳です。
 それを最も強く主張しているのが統一協会であり、自民党の極右メンバーと一致している考え方です。なぜそんなにしてまで封建時代の遺物に拘ろうとするのでしょうか。
 植草一秀氏が7日に「LGBT差別と自民統一協会」、8日に「差別主義者守るため差別禁止反対」とする記事を出しました。
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LGBT差別と自民統一協会
               植草一秀の「知られざる真実」 2023年2月 7日
自民党と統一協会(現・世界平和統一家庭連合)の関係は根深い。
岸田首相は関係を遮断するというが関係遮断は徹底されていない。
統一地方選に向けて自民党候補者の統一協会との関係性調査は十分でない。
関係を断ち切らないことを示唆する候補者も多数存在する。
関係を遮断するにはこれまでの事実を精査する必要がある。
しかし、これまでの事実調査すらしない。
自民党内でもっとも深い関係を有してきたと見られるのが安倍晋三元首相。
岸田首相は安倍氏が死去されたいま、調査には限界があると述べてきた。
限界はあるだろう。そうであるなら、限界まで調査するべきだ。限界があるから調査しないは通用しない。

岸田首相の姿勢は統一地方選まで一定のポーズを示して乗り切ろうというものに見える。
統一協会に対する解散命令請求も行う方針が示唆されているものの確定していない。
これも統一地方選までポーズを示して乗り切ろうというものかも知れない。
このなかで飛び出した首相秘書官によるLGBTなど性的少数者や同性婚に関する差別発言。
経済産業省出身の荒井勝喜首相秘書官は2月3日夜、総理官邸で記者団のオフレコの取材に対し、LGBTや同性婚に関し「見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ」などと発言した。
岸田首相は直ちに荒井秘書官の更迭に踏み切った。しかし、発言は荒井氏による単独発言でない。衆院予算委員会における岸田首相答弁に関して提示された質問への回答として示されたもの。

2月1日の衆院予算委員会で立憲民主党の西村智奈美議員が同性婚の法制化を求めた。
これに対し岸田首相は「極めて慎重に検討すべき課題」とした上で、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だからこそ、社会全体の雰囲気、全体のありようにしっかり思いを巡らせた上で判断することが大事だ」と答弁した。
岸田氏は同性婚を法制化すると「家族観や価値観、社会が変わってしまう」として法制化に反対する姿勢を示した。
この答弁に関して荒井秘書官が質問を受け、上記の発言を示した。
首相答弁の原稿を書いたのが荒井氏であったとも考えられるが、荒井氏の差別発言と共に問われる必要があるのは岸田首相の姿勢である。
荒井氏は荒井氏の感想が秘書官全体で共有するものとの主旨の発言も示した。

G7でLGBT法制を整備していないのは日本だけ。
5月広島サミットに向けて日本の前時代性が論議の的になる。
自民党の前時代性と深く関わる問題が統一協会の影響だ。
2012年4月に自民党は憲法改定案を公表した。この憲法改定案が統一協会の影響を強く受けたものであると指摘されている

に次の条文が書き加えられた。
家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。」
2006年に安倍内閣が改定した教育基本法には次の条文が挿入された。
(家庭教育)
 2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

統一協会は全国各地で家庭教育支援条例の制定を働きかけ、国において家庭教育支援法の制定を求めてきた自民党政治に統一協会が大きな影響力を与えてきたことが分かる。
統一協会創設者の文鮮明氏発言録に次のものがある。
「アメリカでレズビアンやホモセクシャルやゲイのようなものが起きています。それは罪です。罰を受けなければなりません。これは自分勝手な愛です。すればするほど破壊されていくのです。(中略)人間がそうなる時はこの人類が滅亡するのです」
岸田内閣のLGBT差別体質の裏側に統一協会の影響がある。
岸田首相に統一協会との関係を遮断する意思が本当にあるのか疑わしい。

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差別主義者守るため差別禁止反対
                植草一秀の「知られざる真実」 2023年2月 8日
岸田首相秘書官の荒井勝喜氏が2月3日夜の記者団による取材でLGBTや同性婚に関し、
「見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ」
などと発言した問題は岸田内閣の差別体質を表すもの。
2月1日の衆院予算委員会で立憲民主党の西村智奈美議員が同性婚の法制化を求めたのに対し、岸田首相は次のように答弁した。
同課題を「極めて慎重に検討すべき課題」とした上で、
「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だからこそ、社会全体の雰囲気、全体のありようにしっかり思いを巡らせた上で判断することが大事だ」
「家族観や価値観、社会が変わってしまう」から同性婚を認める法制、LGBT法制について「極めて慎重に検討するべき」との見解を示した。つまり、NOの意思表示である。
同性婚を合法化する、LGBT法制を整備することが「家族観や価値観、社会をかえてしまう」から反対であるとの意思を表明したものに他ならない。

荒井秘書官は同氏の感想が秘書官全体で共有するものだとの主旨の発言も示した。
岸田首相の国会答弁は荒井氏の発言と軌を一にするもの。
G7でLGBTQ法制を整備していないのは日本だけ。
本年5月に広島サミットが開催される。
岸田首相はサミットでマスクを強要することが世界の嘲笑の的になることを認知して慌ててマスク解除の方針を示した。
2類から5類への指定変更は遅きに失した失態である。

これと並行して浮上したのがLGBTQ権利保障への後ろ向き対応。
LGBTQ法制に強く反対しているのが統一協会(現・世界平和統一家庭連合)。ジェンダーという用語の使用にさえ敵意を示してきた。
同時にLGBTそのものを否定し、同性婚を容認しない姿勢を示し、これを自民党に強く働きかけてきた。
荒井秘書官発言により岸田内閣の差別体質が鮮明になり、岸田首相は対応を迫られることになった。
このなかで自公両党から今次通常国会での法整備についての提案が示されている。
急転直下、LGBTQに関する法整備の必要性が唱えられ始めた。

しかし、統一協会問題で浮上した被害者救済法制と同様に「似て非なるもの」に注意が必要だ。被害者救済法制では実効性のない法制が整備された。
立憲民主党は法律を実効性のあるものにする必要があると訴えたが、維新が自公案容認に傾くと手のひらを返して維新にすり寄った。結果として実効性のない法制が整備された経緯がある
自公が提示しているのは「理解増進法」であって「差別禁止法」ではない。
また、同性婚を認める法制でもない。

「差別禁止」阻止の先頭に立つのは西田昌司参院議員。
西田氏は「差別が禁止されると社会に分断が生まれる」と主張する。
この主張は、「差別を禁止すると差別をする人が社会から分断されるから反対だ」
の意味に受け取れる。
つまり、「差別をする人々」を社会から分断させないように、「差別禁止に反対する」と主張しているように受け止められる。

日本国憲法は
第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
と定めている。
LGBTQ差別は憲法第14条が禁止しているものであり、LGBTQ法制に「差別してはならない」を明記することは当然のこと。
「差別禁止に反対」して「理解増進に賛成」というのは、LGBTQ差別を容認した上で、差別する人々の理解を増進させることを目指すものと受け止められる。
岸田内閣は差別禁止を盛り込んだLGBTQ法制を迅速に整備するべきだ。
これに後ろ向きの対応を示すなら、統一協会との関係遮断という「公約」も信用できないことになる。
                 (後 略)