2月17日に打上を予定していた「H3ロケット」はトラブルが生じて延期になりました。
そのひと月前に米国の宇宙領域認識のための観測機器が横田基地に到着しました。その運用は米国国防省が行うのですが、宇宙への打ち上げは日本が行うという役割分担で、今年中に打ち上げることになっています。
防衛省は20年に「宇宙空間は国境の概念がなく、人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域の情報収集や通信、測位などが可能となるため、安全保障の基盤として死活的に重要な役割を果たしており、各国は宇宙空間を軍事作戦の基盤として利用」しているという文書を発表し、米国に追随して宇宙軍拡にも乗り出すことを決めていました。
しんぶん赤旗が「加速する 宇宙軍拡」の (上)・ (下) 2編を報じました。
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加速する 宇宙軍拡 (上) 日米連携・協力のなか
しんぶん赤旗 2023年2月22日
岸田文雄内閣が閣議決定した「安保3文書」は、「宇宙の安全保障分野での対応能力を強化する」ことが強調されました。宇宙領域の軍事利用が急進に進んでいますJ
1月17日、2024年度中に打ち上げられる予定の日本の準天頂衛星に搭載する米軍の観測機器が横田基地に到着しました。
この観測機器は、宇宙領域認識のための光学センサーで、運用者は米国防総省です。新型の「H3ロケット」で打ち上げる予定です。当初の計画では今年中に打ち上げられることになっていました。「H3ロケット」は、試験機の打ち上げが2月17日に「中止」に。米軍の観測機器の打ち上げの計画も延ぴています。
米宇宙軍と覚書
米軍の観測機器を日本の衛星に搭載して打ち上げることは、19年4月19日に開催された日米安全保障協議委員会(2プラス2)で確認されていたことでした。
翌20年8月27日、ジョン・レイモンド米宇宙軍作戦部長(宇宙軍大将)が安倍晋三元首相を表敬訪問。この席で、安倍元首相が「日米同盟の抑止力・対処力の強化に向け、宇宙分野をはじめ、連携と協力を深めたい」と意欲を示していました。
そして20年12月、日本の宇宙開発戦略推進事務局と米宇宙軍による覚書調印によって正式に決定しました。
「回答は控える」
この観測機器の目的はどのようなものでしょうか。
担当する内開府は「スペースデプリ(宇宙ゴミ)の増加をはじめとする宇宙空間の混雑化による衛星衝突などのリスクに対応し、宇宙空間の安定利用を確保する観点から、スペースデプリなどの宇宙物体を宇宙空間から観測するためのもの」と言います。
では収集した情報は、どのように利用されるのでしょうか。これについては、内閣府は「外交上のやり取りにかかわることであることから、回答は差し控える」としています。
宇宙を「戦闘領域」と位置付ける米国は、宇宙軍の創設など宇宙の軍事利用を進めています。今回の観測機器の打ち上げにより、米軍にとっては、アジア周辺地域での宇宙領域把握機能を強化することが狙いとみられます。
日米が一体となった敵基地攻撃を行うには、標的の正確な位置の把握が必要です。情報収集、逓信、測位の機能は宇宙空間から提供されることになります。宇宙領域での「脅威」を監視する対策も課題となっています。 (つづく)(2回連載です)
加速する 宇宙軍拡 (下) 国境なき空間情報収集
しんぶん赤旗 2023年2月23日
2月3日、東京ビッグサイトで開催された「2023国際宇宙産業展」(日刊工業新聞社主催)の会場に、高市早苗宇宙政策担当相の姿がありました。
「宇宙システムというのが経済や社会を支える基盤であると同時に経済安全保障を含む安全保障の観点からも重要性を増している」と述べ、「今年の夏をめどに宇宙の安全保障構想を策定いたします。そして民生分野や科学、探査分野も含めまして3年ぷりに宇宙基本計画を改定して宇宙政策を一層強化していく予定」と発言しました。宇宙領域の軍事利用が急ピッチで進められています。
「安全保障基盤」
防衛省が2020年2月、ある資料を公表しました。
「防衛省の宇宙分野における取組」と題したこの冊子では、宇宙の軍事利用について次のように指摘していました。
「宇宙空間は国境の概念がなく、人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域の情報収集や通信、測位などが可能となるため、安全保障の基盤として死活的に重要な役割を果たしており、各国は宇宙空間を軍事作戦の基盤として利用」
国境のない宇宙空間では、平和的な国際協力こそ求められるものの、軍事利用が進めば、平和と安全が危険にさらされてしまいます。
22年4月、自民党が公表した「安全保障における宇宙利用について」は、「わが国を取り巻く脅威に対応するためには、最新の宇宙技術を適切に活用して警戒・監視能力、指揮・通信能力を強化することが必須」と明記。他国に対する監視システムを強化することを提起しました。さらに「ミサイル防衛のための宇宙システムを早急に整備する」ことを防衛省に求めました。
監視衛星の計画
防衛省は、23年度予算案に、宇宙関連予算として1844億円(契約ペース)を計上しました。22年度予算の2・3倍です。この中には、音速の5倍以上で飛ぶ極超音速滑空ミサイルを探知・追尾する技術開発のための経費として46億円(契約ベース)が盛り込まれています。さらに防衛省は、26年度までに宇宙状況の監視衛星の打ち上げを計画しています。宇宙作戦の運用基盤を強化するため、宇宙作戦指揮統制システムの整備にも注力しています。
22年4月の自民党の提言は、「国家宇宙安全保障戦略(仮称)」を策定することを提起しました。この戦略に盛り込む課題として「脅威対象や戦略目標、戦略的アプローチ、必要となる宇宙システム等を明記」することを挙げています。さらに、「同盟国・友好国にわが国の意思を明確に伝え、防衛力強化のための宇宙の活用を迅速かつ効果的に進める」ことを強調しました。
岸田文雄首相は昨年12月、「安保3文書」を閣議決定。航空自衛隊を改編して航空宇宙自衛隊にするなど宇宙軍拡が加速しています。(おわり) (金子豊弘が担当しました)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。