2023年2月6日月曜日

丸川議員「愚か者」やじ反省に透ける自民党の計算

 1月31日の衆院予算委での質疑で立民党の長妻昭政調会長が、自民党提案の「所得制限なき子ども手当」に絡め、民主党政権時代10年3月に同じ政策を提起した際、丸川珠代参院自民党議員が「このくだらん選択をした馬鹿者どもを絶対に許さない野次を飛ばしたことを批判し、岸田首相も「(議員は)発言、行動については、節度と相手に対する敬意を忘れてはならない。ご指摘は謙虚に受け止め、反省すべきは反省しなければならない」と応じました。

 これを契機にTVやネットでその野次が取り上げられ、改めて話題になりました。それはあまりにも異常な野次だったからですが、何故か当時在野だった自民党にはそうした感覚はなく、その野次を染めたシャツを作り1着1500円で売り出すことまで行い、当の丸川氏がご満悦な様子でそのシャツと一緒に撮った写真も残っています。
 しかし茂木幹事長自身が「所得制限なき子ども手当」という『くだらん選択』を行い、岸田首相もその野次の非常識さを認めたのですから、丸川氏も「反省すべきは反省します」とその非を認めるしかありませんでした。
 丸川氏はいわゆる「安倍ガールズ」の代表格で、第2次安倍政権や菅政権で五輪担当相などを務め、女性総理を狙う有力議員にのし上がりましたが、岸田政権下では冷遇されています。
 ただ19年参院選東京選挙区で100万票を超えるトップ当選を果たしたことで、衆院へのくら替えや、次期都知事選への挑戦も取り沙汰されていたそうですが、「今回の騒動は政治家として大きなダメージ」になりその実現性は怪しくなりました。昨年末杉田水脈前総務政務官が事実上更迭されたことに引き続く今回の出来事で、政界では「安倍ガールズの“追放劇”」かと ひそかに注目されているということです
 丸川氏は21年2月に五輪・男女共同参画担当相になりましたが、自民党国会議員連名で1月30日付で埼玉県議会などの地方議会に対し、夫婦別姓に賛同する意見書を採択しないよう求めた文書に、名を連ねていたことが明らかになりました。支離滅裂といえます。
 夫婦別姓問題については21年3月3日の参院予算委で福島瑞穂参院議員から立場の曖昧さを追及され、丸川氏はその時7回にわたり答弁を拒否しています。しかしその間に閣僚席で大笑いをするなど理解に苦しむ態度を見せました。この問題は丸川氏の人柄をよく示すもので、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長・伊藤和子弁護士が手厳しく批判しています。
  ⇒ 大笑いで夫婦別姓について答弁。丸川大臣の何が問題なのか(伊藤和子)

 泉 宏氏の記事「丸川議員「愚か者」やじ反省に透ける自民党の計算 ~ 」を紹介します。
 併せて澤藤統一郎氏の記事「『オロカモノ』と叫べば、我が身に返ってくる。こだまでしょうか、いいえ丸川珠代」を紹介します。こちらは記事の後半で示される4つの事例が圧巻です。
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丸川議員「愚か者」やじ反省に透ける自民党の計算
岸田政権下で冷遇される安倍元首相の秘蔵っ子
                   泉 宏 東洋経済オンライン 2023/02/02
                         政治ジャーナリスト  
 参院議員の丸川珠代元五輪担当相が、13年前の国会で、当時の民主党政権に浴びせた「愚か者めが」との激烈なやじが、1月31日の衆院予算委員会での質疑で改めて取り上げられ、ネット上でも大炎上する騒ぎとなっている。
 同日の質疑で、立憲民主党の長妻昭政調会長が、今国会での焦点の1つの「異次元の少子化対策」の修正ポイントとなる「所得制限なき子ども手当」に絡め、長妻氏が厚生労働相だった民主党政権時代に同じ政策を提起した際、丸川氏が「このくだらん選択をした馬鹿者どもを絶対に許さない」とやじを飛ばしたことを厳しく批判したためだ。
 
「反省すべきは反省しなければならない」
 岸田文雄首相も「ご指摘は謙虚に受け止め、反省すべきは反省しなければならない」と低姿勢で答弁。その後、丸川氏は追いかけるメディアに対し、悔しさを押し隠すように、岸田首相と同じ言い回しで反省の弁を繰り返した。
 この「愚か者めが!」騒ぎは、同時進行でテレビ各局のニュースや情報番組で面白おかしく取り上げられ、ネット上でもツイッターのトレンドワードに急浮上。久々に注目の人となった丸川氏は、これまでの高飛車な態度を一変させ、殊勝な対応で、降り注ぐ火の粉を払うのに必死だった。
 長妻氏は衆院予算委基本的質疑2日目の31日午前のトップバッターを務め、立憲民主の有力な論客として岸田首相と対峙した。
 1時間にわたった質疑の中で長妻氏は、自らが厚生労働相だった鳩山由紀夫政権当時の2010年3月に、参院厚労委員会で子ども手当の法案が強行採決された際、「自民党が所得制限を強く求めたことを踏まえてある女性参院議員が、『愚か者めが、このくだらん選択をした馬鹿者どもを絶対に許しません』というやじを飛ばした」と指摘、岸田首相に猛省を迫った。
 これに対し岸田首相は、ここにきて所得制限撤廃に軸足を移しつつあるようにみえるだけに、「議論を尽くさないといけないと思うが、その際の発言、行動については、節度と相手に対する敬意を忘れてはならない」と低姿勢で批判を受け止めてみせた。
 長妻氏はさらに、「挙げ句の果てに『愚か者めが』と書いたTシャツを、自民党の公式グッズとして1500円で発売、当時の広報委員長がそれ着てはしゃいでいた」と追い討ちをかけ、岸田首相は「議論は大事だったが、節度をこえていたとのご指摘は謙虚に受け止め、反省すべきは反省しなければならない」と事実上の陳謝を余儀なくされた
 テレビ朝日の人気アナウンサーとして活躍していた丸川氏が、自民党の誘いに乗って中央政界入りしたのは、2007年参院選。頻繁にやじを飛ばしていたころは1年生議員で、「端麗な容姿に似合わない激しいやじ」(自民幹部)が永田町でも話題となっていた。
 
茂木氏の「手のひら返し」が騒動のきっかけ
 そもそも今回の騒ぎは、茂木敏充自民党幹事長が、1月25日の衆院代表質問で、これまでの同党の方針を転換させて児童手当の所得制限撤廃に言及したことがきっかけ。すぐさま野党側は「手のひら返しだ」(立憲民主幹部)と批判する一方、「野党が得点を挙げる絶好のテーマ」(日本維新の会幹部)と勢いづいた。
 茂木氏は1月30日の党会合で「過去にとらわれず、未来志向で必要なことはやっていく」と自らの主張の正当性を強調。岸田首相は茂木発言を「1つの意見」と位置付ける一方で、与党公明党が「所得制限撤廃と対象年齢の18歳までの引き上げ」を求めていることも踏まえ、予算委答弁で「(所得制限撤廃などの提案を)大きな関心をもって注視したうえで、方針を決定していきたい」と最終的に受け入れる姿勢をにじませた。
 ただ、岸田首相と茂木氏はここにきて頻繁に密談を繰り返しており、与党内にも「茂木氏と示し合わせて野党や公明に譲歩して国会運営を順調に進めるための猿芝居」との見方が少なくない。
 このため、「党執行部による“捨て駒”にされたのが丸川氏」(安倍派幹部)との見方も出る。
 長妻質問を受けて取材に駆け付けた記者団に対し、丸川氏は「当時はわが党でも、私の発言を取り上げてTシャツを作る、それを販売するというようなこともございましたので、これは私も含めて、わが党が反省すべきは反省すべきだと考えております」と答え、当時の政策判断についても「過去の決定がどのようなものであっても、しっかりと今の状況にふさわしい政策を選んでいくべきだ」と語って足早に去った。
 
ひそかに注目を集める「安倍ガールズ」の“追放劇”
 丸川氏は非業の死を遂げた安倍晋三元首相の「秘蔵っ子」で知られ、いわゆる「安倍ガールズ」の代表格。現在当選3回で、安倍氏の庇護のもと、第2次安倍政権や菅政権で五輪担当相などを務め、女性総理を狙う有力議員にのし上がったが、岸田政権下では冷遇されている。
 その丸川氏は、2019年参院選東京選挙区で100万票を超える圧倒的トップ当選を果たしたことで、衆院へのくら替えや、次期都知事選への挑戦も取り沙汰されていた。それだけに、「今回の騒動は政治家として大きなダメージ」(閣僚経験者)となるのは否定できない。
 また、昨年末には杉田水脈前総務政務官が事実上更迭されており、政界では「安倍ガールズの“追放劇”」(同)もひそかに注目されている。
 安倍氏死去から半年あまり。自民党内でも「一強独裁」と呼ばれた安倍政治への評価が交錯する中での、今回の政治的騒動の連鎖。与党内の口さがない向きからは「まさに安倍氏のたたりに見える」(茂木派若手)との冷ややかな声も出ている。


「オロカモノ」と叫べば、我が身に返ってくる。こだまでしょうか、いいえ丸川珠代。
                    澤藤統一郎の憲法日記 2023年2月5日
 ある言葉が、ある人やその人生と緊密に結びついてる例はいくつもある。「それでも地球は回っている」「地球は青かった」「賽は投げられた」「二十にして已に朽ちたり」「不可能という言葉はない」「自由は死なず」「予は危険人物なり」「難波のことは夢のまた夢」「ケーキを食べれば」「見るべきものは見つ」「寸鉄人を刺す」「薄氷を踏む」「待ちかねたー」「もっと光を」「母は来ました今日もまた」「ガチョーン」「アイーン」「シェー」…等々。
 こういう特定の人と結びついた言葉の豊穣の中に、もう一つ新しい言葉が加わった。「愚か者」である。今や、丸川珠代の人生と深く結びついたものとして。正確には、「この愚か者めがー!」「このくだらん選択をしたバカ者どもを絶対忘れん!」というフレーズ。一度、彼女の口から放たれたこの言葉が、13年を経て彼女のもとに回帰してきた。無数の人の口からの「おまえこそ、愚か者だ!」という矢になって。「エラそうにくだらん言葉を発したバカ者を絶対忘れん!」という、重量級の返し矢もあったようだ。

 我が身を省みれば、人を愚か者と謗ることは憚られる。が、敢えて言わざるを得ない。この人にはまったく知性というものが感じられない。丸川は議場でのヤジで注目を集めた軽薄な政治家の典型である。数々の知性欠如のエピソードでも知られる。「オロカモノー」の批判を浴びて当然、その批判が生涯つきまとう宿命なのだ。この宿命は、安倍晋三との出会いから始まっている。人生、どこに不幸な躓きがあるか、予測しがたい。

 安倍晋三も「政治の私物化」「嘘とゴマカシ」「アンダー・コントロール」などの言葉と緊密に結びついて後世の人々の記憶に残ることになる政治家である。丸川珠代の「愚か者」とともに、それぞれの刻印が後世にまで消えることはない。
 丸川の「この愚か者めが!」は、2010年3月、参院厚生労働委員会で子ども手当法案採決の際の絶叫である。丸川に「愚か」と言われた法案は、民主党政権による所得制限なしの子ども手当導入だった。のち、自民党政権復活後に結局所得制限が導入されたが、この度、自民党が民主党政権時の政策を復活する方針を出して、丸川の「愚か者」発言をブーメランにすることとなった。

 ここで、丸川が「自民党執行部がなんと言おうとも、『所得制限なし法案』は愚か極まる」とがんばれば首尾一貫する。この人にも知性はあったのだと納得することにもなったはず。だが、しおらしく自らの過去の醜態を反省する弁を述べることで、みっともなさの極みとなった。そして、知性に欠けることの再確認ともなったのだ。
 自民党は、丸川珠代の「この愚か者めが」という野次はお気に入りだったようで、「この愚か者めが」とプリントしたTシャツを作成して1500円で販売。民主党バッシングの小道具に使っていた。丸川だけでなく、自民党の知性と品性の欠如も問われなければならない

 武闘派・丸川は、「愚か者」に続いく同年5月の参院本会議では、当時の鳩山由紀夫首相に対し「ルーピー」と野次を飛ばした。「ルーピー」とは、ワシントンポストが鳩山首相を酷評する際に使用した蔑称だった。通常は、品のない言葉を発することを恥ずかしいと思うところだが、丸川はこんな品性のない野次を売り物にした政治家だった。そして、安倍自民党も、これに悪乗りしていた。
 2013年の参院選の公示日、安倍晋三は、再選を目指して立候補した丸川を応援して、「『この愚か者めが!』『ルーピー!』発言で注目を浴びた丸川珠代さん、出陣です」とツイートしている。安倍晋三と丸川珠代、そして「愚か者」のお似合い三者。仲良きことは美しきかな。

 しかし、物事にも人にも、功罪両面がある。丸川珠代、けっして「罪」ばかりではない。社会的には、それなりの「功」も記さねば公平ではない。この人、学歴は東大経済学部卒業だという。「しかし」と逆接の接続詞を用いるべきか、「だからこそ」と順接でいうべきか、あるいは「だからと言って」「それでいて」というべきか、よく分からないが、知性に欠けるのだ。
 これまでのこの人の看板は、東大卒・自民党・安倍晋三の3枚だった。実は、この3枚とも、大した看板ではないことを丸川が身をもって実証してくれた。東大卒で、自民党公認で、安倍晋三のオトモダチだから…?、それがどうした? 何の恐れ入ることがあろうか。むしろ、東大卒・自民党・安倍晋三の3枚とも、「愚か者」とよくお似合いなのだ。これは、大きな「功績」ではないか。
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 以下は、「愚か者」丸川珠代の愚行の一端である。あらためて申し上げるが、こんな人物を東京都民は、当選させた。しかも、3回にわたって。本当の「愚か者」とはいったい誰なのだろうか。

✧「えっ? 私の選挙権がない」事件
 丸川の初当選は、2007年7月の参院選。安倍晋三の要請を受けた形で、東京都選挙区に立候補した。7月16日、新宿区役所に期日前投票に行ったところ、丸川は選挙人名簿に登録されておらず、同区における選挙権を有していなかった。そのため、投票できずに、真っ青になったことが大きな話題となった。さらに、2004年にアメリカ合衆国から帰国して以来、6回の国政・地方選挙でまったく投票に行っていなかったことも明らかとなった。それでも、被選挙権は認められ、こんな候補者を都の有権者は国会議員に選出した。

✧丸川政務官問責決議事件
 厚生労働大臣政務官だった丸川は、2013年2月、人材派遣会社ヒューマントラストの新聞広告に登場して「日雇い派遣の原則禁止は見直すべき」と発言し、さらに3月15日の衆議院厚生労働委員会で「見直しは省の見解」と答弁した。
 その誤りを野党に追及されて、撤回し陳謝した。この問題を受け、厚生労働委員会は理事会で、丸川に答弁をさせない「謹慎扱い」を全会一致で決定、さらに全会一致(もっとも、自民・公明は欠席)により可決された。

✧福島第一原発事故失言事件
 自民党が政権に復帰し、丸川が環境相を務めていた2016年2月、政府が除染の長期目標に掲げた「年間1ミリシーベルト以下」の基準をめぐって、以前の民主党政権を批判する文脈で「何の科学的根拠もなく時の環境大臣が決めた」などと長野県松本市内の講演で発言した。「年間1mSv以下」の数値は、人工放射線による一般人の年間追加被曝限度を「1mSv/年」とした国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告に基づいて定められたもの。この発言は大騒ぎを引き起こした末に、丸川は「福島をはじめ被災者の皆様に誠に申し訳なく、心からおわび申し上げたい」「(講演での発言は)事実と異なっていた。当日の福島に関する発言を、すべて撤回する」と表明した。

✧「カフェスタ」事件
 2015年7月13日放映の自民党のネット番組「カフェスタ」に丸川珠代は安倍晋三とともに出演。丸川は「世界一周の旅行のピースボート。あのピースボートに乗っていたのは、民主党の辻元清美議員でございますが、海賊が出る海域を通るときにたしか、自衛隊に護衛してくれって頼んで、自衛隊に守ってもらったんですよね」と発言。安倍も「海賊対処のための法案を出したときも、民主党は反対でした。しかし実際にいざ危なくなると、助けてくれと、こういうことなんだろうなと思いますね」と調子を合わせた。これが実は、事実無根。辻本は丸川の発言に抗議。7月14日、丸川は辻元を訪ね、直接謝罪した。自民党も詫び状を提出。画像も削除された