2024年3月30日土曜日

ガザ停戦 安保理決議 戦闘開始以来初、米国は棄権

 国連安全保障理事会は25日、ガザ地区を巡って、ラマダン期間中の即時停戦を求める決議を全15理事国中14カ国の賛成多数で採択しました。米国は米国内外からの批判に包囲されて国際的な孤立を深めるなか、今回は拒否権を行使することはできず、棄権しました。
 決議は日本を含む非常任理事国10カ国が共同提案しました。

 しかしイスラエル軍は国連安保理が25日に即時停戦を求める決議を採択した後もれを無視して連日軍事攻撃を続け住民を殺害しました。

 国連人権理事会特別報告者フランチェスカ・アルバネーゼ氏はジュネーブで開かれた人権理事会で「ジェノサイドの分析」と題する報告書を発表し、昨年10月7日以降のイスラエルによるパレスチナ・ガザでの軍事作戦はジェノサイドに相当するとの合理的な証拠があると述べ、各国に対しイスラエルへの制裁と武器禁輸の実施を求めました。

 「ジェノサイド分析」報告書は、イスラエルは、パレスチナ人武装勢力が民間人を「人間の盾」として使っていると非難するが、イスラエルがそれを□実に「パレスチナの民間人の広範かつ組織的な殺害を正当化している」と指摘し「イスラエルはガザを『民間人のいない世界』へと変容させた。そこでは病院に避難することから安全を求めて逃げることまで、すべてが人間の盾の一形態だと宣言される」「イスラエルは事実上、民間目標と軍事目標の区別を廃止」し、「ガザ全域を『軍事目標』」にしたとし「ジノサイドの意図」があると発しています。

 アイルランドのマーティン副首相兼外相は27、イスラエルによるガザヘの攻撃がジェノサイド条約違反だとして南アフリカが昨年末、国際司法裁判所ICJ)に訴えた裁判に参加すると表明しました。ジェノサイドがあったかどうか、ガザの住民全体の状況を見て判断するようICJに要請するとしています。

 ジャンピエール米大統領報道官は27日の記者会見で、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ最南部ラファヘの地上参戦に関し、米国との協議開催に向けた再調整に同意したと明らかにしました。

 米国務省の職員が27日、パレスチナのガザ地区を軍事侵攻するイスラエルを擁護するパイデン政権に抗議して辞職しました。民主主義を強化するとして中東諸国で現地の活動家や民団体と協力する仕事に携わっていましたが、イスラエルヘバイデン政権が武器供与を続けるなかで、中東地域で怒りが広がり、米政府関係者との対話をやめる団体が出るなどし、任務遂行がほとんど不可能になっていると明らかにしました

 しんぶん赤旗の7つの記事を紹介します。
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ガザ停戦 安保理決議 戦闘開始以来初、米国は棄権
                       しんぶん赤旗 2024年3月27日
【ワシントン=島田峰隆】国連安全保障理事会は25日、イスラエルが軍事侵攻を続けるパレスチナのガザ地区を巡って、ラマダン(イスラム教の断食月)期間中の即時停戦を求める決議を全15理事国中14カ国の賛成多数で採択しました。米国は棄権しました
 決議は日本を含む非常任理事国10カ国が共同提案しました。国連安保理が即時停戦を求める決議を採択したのは、昨年10月にイスラム組織ハマスとイスラエルの間で戦闘が始まって以来、初めてです。
 イスラエルを擁護する米政府は、即時停戦を求める決議案が出されるたびに拒否権を行使して採択を阻んできました。しかし米国内外からの批判に包囲されて国際的な孤立を深めるなか、今回は拒否権を行使することはできませんでした
 決議は▽長期的で持続的な停戦につながるラマダン期間中の即時停戦▽すべての人質の即時かつ無条件の解放▽人道支援アクセスの確保▽拘束中のすべての人々にかかわる国際法上の義務の順守―を全当事者に要求しています。安保理決議は国連加盟国に対して拘束力があります。
 非常任理事国10カ国を代表して発言したモザンビークは「決議案の採択はガザの危機に対応する重要な一歩になる」「非常任理事国10カ国は基本的な一歩として即時停戦を求める声を常に支持してきた」と述べ、拒否権を持つ常任理事国に賛成するよう訴えました。
 採択後の討論では「(ガザ住民への)“集団懲罰”の苦しみを終わらせねばならない。全当事者に決議の実践を促す」(シエラレオネ)などの発言が相次ぎました。
 パレスチナのマンスール国連代表は「決議の採択が転換点にならねばならない」と指摘して、決議の実践を求めました。
 イスラエルのエルダン国連大使は「ハマスに希望を与える決議だ」などと反発し、軍事作戦を継続する姿勢を示しました。


イスラエル軍 ガザ空爆 安保理決議を無視 連日攻撃 病院包囲も続く
                        しんぶん赤旗 2024年3月29日
 イスラエル軍は27日、パレスチナのガザを複数回にわたって空爆し、住民を殺害しました。ロイター通信などが報じました。国連安保理が25日に即時停戦を求める決議を採択した後も、イスラエルはそれを無視して連日軍事攻撃を続けています
 ガザ最南端ラファでは少なくとも住宅4軒を爆撃しました。ガザ保健当局によれば、この日の空爆の一つにより1家族の11人が殺害されました。
 空爆現場で遺体の収容作業を見守っていたムサ・ダヒールさんは、爆撃で75歳の父親と62歳の母親を亡くしました。北部ガザ市から避難していた父の友人らと両親が「一緒にいたのに突然、塵(ちり)のように消えてしまった」と悲しみをロイター通信に語りました。
 また別の現場にいたジャミル・アブホウリさんは、「空爆が増えており、やつら(イスラエル軍)はラファに侵攻すると脅している。国連安保理は何をしているのか」と訴えました。
 同日の別の空爆では女性や子どもを含む4人が殺害され、負傷者も出ました。北部ガザ市の西方でも同日、イスラエル軍による空爆で7人が殺害されました。
 南部ハンユニス近郊で26日、避難民キャンプへの空爆で複数の子どもを含む12人が死亡しています。ハンユニスと北部ガザ市の大規模病院への攻撃や包囲も続いてます。


ガザ攻撃はジェノサイド 国連人権理に報告書 制裁求める
                       しんぶん赤旗 2024年3月28日
 国連人権理事会からパレスチナ占領地の特別報告者に任命されているフランチェスカ・アルバネーゼ氏は26日、ジュネーブで開かれた人権理事会で、昨年10月7日以降のイスラエルによるパレスチナ・ガザでの軍事作戦はジェノサイド(集団殺害)に相当するとの見解を示し、各国に対しイスラエルへの制裁と武器禁輸の実施を求めました

 アルバネーゼ氏は、「ジェノサイドの分析」と題する報告書を発表し、その内容について説明。「ガザでのパレスチナ住民に対する、ジェノサイドという犯罪が実行されたと信じるに足る合理的な証拠がある」と強調しました。
 報告書では、イスラエルの軍や政府の高官がジェノサイドの意図を表明し、それが承認され、ジェノサイド行為が実行されたと結論付けています。
 また、イスラエルがガザでの軍事行動で国際人道法を順守していると主張しながら、保護すべき多くの民間人を「テロリスト」、民間人の生命維持のためのインフラ施設を「テロリストが利用」と見なして「殺傷や破壊の対象にしている」と指摘しています。
 イスラエルのネタニヤフ首相や他の閣僚がガザから他国へのパレスチナ人の「民族移送」「追放」に言及していることにも触れ、ガザにイスラエル人を住まわせる「入植者植民地主義的な住民置き換えを提唱している」と批判しています。

 報告書は、イスラエルのジェノサイド行為は、パレスチナ人に対する70年以上にわたる、「入植者植民地主義による抹殺の過程が激化した段階」だと厳しく指摘しました。
 イスラエルとイスラエルを擁護する米国の代表は欠席しました。


イスラエル軍を批判 人道法を歪曲し 無差別攻撃正当化
                       しんぶん赤旗 2024年3月28日
 25日付で発表されたパレスチナ占領地の人権状況に関する特別報告者フランチェスカ・アルネーゼ氏の報告書は、イスラエルが戦争行為に対して適用される国際法,(国際人法)を歪曲(わいきょく)して、パレスチナ人に対するジェノサイド(集団殺害)を行っていることを告発しています。

国連「ジェノサイド分析」報告書
 イスラエルは、パレスチナ人武装勢力が民間人を「人間の盾」として使っていると非難。「人間の盾」自体は国際人道法違反ですが、報告書は、イスラエルがそれを□実に「パレスチナの民間人の広範かつ組織的な殺害を正当化している」と指摘します。
 イスラエルは、教会、モスク、学校、国連施設、大学、病院、救急車についても、ハマスと関係があると決めつけて標的とし、その近くにいる住民を「共犯者」であり殺害可能」だとみなしています。
 報告書は、「イスラエルはガザを『民間人のいない世界』へと変容させた。そこでは病院に避難することから安全を求めて逃げることまで、すべてが人間の盾の一形態だと宣言される」と述べています。
 またハマスの戦闘員が使用しているという口実で、イスラエル軍は、国際人違法で保護の対象となる民間施設を大規模に攻撃。「イスラエルは事実上、民間目標と軍事目標の区別を廃止」し、「ガザ全域を『軍事目標』」にしたとしています。
 報告書は、イスラエルが、軍事攻撃にあたって民間人が巻き添えとなる「二次的被脊」の概念を「法的な隠れみの」にしていると指摘。高層住宅への予告なしの攻撃や、人口の密集する難民キャンプヘの攻撃などを含めた無差別攻撃について、イスラエルが’「大量殺害を容認」していることを示唆していると述べています。
 報書はイスラエルがガザの医療施設を攻撃し、医療体制の崩壊をもたらしていることについて、「ジノサイドの意図」があるとしています。


アイルランド参加へ ガザ国際司法裁 ジェノサイド裁判
                       しんぶん赤旗 2024年3月29日
 アイルランドのマーティン副首相兼外相は27、声明を出し、イスラエルによるガザヘの攻撃がジェノサイド(集団殺害)条約違反だとして南アフリカが昨年末、国際司法裁判所ICJ)に訴えた裁判に参加すると表明しました。昨年10月7日のイスラム組織ハマスの襲撃以降のイスラエル軍によるガザ住民への攻撃と人道支援の妨害は「国際法の大規模な違反だ」として「止めなければならない」と強調しました。

国際法違反止める
 マーティン氏は声明で、▽人員の拘束▽人道支援の意図的な制限▽民間人や民間インフラヘの攻撃▽住民全体に対する集団的懲罰など、国際法違反の事例を列挙。国運安全保障理理事会が25日、即時停戦を求める決議案を採択したことや、欧州連合(EU)首脳会議が戦闘中止を求めたことに言及し、「国際社会の見解は明確だ。もうたくさんだ」と強調しました。
 ICJは1月11~12日に最初の審理を行ったあと、南アの要請を受けてイスラエルに対しジェノサイド行為を防ぐあらゆる手だてを取るよう暫定措置命令を出しました。ICJの最終的な判決までには数年かかると見られます。
 マーティン氏はICJの命令以降、ガザヘの人道支援の妨害で「人口の半分が飢饉ききん)に直面し、100が食料不足に陥っている」と警告ジェノサイドがあったかどうか、ガザの住民全体の状況を見て判断するようICJに要請するとしています。 マーティン氏は、アイルランドが具体的にどのような主張を行うかは明らかにしていません。裁判への参加は、法的・政策的検討と、アフリカを含む複数の国との協議を行った上で決めたといいます。
 ダブリン大学トリニティ・カレッジのマイケル・ベッカー教授(国際人道法)は、アイルランド政府は「故意に飢饉を発生させる政策決定を(イスラエルが)行ったことから、ジェノサイドの意図が導き出される」と主張するのではないかと、英紙ガーディアン(電子版外日付で解説しました。


ラファ作戦再調整 イスラエルと米が同意
                       しんぶん赤旗 2024年3月29日
【ワシントン=時事」ャンピエール米大統領報道官は27日の記者会見で、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ最南部ラファヘの地上参戦に関し、米国との協議開催に向けた再調整に同意したと明らかにしました。ロイター通信によると、イスラエル代表団が早ければ来週にも訪米する見通し。
 ジャンピエール氏は「イスラエル首相府が同意した。(双方に)都合の良い日程を調整している」と語りました。協議実施の見込みとなったことについて「良いことだ」と評価し、ガザでの戦闘休止や人質解放に向けて取り組んでいくと強調しました
 ラファヘの大規模な軍事作戦を巡っては、避難民に多大な犠牲を強いるとして、米側が反対を表明。「代替策」を協議するため、イスラエル政府が代表団を米国に派週することで一致していました。
 しかし、イスラエルのネタニヤフ首相は、米国がラマダン(断食月)期間中の即時停戦を求める国連安保理決議の採択を棄権し、拒否権を行使しなかったことに反発。25日の採択デルメル戦略問題相とハネグビ国家安全保障顧問らで構成する代表団の派遣見送りを発表しました。
 米政府高官は棄権について、「政策変更を意味していない」と説明。派遣見送りに「当惑している」と失望感を示していました。


米国務省職員2人目辞職 イスラエル擁護に抗議
                        しんぶん赤旗 2024年3月29日
【ワシントン=島田峰
米国務省の職員が27日、パレスチナのガザ地区を軍事侵攻するイスラエルを擁護するパイデン政権に抗議して辞職しました。国務省の職員がバイデ政権のイスラエル寄り政策を理由に辞職するのは昨年10月に続いて2人目です。
 辞職したのは国務省で人権や民主主義を扱う部門で働いていた中東専門家のアネル・,シーライン氏(38)です。ワシントン・・ポスト紙に対して、中東諸国で米国への見方が厳しくなるなか,「もはや仕事を遂行できなくなった」と述べました。
 シーライン氏は米外交政策のシンクタンク「クインシー研究所」の研究員などを経て昨年春から国務省で働き始めました。民主主義を強化するとして中東諸国で現地の活動家や民団体と協力する仕事に携わっていました。
 しかしイスラエルヘバイデン政権が武器供与を続けるなかで、中東地域で怒りが広がり、米政府関係者との対話をやめる団体が出るなどし、任務遂行がほとんど不可能になっていると明らかにしました
 シーライン氏は国務省内部で懸念の声を上げてきたものの「米国がイスラエルへ継続的に武聯る限りもう無駄だと結論付けた」と話しました。
 同じような理由で昨年10月に国務省を辞めたジョシュ・ポール氏は同紙に対しシーライン氏の辞職に関して「バイデン政権が外交において法律や基本的な人間性を無視していることを雄弁に物語っている」と指摘しました。
 今年1月には教育省でも高官1人が対イスラエル政策に抗議して辞職しました。