2024年3月9日土曜日

東証が34年ぶり史上最高値 - 令和バブル崩壊の4つのリスク(世に倦む日々)

 世に倦む日々氏が掲題の記事を出しました(長いタイトルなので最後の部分「(出口 - 再分配 - 中国 - NY)」を省略して表示しました)。
 この30年間、日本の労働者の賃金が如何に抑圧されてきたかはいまや衆知の事実になりました。それがアベノミクスによっていっそう加速・拡大した事実をグラフを通して解説しています。
 そしてこの状況を、「実態を正しく言えば、格差社会の富裕層が株や配当でどんどん豊かになり、低所得者層が物価高で苦しんでいるという二重構造の姿」であると述べ、高齢者から見ると驚くべきことですが、「今の若い日本人は、新自由主義以外の経済思想を知らない。新自由主義が正義であり、普遍的で標準的な経済のセオリーとシステムだと考えている。その考え方を常識としている。だから、当たり前に自民党と維新に投票する」と述べています。「今、少数の勝ち組が栄華を謳歌している。日本の繁栄に酔い痴れている。新自由主義の勝利と栄光の凱歌が、恰も日本経済の復活としてマスコミで騙られている」とも

 今後起きる事態については、「第三のステージを迎えようとしている。第三段階は戦争と破滅の時代であり、途絶と終端の時間帯だ。自分にも先がないが、日本という国家・社会にも先がない。一緒に死に果てる予感がする」という悲観的な吐露もあります。

 それはそれとして当面する「令和バブル崩壊」(株価下落リスク)の要因として、
日銀の量的緩和政策の変更」、第2に「賃上げと上場企業の収益構造」の関係、
第3に「中国経済の不況低迷とその影響」、第4に「ニューヨーク株式市場の暴落問題」を挙げています。
 悲観するしかない所以です。
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東証が34年ぶり史上最高値 - 令和バブル崩壊の4つのリスク(出口 - 再分配 - 中国 - NY)
                       世に倦む日日 2024年3月5日
先月下旬(2/22)、東証株価が34年ぶりに最高値を更新した。34年間越えられなかった壁は、1989年12月末につけた終値の3万8915円で、当時の出来事はよく覚えている。テレビで、銀座で飲んだサラリーマンが、タクシーを捕まえようと歩道で一万円札を振り回している絵が度々登場するが、私もその現場を体験した一人だ。場所は、外堀通りの新橋寄りの位置だろうか。田舎出の一介の若輩の庶民でも、当時過熱する日本経済の繁栄の渦の中にいて、栄耀栄華のおこぼれの切れ端に授かっていた。毎日とても忙しかった。リゲインのCMのように、皆がエネルギッシュにアグレッシブに働いていた。経済規模の拡大は、経済活動の活発さの表れであり、すなわち、末端の労働者にとっては仕事が大量に入ってきて、残業が増えて成果を多く出すことを意味する。残業(月70h)の後に銀座に精力的に繰り出していた。

90年代に入って総量規制を契機に株価と地価の暴落が始まり、不良債権問題が顕在化する。実体経済に悪影響を及ぼし始め、1997年の金融危機へと至る。そこからずっと日本経済は低迷と萎縮と不能を続けていて、失われた30年が進行中だ。私の人生は、前半30数年が上り調子で興隆している時期であり、後半30数年が真っ暗な坂道を延々と転落している時期となる。私と同年代の日本人は、多数で平均がこうした自己像の総括であるに違いない。後半の30年間は、日本経済の回復と再生を願う時間だったが、もはや高齢者となったことと、日本に再生の望みがない確信があり、30年間の希望を諦めて捨てるときに来ている。第三のステージを迎えようとしている。第三段階は戦争と破滅の時代であり、途絶と終端の時間帯だ。自分にも先がないが、日本という国家・社会にも先がない。一緒に死に果てる予感がする。

当然の話だが、これで「失われた30年」が終わるわけではないし、ここから日本経済の発展や躍進が始まるなどあり得ない。国民生活が豊かになる展望はないし、為替が円高方向に転換する未来もないだろう。日本人は富(財とサービス、製品価値)を作り出す能力を失っている。経済的生産の資質を喪失し、競争力を弱め、世界からの評価も落とす一方だ。テレビはハイセンスが、白物家電はハイアールがシェアを伸ばし、国内の製造業は工場閉鎖人員削減のニュースばかり多い。産業はボロボロなのに株価が騰がっている。今、たしかに経済全体は人手不足だが、人手を求めているのは、介護とか建設業とか飲食業とかインバウンドで、賃金の安い、労働生産性の低い業種と職種ばかりだ。一方、労働生産性の高いITとか先端技術方面では、日本の若い労働者は外国人と比較して優位に立ててない。勉強不足が原因なのだろう。

大越健介の報ステが、株価が34年ぶりに最高値を記録した夜に、奇怪で倒錯した一方的美化の奉祝報道をやっていた。森永卓郎の視点からは、それは「ザイム真理教」の邪悪な辻説法に聞こえたに違いない。大越健介によれば、今回の東証株高はバブルではなく、地に足の着いた健全な経済現象であり、復活した日本経済の好景気の証明なのだと言う。NHKと同じか、それ以上に株高を賛美して正当化する報道に終始した。呆れ果てる。株価をさらに吊り上げるため、タンス預金や銀行預金を株式市場に誘導するため、新NISAを拡販するため、大越健介がプロパガンダをやっている。東証の売買株数と売買代金の7割は外国人資本家によるものだ。日本人は3割しかない。外国人資本家が中国市場から資金を移動させ、今回の株高が実現したと説明されている。どうしてそれが「地に足が着いた相場」という認識になるのだろう













マスコミ報道の説明を否定する、矛盾する現実はいくらでも並べられる。例えば、子ども食堂 の数の増加がある。湯浅誠が理事長を務めるNPO法人が経営するこども食堂は、昨年、過去最大の増加数を記録して全国で9131か所となった。全国の公立中学校数と並ぶ数だと言い、NPO法人はHPで胸を張って事業成功を誇示している。私は、なぜ自画自賛する態度になれるのか理解できない。子ども食堂とは、基本的に、その地域で満足な食事ができない家庭の子どもが、栄養摂取の救援を受ける慈善事業の施設ではないか。子どもへの食事提供に困難な家庭が減っていれば、子ども食堂が増える道理はなく条件はない。子ども食堂の増加は、明らかに貧困家庭の増加を意味する深刻な現実であり、日本社会の貧困化のメルクマール(⇒シンボル・表象)に他ならない。子ども食堂の数の増加は、日本の不幸を証する象徴である。豊かになれば減るものだ

生活保護申請件数の増加という指標もある。3年連続で増えていて、コロナ禍と物価高の影響だと説明されている生活保護受給世帯数は、2023年9月の統計で165万世帯グラフを見ると増加傾向に転じていて、貯蓄の減少が要因ではないかと厚労省が言っている。高齢化も一つの大きな背景だろう。いずれにせよ、生活保護の増加は国民生活の窮乏化を端的に示す数字であり、マクロ経済の観点からすれば、日本経済が不全で不活発な状態にある真実の証明に他ならない。どの国でも為政者はこの数字を減少させるべく政策を動員しなければならず、したがって、およそ日本経済は大越健介が浮かれて言祝いでいるような現状にない。大越健介の言説は欺瞞だ。嘗てのバブルと呼ばれた頃の数字を見ると、相対的貧困率も子どもの貧困率も明らかに低かった事実が分かる。当時、貧困という言葉はほとんど使われなかった。格差という言葉もなかった。

実態を正しく言えば、格差社会の富裕層が株や配当でどんどん豊かになり、低所得者層が物価高で苦しんでいるという二重構造の姿にある。30年前、テレビに出始めた慶応大学教授の竹中平蔵が、日本はこれから勝ち組と負け組に分かれるという言説を述べた。予言であると同時に、彼の政策理念の提唱であり、新自由主義の理想的将来を宣言した言葉だった。30年経って、竹中平蔵の理想と目的どおりの日本社会が実現している。これほど見事に現実化するとは思わなかった。この20年以上、それを阻止すべく、方向転換させるべく、懸命に人生を捧げてきたつもりの私は、尋常でない敗北感と屈辱感に苛まれる。結局、負けてしまって老いさらばえた。どんな抵抗の言論も説得も功を奏さなかった。今、少数の勝ち組が栄華を謳歌している。「日本の繁栄」に酔い痴れている。新自由主義の勝利と栄光の凱歌が、恰も「日本経済の復活」としてマスコミで騙られている

今の若い日本人は、新自由主義以外の経済思想を知らない。新自由主義が正義であり、普遍的で標準的な経済のセオリーとシステムだと考えている。その考え方を常識としている。だから、当たり前に自民党と維新に投票する。ロシア人がプーチンを支持するように、安倍晋三の政策を支持する態度をとる。新自由主義支持がマジョリティで、格差は当然だと思っている。われわれが若い頃はそうではなく、新自由主義は異端で、格差は社会悪だったが、今はそうではない。昨年のNHKの『欲望の資本主義』を見て、本当に驚かされた。ハイエクが経済学の聖人扱いされているのだ。ハイエクとフリードマンが堂々の正統の位置に置かれて語られている。信じられない公共放送に眩暈を覚えた。が、どうやらこれが現代世界の経済学の実情であり、新自由主義の理論はデフォルトで批判も排斥もされない。逆だ。正統で標準で常識なのだ。トリクルダウン理論とアベノミクスが正論なのだ

所得分布のグラフを確認しよう。ネットを探すと、2022年と1998年の二つのデータを発見できる。中央値(世帯全体を二分する所得金額の境界値)が、1998年536万円だった。2022年には438万円になっている。24年間で100万円も少なくなった。平均額の方も、657万円から549万円へと減っている。あらためて数字が示す衝撃的事実に驚愕させられる。格差・二極化に推移した現実が如実に表されている。そして、この間に消費税が上がり、社会保険料が上がり、特に低所得の世帯に負担が増えた。所得分布グラフのなだらかな曲線が、どんどん左側の峰が高くなり、急峻になったのが、この25ー30年の日本経済の姿である。低所得の国民が増えた。ただ、不思議なことに、低所得者が増えながら、政府与党の経済政策(=新自由主義)に対する批判はどんどん弱まって行った。貧困層の数は増えながら、抵抗の声が薄くなっていて、悪の現実を容認している












もう一つ、マスコミが報道に載せないデータを示そう。国交省が統計を出している新設住宅着工戸数の約30年間の推移である。一戸建・マンション・社宅・借家を合計した数字だが、大雑把に、三段階に分かれて戸数が減少している。1996年までは全体で160万戸ほどの線で着工数があった。1997年から一気に急減し、2006年までの10年間は120万戸ほどの水準になる。1997年は金融危機が起きた年だ。さらに2007年から2009年にかけて第二段目の急落があり(リーマン不況)、以後は80万戸台の線で現在に至っている。30年前の半分にまで減ってしまった。別の調査資料を見ると、2040年度は55万戸にまで減少すると予測がされている。凄まじい勢いで住宅建設が減った(今後も減る)。そして、新築マンションの昨年の平均価格は5911万円。戸数を減らし、価格を上げている。購入できる者が限られているという意味だ。パワーカップルや外国人が買っている。

株価の今後を予想しよう。私の立場と見解は、下落リスク要因にフォーカスする悲観的な観測である。リスク要因は大きく4点ある第一に、日銀の量的緩和政策の変更である。これは現時点で見極めが難しいが、植田和男は、昨年から出口戦略を臭わせる発言を繰り返している。植田和男自身の考え方は、おそらく新自由主義のマネタリストで、さらには定見のない俗物のヒラメ官僚なのだろうが、このまま黒田東彦の異次元緩和の路線を貫徹し続けると、日銀と円の信認に不測の事態が生じてしまう。ハイパーインフレを起こしかねない。どこかで出口戦略を探って方向転換する必要があり、その認識と姿勢については、どうやら林芳正・岸田文雄が傾向性を持っている。逆に、麻生太郎と菅義偉と安倍派は金融緩和継続派(神聖アベノミクス主義)で、すなわち政権内で温度差が看て取れ、路線対立と権力闘争の一つのモメントとなっている。

第二のリスクは、賃上げと上場企業の収益構造の問題である。何度も言ってきたように、東証の株価はバブルで、(1)日銀の果てしない金融緩和と、(2)円安(為替差益)による見かけの企業の好業績とに支えられている。内部留保の右肩上がりの増大は、労働者と下請け中小企業からの苛烈な収奪によって実現してきた。株価が2012年から右肩上がりで上昇しているのは、アベノミクスの政策の賜物に他ならない。小泉改革からアベノミクスの20年間、途中で民主党政権が割り込んだ3年間を除いて、ただひたすら、猛烈に賃金切り下げを続け、労働セクターに入るはずの富(マネー)を資本セクターに流し込んできたのだ。ゆえに内部留保が延々増殖し、市場(株売買する資本家)からの企業の評価が高まり、企業の株が買われた。もし、ここで大企業が下請け中小企業に利益を分配したり、派遣労働者の賃金を上げたりするとすれば、その原資は内部留保からということになる。それは株価にとってはリスク要因となる。











第三のリスクは、中国経済の不況低迷とその影響である。中国経済の今後は非常に不透明で、一部に、不動産市場の暴落による巨大な不良債権の発生が囁かれている。つまり、日本の30年前と同じ状況と経過を辿るのではないかという悲観論が出ている。もし政策当局が舵取りを間違え、不良債権の償却と経済成長(内需拡大)の回復に失敗すれば、中国経済も萎縮と衰退に向かうデフレ・スパイラルに陥りかねない。その場合の日本経済への影響は絶大だろう。中国の日本経済への寄与は観光客のインバウンド需要だけではない。輸出入と現地生産があり、14億人の国内市場での販売収入と利益がある。反中一色に染まった現在の日本の報道と世論では、中国経済の不振と崩壊を歓迎する声がきわめて強いけれど、その悪影響が日本企業にどう及び、マクロ経済にどうインパクトを与えるか冷静に計測した議論は皆無だ。現状、日本企業の中国市場への依存はきわめて高く、したがって企業業績の大幅悪化は免れないだろう。

第四のリスクは、ニューヨーク株式市場の暴落である。2008年のリーマンショックの再来である。絶好調に見えるアメリカ経済も各所に不安はあり、例えば、製造業は15か月連続で「不況」という数字になっている。昨年3月と5月に銀行3社が経営破綻したニュースがあったが、その不安が一部に続いている気配がある。アメリカの場合、最大のリスクは大統領選の政治対立であり、激越な衝突を避け、無難な軟着陸の結果に終わらせることができるかどうかだろう。大きな混乱が生じたときは金融市場にも影響が出る。森永卓郎は、昨年から、否、それ以前からずっとニューヨーク株価の暴落を予言している。オオカミ少年の如くになり、膵臓癌を患って第4ステージという厳しい局面になった。同年齢の私は、森永卓郎の予言の行方に人一倍大きな関心を持って凝視している。世界中の持たざる者(負け組)が、同じ動機で注目しているだろう。森永卓郎によれば、地球全体がバブルで、弾けたときは100年戻らないのだと言う

1929年の大恐慌と同じかそれ以上の地獄の到来であり、資本主義の破滅と終焉の図である。森永卓郎がそれをリアルに直観しているように、同年齢の私も「審判の日」接近の空気を肌で感じる部分がある。以上、悲観的な株価予測を整理して結論すれば、第一と第二の要因の上に第三の危機が重なり、東証が打撃を受け、第四の恐怖の魔界へと繋がる道筋ではないか。