ブログ「マスコミに載らない海外記事」に米国務次官補ビクトリア・ヌーランドの退任は「ワシントンの主要外交政策プロジェクト失敗の自認」とする記事が載りました。
米国が一向に上手くいかないといま頭を悩ませている「ウクライナにおける戦争」は、米国がその準備に当時5000億円を投じたとされている14年2月のウクライナ・クーデター(ラマダン革命)が発端で、ヌーランドはこの狂暴な革命を現地で具体的に指導しました。
1991年の「ソ連」崩壊を機に自立したウクライナは、ウクライナ人とロシア人(ロシア近傍のドンバス地方に居住)が共存していました。そのため歴代の大統領は両民族の融合に努めてきたのですが、革命政権は成立するや否やロシア人を敵視しドンバス地方に征討軍隊を向けました。そのため旧国軍の一部がドンバス地方側について内戦になりました。
内戦では両勢力の力が拮抗して決着がつかなかったため、革命政府側は偽りの「ミンスク合意」を結んで15年に終戦しました。
その後革命政権は、ロシア語を公用語から外すなどしてロシア人を迫害する一方で時間を掛けて軍備の増強に努め、22年2月にはドンバス地方を征討するべく軍隊を境界線の近くまで進めました。そのため22年2月下旬、ロシア軍がロシア人保護のためにウクライナに侵攻したのでした。
バイデンやヌーランドの狙いは「ドンバス征討作戦」を利用してロシアを戦争に引き込んで疲弊させることで、21年末頃からバイデンは盛んにプーチンを挑発しました。
その結果が現在の状況で、米国の目論見は完全に外れロシアは疲弊せずに、逆に召集されたウクライナの男性らは、兵士として勝利の見込みも正義もない中で死亡し、それを上回る人たちが負傷しています。
因みにフリーの国際情勢解説者田中宇氏はヌーランドについて、「自分ではウクライナを動かしてプーチンを潰して米国を勝たせる主役のつもりだったのだろうが、実際は正反対の、米欧ウクライナを自滅させてプーチンを勝たせる米上層部の隠れ多極主義者に騙されて動かされ、最後は権威を失って笑いものになるピエロ役にされている。米国の外交政策を決める場には、ピエロやピエロ使いがたくさんいる。・・・」と酷評しています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ウクライナでの大失敗における役割ゆえにヌーランドは首にされたのか?
マスコミに載らない海外記事 2024年3月 9日
マイク・ホイットニー 2024年3月6日
The Unz Review
ビクトリア・ヌーランドの退任は、ワシントンの主要外交政策プロジェクト失敗の自認だ。ヌーランドほどウクライナでの失態に関与していた政府高官はいない。2014年クーデターの際、現地活動で、彼女は業務のあらゆる手順を監督し、意志決定の一切を部下に任せないマイクロマネジメントをし、戦争が始まって以来、国務省の卑しむべき関与を監督してきた。何十万人ものウクライナ兵の不必要な死と、国の大部分の破壊をもたらしたNATOが支援する不運な惨事と、彼女の経歴は密接に結びついている。それゆえ、我々が自問する必要があるのは、ロシアとの勝ち目のない戦争にNATOを引きずり込もうとするヌーランドの執拗な策謀が、彼女が「お払い箱になる」つまり引退を発表した理由なのかどうかだ。以下は国務省公式報道声明の抜粋だ。
しかし外交官や外交政策の学生が今後何年にもわたって研究するのはウクライナに関するトリア(=ヌーランド)の指導力だ。プーチンのウクライナへの全面侵攻に立ち向かい、彼の戦略的失敗を確実にするため世界的連合を結集し、ウクライナが民主的、経済的、軍事的に強く立ち上がれる日に向けて取り組むのを助けるために彼女の努力は不可欠だった。ビクトリア・ヌーランド政治担当国務次官の退任について、アメリカ国務省 |
これは、ウクライナでの大失敗の責任を、もろヌーランドに負わせる、とんでもない段落だ。そう、彼女は、ロシアに対する代理戦争を遂行するための「グローバル連合をまとめる」上で重要な役割を演じたのと同様、プーチンと対決する動きを主導する上で「不可欠」だった。そして、この声明が我々に教えてくれるのは、ヌーランドは現在進行中の紛争の主要立案者の一人で、NATO指導者間の溝の拡大、戦場で増大する殺戮、そして主要地政学的ライバル、ロシアに対するアメリカの戦略的敗北に、彼女に大きな責任があることを意味する。要するに、ビクトリア・ヌーランドほどウクライナの泥沼に責任がある政府高官はいないのだ。
(ヌーランドは)在職期間中、6人の大統領と10人の国務長官の下での、35年の目覚ましい公務を勤めた。中国の広州に領事として初めて赴任して以来、ほとんど国務省でトリアは仕事をしてきた。政治担当官や経済担当官。報道官や首席補佐官。副次官補、次官補。特使や大使。 |
言い換えれば、ビクトリア・ヌーランドは、国務省全体で、最も知識豊富で、経験豊かな外交官の一人だが、それでも極端な危機の時期に、35年の経歴中、最大かつ最も重要な任務に彼女が失敗したため、連中は彼女を犠牲にしたのだ。連中はそう言っているのではあるまいか?
そうなのだ。ヌーランドのような好戦的ストリートファイターは、はっきり辞めろと命じられない限り決してタオルを投げることはないと100%確信できる。戦争に進展の兆しがあれば、彼女は仕事にしがみついていたかもしれないが進展の兆しはない。我々がこれまでに見たことのない絶望的で悲惨な状況だ。我々が話している間にも、ウクライナ前線は崩壊し、死者数は増え続けている。ウクライナは、火力で負け、要員数で負け、主導権を握られている。これは全くのミスマッチで、一年以上前にプーチンが予備役を招集して以来ずっと続いている。現在、若者が大挙して虐殺され、火薬と死の臭いがする泥だらけの塹壕で腐敗させられている。これら全ては終わりが近いことを示唆している。終わりが近づいたら誰かが責められなければなるまい。背中に標的を付けたヌーランドの登場だ。
ヌーランドは彼女に与えられるもの全てに値する。筋金入りのタカ派として、彼女は常に事実を拙速に扱い、半ば真実と、あからさまな捏造で戦争の正当性を立証し、再び必然的に屈辱的敗北に終わるだろう無意味な流血に国を突入させるつもりだった。彼女は願いを叶え、そして今、彼女は当然の報いを受けている。下記はヌーランドの偽引退に関し同様に好奇心を抱いているカレン・クフィアトコウスキーによる記事の一部だ。
彼女の辞任は、進行中のウクライナの国民国家としての崩壊や、次のクーデターでのゼレンスキーに差し迫る崩壊に関係しているのだろうか、それとも、もっと悪いことだろうか? 恐らくは出血を止めるため、近いうちに誰かがキエフで次のクーデターを計画しているが、今回は年老いたヴィックは招待されなかったのか。もしかしたら、CIAはついにウクライナで損切りをすると決定したのかもしれない。彼女の後任は、数年前の夏、アフガニスタンから最も素晴らしく良く計画された撤退を監督したジョン・バス元大使だ。沈没する船からネズミが逃げただけかも知れない。トーリは血まみれで腐敗したウクライナ-バイデン関係の主要人物だった。彼女の突然の離脱が、深海に飛び込む一匹の大きな厄介な殺人ネズミより、もっと重要な意味を持よう願っている。ネオコンの悪戯の他部分への道を彼女が切り開きますように。さよなら、ビクトリア! カレン・クフィアトコウスキー、ルー・ロックウェル |
ヌーランドと彼女の元同僚ジョン・ブレナンとヒラリー・クリントンは、ロシア憎悪を国教にまで高め、あらゆる場面でアメリカの評判を泥沼に引きずり込み、わが国の政治に有害な影響を与えた。タイム誌インタビューで、ヌーランドは大胆にこう発言した。
ウクライナが必要とする限り、我々はウクライナを支援する。ウクライナは国境内の全ての土地を取り戻すために戦っている。彼らの領土を取り戻すための次の厳しい攻勢準備を含め、我々は彼らを支援している...クリミアは、少なくとも非武装化されなければならない。 タイム誌 |
たわごと。このほら話をまだ信じている人がいるのだろうか?
「必要とするだけ」とは、おそらく更に10ヶ月から12ヶ月という意味だろう。それまでに、ワシントンは支援を撤回し、台湾に関心を移しているだろう。請け合う。
いずれにせよ、ヌーランド引退は決して自発的なものではないと我々は考える。彼女の怒鳴り散らすような言説や、プーチンを打ち負かすという空虚な約束をもはや信じない外交政策エリートに彼女は切られたと我々は考える。ヌーランドを排除することで、代理戦争は失敗し、別の戦略が必要だと連中は認めているのだ。そして政策変更でどうなるかはまだわからないが、ヌーランドがその実施に関与しないことはわかっている。
最後に一言。2024年2月22日、権威ある戦略国際問題研究所(CSIS)でのインタビューで、ヌーランドは下記質問を受けた。
「...(ウクライナへの追加資金を提供するため)議会が行動を起こさなない場合...プランBはあるのですか? どうやってウクライナ支援資金を得るか政権は考えていますか。議会が実際資金を配分することなしに、ウクライナ援助資金を得る方法はあるのですか? |
彼女の発言を聞かれただろうか? プランBはない。アメリカがロシアとの代理戦争で勝利するか、それとも何なのか? 混乱。ロシアによるウクライナ全土占拠? NATO解体? それとも?。
これは(インタビューに出席した)有力な外交政策エリートが聞きたがっている答えではない。彼等はウクライナが戦争に勝てないのを分かっている。全てが不確実な中、更なる資金、更なる兵力、更なる火力を得ない限り、ウクライナが成功する可能性が極めて低い事を知っている。彼らは国務省が、ロシアとの裏ルート交渉を招集していないことも知っているので、想像外の解決という可能性もない。そして今、彼女も同僚も戦争が予想通りにならない場合の予備計画を策定していないとヌーランドは語っている。プランBはないのだ。
これは信じられない。ヌーランドは、この上なく傲慢か、犯罪的に怠慢かのどちらかだ。いずれにせよ、なぜエリート権力者連中が、いらいらしたヌーランド女史を辞めさせる時が来たと判断したかも理解できる。
残念ながら「担当者を変える」ことは、必ずしも政策の根本的見直しを意味するわけではない。それでも、正しい方向への一歩ではある。アメリカの「無敵という雰囲気」が侵食され続け、道徳的権威が崩壊するにつれ(ガザ)、ワシントンは譲歩して、近隣諸国と「仲良くする」ことを余儀なくされるだろう。その日は急速に近づいている。
最後に、皆様がどうお考えであれヌーランドをお払い箱にするのは前向きな動きだ。この瞬間を満喫願いたい。
記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/was-nuland-fired-for-her-role-in-the-ukraine-debacle/