2024年3月23日土曜日

生活保護停止を取り消し 津地裁が賠償命令 三重・鈴鹿市 車使用認める

 生活保護を利用する親子が車の使用に関して運転記録票を提出しなかったことで生活保護停止されたのは違法だとして、鈴鹿市に対し停止処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が21日、津地裁でありました。地裁は停止処分を取り消し、同市に対し親子それぞれに損害賠償として10万円ずつ支払うよう命じました。

 かつてはエアコンが贅沢品だとしてその所持・使用を認めないという事例もありました。市は病院への通院以外には車の使用は認められないとして、買い物などに使用させないようにする目的で運転記録票の提出を求めたのですが、それは病弱の母子にとっては極めて苦痛を伴うものでした。
 弁護士は「車の保有が全国に7割を超えており、他の電化製品と同じように保有を認める時期だ」と訴えました
 母親は「長く長く感じた裁判もやっと判決が出た。早く帰って病室の息子に伝えたい」と安堵の表情を見せる一方、鈴鹿市に対しては「怒りしかなかった。人をぱかにしたような言葉を思い出すと腹立たしくて金銭だけで解決できる問題ではない」と話ました
 地方自治体の福祉担当部署が経済的弱者に対して冷酷な対応をしている人権侵害の様子は、「水際作戦」だけに留まっていないことが分かります。
  関連記事
   (3月14日生活保護「水際作戦」は桐生市だけじゃなかった・・・(東京新聞)
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
生活保護停止を取り消し 津地裁が賠償命令 三重・鈴鹿 日常生活の車使用認める
                       しんぶん赤旗 2024年3月33日



(写真)判決言い渡し後、地裁前で「勝訴」の旗が掲げられ、原告(右端)と握手して喜ぶ芦葉甫弁護士=21日、三重県津市



 三重県鈴鹿市で生活保護を利用する親子が、車の使用に関して、運転記録票を提出しなかったことで保護停止されたのは違法だとして、同市に対し、停止処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が21日、津地裁でありました。竹内浩史裁判長は、停止処分を取り消し、同市に対し、親子それぞれに損害賠償として10万円ずつ支払うよう命じました。

 親子は2019年8月から生活保護を利用し始めました。いずれも身体障害があり、長距離を歩くことが困難です。同市は、息子(56)の通院に限り車の使用を認め、運転記録票の提出を求めました。2人は、買い物などにも車を使用しました。同記録票は、行き先や経路、用件などを記入しなければならず、精神的な負担がありました。
 判決は、同市が車の使用を限定したことについて、母親の通院も必要であり「合理性があるとは言い難い」と指摘。加えて、運転記録票が距離や経路などの記載を求めている点について、「過剰であるとの疑いがある」と断じました
 また車の使用について、日常生活に不可欠な買い物など必要な範囲で使用することは「自立した生活を送ることに資する」と判断しました。

 母親(81)は、19年に膀胱(ぼうこう)がんを手術して以降、ストーマが必要です。息子は、定期的な投薬がなければ生命に危機が生じる状況です。
 判決は、こうした状況を踏まえ、保護の停止処分で親子が医療費の支出が困難になることは「容易に想定でき」、多大な不利益を与えるもので「違法だ」と結論付けました。
 原告代理人の芦葉甫(はじめ)弁護士は、判決が車を買い物に使っていいと認めたことなどを評価。得られた判決にそった運用が全国に波及するよう、「厚生労働省にも働きかけていきたい」と話しました。


車は生活に必要 「判決 全国に影響 鈴鹿市生活保護裁判 三重 津地裁
                       しんぶん赤旗 2024年3月33日
 三重県鈴鹿市で生活保護を利用する親子の車の保有をめぐる裁判での津地裁勝訴判決を受け、原告側支援者や弁護団が会見を開き、「地方での健康で文化的な最低限度の生活には車が必要」と訴えました

 原告側の芦葉甫弁護士が判決を解説し、親子が車の運行記録表を提出しなかったために鈴鹿市が生活保護を停止したことについて「権利の濫用で許されない」と判断されたことを説明。「原告が病院や買い物に行く必要性は明らかで車も当然必要」と強調しました。さらに鈴鹿市が、三重弁護士会による運行記録表の提出を人権侵害だとした勧告を真剣に検討していないことなども慰謝料として考慮されたと話しました。
 芦葉氏は、全国でも生活保護利用者に車の運行記録表の提出を求める自治体が相当数あることに言及し「判決は日本全国に影響がある。利用者と自治体の関係を考える上でもリーディングケースとなるのではないか」と話しました。
 馬場啓丞弁護士は、「判決は買い物など日常生活に不可欠な範囲で車を使うことは自立した生活に資するとしており、他の自治休にも影響を与える」と強調。「車の保有が全国に7割を超えており、他の電化製品と同じように保有を認める時期だ」と訴えました。
 原告の親子のうち、難病を患っている次男(56)は入院中で、判決や会見には母親(81)が参加しました。母親は「長く長く感じた裁判もやっと判決が出た。早く帰って病室の彼に伝えたい」と安堵(あんど)の表情を見せる一方、鈴鹿市に対しては「怒りしかなかった。人をぱかにしたような言葉を思い出すと腹立たしくて金銭だけで解決できる問題ではない」と話ました。