共産党の田村智子委員長は27日記者会見し、経済秘密保護法案は特定秘密保護法で防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に関して導入された機密情報を扱うために必要とされている「適性評価」の対象を経済分野、民間に拡大するものだと指摘し、「適性評価」として秘密を扱う人に行う身辺調査の中身は、病歴や借金の有無、交友関係や国籍など幅広く、その情報を政府が持ち続けることになるが、企業で働く人が身辺調査の情報によって不利益を被ることを防止する法的措置はなく、「重大な人権侵害を引き起こす憲法違反の法案だ」と強調し、「廃案にするしかない」と述べました。
日本弁護士連合会は27日、岸田政権が今国会に提出した経済秘密保護法案(重要経済安保情報保護法案)の危険性を告発する国会内集会を開きました。
日弁連副会長の斎藤裕弁護士は、人権侵害の恐れが極めて高い法案を政府・与党が拙速に進めようとしていると批判し、同秘密保護法・共謀罪法対策本部の三宅弘本部長代行は、適性評価のための調査で「公安調査庁や内閣情報調査室が諸外国の例にならえば数十万人の情報を取りまとめることにもなる」とし、監視社会につながる危険が高いとして反対を表明しました。
また28日の内閣委員会における同法案に関する参考人質疑では、法案は英仏ではコンフィデンシャル(極秘・国家秘密)級の秘密指定は廃止され、それを受けて米の情報監察局もコンフィデンシャル級の秘密指定の廃止を政府に勧告しているなかで、それに逆行するものであることが明らかにされたのに対して、「有識者会議」座長の渡部俊也東大学副学長はそういう認識を持っていなかったことが分かりました。
3つの記事を紹介します。
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人権侵害・憲法違反の経済秘密保護法案は廃案に
田村委員長が会見
しんぶん赤旗 2024年3月28日
日本共産党の田村智子委員長は27日、国会内で記者会見し、経済秘密保護法案は「重大な人権侵害を引き起こす憲法違反の法案だ。廃案にするしかない」と主張しました。
田村氏は同法案について、特定秘密保護法で防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に関して導入された機密情報を扱うために必要とされている「適性評価」(セキュリティークリアランス)の対象を経済分野、民間に拡大するものだと指摘。「民主主義の根幹にもかかわる重大な問題になる」と強調しました。
さらに、「適性評価」として秘密を扱う人に行う身辺調査の中身は、病歴や借金の有無、交友関係や国籍など幅広く、その情報を政府が持ち続けることになると指摘。企業で働く人が身辺調査の情報によって不利益を被ることを防止する法的措置はなく、「重大な人権侵害を引き起こす憲法違反の法案だ」と強調しました。
田村氏は、法案提出の背景に、岸田政権が長射程ミサイルの開発・量産や、共同開発した次期戦闘機を輸出する方針を決めるなど、武器開発や軍事研究を成長戦略に据えようとしている問題があると指摘。同日の日本弁護士連合会のシンポジウムでは、経済活動の国際標準への対応が必要だという同法案提出の口実について“人権保障がない法律を国際標準というのは詭弁(きべん)だ”と指摘されたことも紹介し、「何としても廃案にするために幅広い国民と連帯を広げていきたい」と表明しました。
経済秘密保護法案 日弁連が院内集会で告発 数十万人が調査対象
しんぶん赤旗 2024年3月28日
日本弁護士連合会は27日、岸田政権が今国会に提出した経済秘密保護法案(重要経済安保情報保護法案)の危険性を告発する国会内集会を開き、日本共産党をはじめ多くの国会議員が参加しました。数十万人規模の市民が安全保障の名でプライバシーを侵害される危険性が語られました。
法案は、2013年に成立した秘密保護法を経済分野に拡大するもの。政府が経済安全保障上重要だとした情報を秘密指定し、その情報に接触できる人物を「適性評価」で選別します。情報漏えいには5年以下の拘禁刑などの罰則が科されます。
日弁連副会長の斎藤裕弁護士は、人権侵害の恐れが極めて高い法案を政府・与党が拙速に進めようとしていると批判。同秘密保護法・共謀罪法対策本部の三宅弘本部長代行は、適性評価のための調査で「公安調査庁や内閣情報調査室が諸外国の例にならえば数十万人の情報を取りまとめることにもなる」とし、監視社会につながる危険が高いとして反対を表明しました。
京都大学の高山佳奈子教授は「研究機関を防衛産業の道具にしようとするもの」だと指摘。日本学術会議の任命拒否の当事者の一人でもある立命館大学の松宮孝明教授は、適性評価のための調査が首相名で行われることに触れ「学術会議法を守らなかったのが当時の内閣総理大臣だ。法を守らない政権に本法を与えてはならない」と訴えました。
日本共産党の塩川鉄也衆院議員、井上哲士、仁比聡平、山添拓の各参院議員が出席しました。
参考人質疑 : 経済秘密保護法案、時代錯誤的なものと指摘される
レイバーネット日本 2024-03-28
経済秘密保護法案を巡って、3月28日の参考人質疑で大きな動きがありました。法案の根本的な問題点が明らかになりました。コンフィデンシャル級の秘密指定は英仏で廃止され、米の情報監察局もコンフィデンシャル級の秘密指定の廃止を政府に勧告している。したがって、経済秘密保護法は英仏米の動向と整合しない。(海渡雄一)
参考人質疑 : 経済秘密保護法案、時代錯誤的なものと指摘される
本日、3月28日の内閣委員会における、経済秘密保護法案に関する参考人質疑において、重要なことが明らかになりました。本日の午前、衆議院の内閣委員会で参考人質疑が行われ、日弁連からは、斎藤裕副会長と三宅弘秘密保護法・共謀罪対策本部本部長代行のお二人も出席しました。
今回の経済秘密保護法案は重要経済安保関連情報であって漏洩によって著しい支障がある場合は特定秘密として扱い拘禁10年、支障がある場合には拘禁5年という二段階化し、秘密レベルを複層化する制度をとっています。
そして、欧米の制度と比較して、この著しい支障がある場合がトップシークレットとシークレット、支障がある場合がコンフィデンシャル(⇒極秘、国家機密)級であると説明されてきました。 ところが、斎藤裕日弁連副会長の参考人公述の中で、すでにイギリスとフランスでは、confidentialという秘密レベルは廃止されており、日本の同盟国であるアメリカにおいても、イギリスとフランスの決定を受けて、2022年の情報保全監察局(ISOO)レポートにおける大統領あての提言において、confidentialという秘密レベルの廃止を提言していること、政府の提案は、英仏米の動向とも整合しない、時代錯誤的なものではないかとの重大な指摘がなされました。ISOOのレポートは以下からダウンロードできます。
https://www.archives.gov/.../isoo-2022-annual-report-to
この指摘を受けて、共産党の塩川議員、れいわ新選組の大石議員から、斎藤委員の指摘を踏まえて、「経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス制度等に関する有識者会議」の座長を務められた渡部俊也東京大学副学長は、政府の対応が英仏米の動向と整合しているかについて問われ、法制度の合理性について説明ができませんでした。法案の根幹にかかわる問題点が明らかになったといえます。
以下、勧告の該当部分を翻訳して掲載することとします。
「2023年度以降のISOO主要提言
1. 2022年6月2日、国家安全保障会議(NSC)スタッフは、各省庁に対して次のような覚書を発表した。
この覚書は、行政府が機密情報を作成・管理する多くの方法を見直し、更新し、合理化することを目的としたものである。 この覚書は、行政府が機密情報および管理された非機密情報を作成、管理するためのさまざまな方法を見直し、更新し、合理化することを目的としている。
この覚書は、行政府が機密情報や非機密情報を作成・管理する多くの方法を見直し、合理化することを目的としている。国家安全保障にとって、この覚書は絶対に不可欠である。 この覚書の目標が達成されることは、われわれの国家安全保障にとって絶対に不可欠である。
2. この覚書の最も重要な改革の中心は、E.O. 13526である。
このE.O.13526は、行政府が国家安全保障情報をどのように分類・機密解除するかを規定するものである。 私は昨年、年次報告書でこの大統領令にいくつかの変更を勧告したが、今年の報告書でも同じ変更を勧告する。 これらには以下が含まれる: a. confidentialレベルの分類を廃止することで、サイバーセキュリティ領域に対する我々のアプローチや、最も親密な同盟国の多くが採用している2段階の分類システムと、分類レベルをより密接に整合させる」
この勧告は大統領に対する最重要の勧告として位置づけられているものです。日本政府の策定した法案が、周回遅れの時代錯誤的なものであることが明らかになりました。法案の根本的な見直しが必須となったと言えます。広くこの事実を広めていただきたいと思います。野党の中にも、国会の関与を定める微修正だけで法案に賛成しようとする動きがあります。心あるみなさんから、お知り合いの国会議員に、慎重に審議してほしいという一言でよいので、お声掛けいただくようお願いします。