シリアのイラン大使館が4月1日にイスラエルに爆撃されたことに対しイランは14日にに限定的な報復攻撃をしました。それに対してイスラエルは19日にイランのイスファハンなどを空爆で「限定的に」報復しました。
14日のイランのミサイル攻撃をイスラエルは99%ミサイルで撃墜したとしていますが、実際はそうではなくかなりのダメージを受けたようです。そもそも迎撃率99%は元々あり得ない数字です。
かつての中東戦争ではイランを含めた中東諸国はイスラエルの敵ではありませんでしたが、今では少なくともイスラエルにとって対等の軍事大国になりイスラエルをミサイル攻撃で翻弄しました。
何よりも節度を知らないイスラエルが19日のイラン攻撃を「限定的に」留めたことがそのことを証明しています。
櫻井ジャーナルの記事とマスコミに載らない海外記事を紹介します。
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イスラエルの好戦的大臣もイランに対する攻撃が効果的でなかったことを認めた
櫻井ジャーナル 2024.04.21
イスラエルのイタマール・ベン-グビル国家安全保障大臣は4月19日、イランに対するイスラエル軍の「報復」についてXで「カカシ(弱い、失望した等々の意味のスラング)」と書き込んだ。
イスファハーンの軍事基地などに対する攻撃は形だけで、ベン-グビルのような好戦的人物がこのように感じるのは当然だろうが、その感情を公にしたことが批判されている。「無敵のイスラエル」というイメージを壊す発言だからだ。ドローンのほか中距離ミサイル「スパロー」の改良型が使われたようだが、基地はダメージを受けていない。大半が撃墜されたようだ。
これは4月13日にイランが行ったイスラエルに対する攻撃への報復なのだが、それはイスラエル軍が4月1日にダマスカスのイラン総領事館を攻撃してイスラム革命防衛隊(IRGC)幹部を殺害したことに対する報復だ。
13日にイラン軍はネバティム空軍基地、ラモン空軍基地、そしてハルケレン山頂にある「サイト512」基地のAN/TPY-2 Xバンドレーダー施設を攻撃しているが、その72時間前、イランの友好国や隣国に対してイスラエルへの攻撃を警告、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などからイスラエルやアメリカにも伝わっていたはずだ。
攻撃には極超音速ミサイルが使われたという話が当初、イランから流れていたが、実際は使われていないという。古いタイプのドローンや中長距離ミサイルが使われたようだ。ミサイルに限定すると発射数は50から60機。イスラエルはGPS妨害を行ったようだが、ジャイロスコープやコンピュータなどの内蔵誘導システムを利用した「慣性誘導システム」が使われているため効果はなかった。しかもネバティム基地やラモン基地など目標をこのシステムで正確に捉え、前者には5機、後者には4機が命中したと見られている。
使われたミサイルのひとつであるガドルは20年前のタイプで、イスラエル軍の防空ミサイルを浪費させるためにデコイ(⇒オトリ)弾頭を搭載、10年ほど前に作られたエマドは宇宙空間でインフレータブル・デコイ(⇒風船型のオトリ)を放出してイスラエル側を翻弄した。イスラエルの防空能力は高くないことが明らかにされたとも言える。
イスラエル・アメリカ関係の様々な神話やストレスを粉砕したイランの無人機攻撃
マスコミに載らない海外記事 2024年4月19日
マーティン・ジェイ 2024年4月14日
Strategic Culture Foundation
イランの無人機攻撃でパンドラの箱が開いたが、バイデンは開けたくなかったはずだ
欧米の専門家連中にとって皮肉なことだが、常に冷静さを保ち、エスカレーションの餌に乗らないのは東側で、無鉄砲で無謀で挑発に対して不用意なのは欧米だ。これに伴うNATOの誤算と不適切な決定以外、ウクライナで我々は何も見ていない。しかも驚くべきことに、今イスラエルで我々はこれを目の当たりにしており、イスラエルにとって30年以上の夢だったイスラエル・イラン間の地域戦争に、今ジョー・バイデンが、まんまと巻き込まれている。
ダマスカスの総領事館爆破に対するイランの反応は非常に慎重で、よく考え抜かれており、イスラエルやアメリカが到底かなわない冷静さでやってのけた。テヘラン(⇒イランの首都)は民間人を殺害するつもりはなく、単にイスラエルは超えてはならない一線を越えたぞ、再び同じことをすれば、安価な無人機よりも大きな影響を与える大陸間ミサイル攻撃でイランによる攻撃は更に増えるぞというというメッセージを送っただけだ。だからといってドローンが効果的ではなかったわけではない。ドローンのほとんどが迎撃されるのを十分に承知の上で、イラン人が望んでいた特定任務を果たしたのだ。
しかし依然多くの欧米専門家にとって、イラン政府の動きは衝撃で、一晩で多くの通説を粉砕したため、ネタニヤフの徒党にも衝撃を与えたのは確実だ。第一に、多くの専門家連中は何も考えずに、この可能性を無視していたが、イスラエルを直接爆撃する勇気がイランにはあるのだ。イスラエルで民間人を殺害する可能性があるミサイルをイランが使用する覚悟がある事実は、たとえシリア領であれ、イラン軍兵士に激しい爆撃をイスラエルが続けた場合、報復がどうなるか、もはや推測できないため、今や力関係を変えた。
第二に、イスラエルには複数戦線で戦争に取り組む能力があるという通説も覆された。イスラエル軍が多忙な夜、一切砲撃もなく、ガザ住民は平和な夜を満喫し、ソーシャルメディアで緊張緩和を祝った。ガザでの戦争だけでなく、大規模無人機攻撃などの第二戦線での戦争、ましてや必要に応じてレバノンのヒズボラと第三戦線で戦う能力はイスラエル軍にない。
そして第三に、パートナーの役割だ。ヨルダンのアブドラ国王の支援はもちろん、無人機を撃墜したイギリス空軍戦闘機などのパートナーによる支援がなければ、一晩中99パーセントと主張する命中率を、イスラエルは達成できなかったはずだ。アメリカとともに、これら関係が試されて、限界を超えた場合、イスラエルの脆弱性は、控えめに言っても議論の余地があるものになる。
従って、欧米同盟諸国と良好な関係を維持するだけでなく、現実的にゲームに残るためにも、今後数日間で、どんなカードをネタニヤフ首相が切るのかはイスラエルにとって重要だ。イランの無人機攻撃によって、バイデンが開けたくなかったはずのパンドラの箱が開いてしまった。状況が制御不能になるのを恐れて、今すぐ引き下がり、イランを放っておくよう、ネタニヤフ首相にバイデンが指示したと一部報道では伝えられている。アフガニスタン撤退や、ロシアが必然的に勝利し、彼やNATOが屈辱を味わうことになるウクライナでの戦争を開始し、今度はイランとの世界戦争開始を列挙した外交政策カンニングペーパーを携えて、今年12月、バイデンは本気で選挙にいどめるだろうか? ネタニヤフは大きな賭けに出て、イランやその代理勢力に対する報復攻撃を抑えることはできないだろうと経験豊富な専門家連中は大胆に予想している。もちろん、これはアメリカとの関係を試し、限界ぎりぎりまで押し上げることになるだろうが、ネタニヤフ首相がこのような行為を実行しないようバイデンは強く望んでいる。これにより、バイデンとネタニヤフの関係はほぼ確実に限界点に達し、どちらにせよイランが勝利することを考えると、このドローン攻撃を、テヘランにとっての大勝利と欧米専門家のほとんどが見なさなかったのか理解するのは困難だ。バイデンが弱く、今や中東での戦争挑発という迷路に迷い込ませるのが、ネタニヤフ首相の作戦だろう。ワシントンのタカ派に対し、バイデンは勝利者としての自分を示す必要があるが、選択肢がなくなり、合理的思考の余地がもはやなくなっているように見えるため、これまで以上にバイデンは窮地に陥っているとネタニヤフは考えている。バイデンのネタニヤフ悪夢は始まったばかりだ。
記事原文のurl:https://strategic-culture.su/news/2024/04/14/iran-drone-strike-busts-number-if-myths-and-strains-israel-us-relations/