2024年4月1日月曜日

加速する米軍と自衛隊の一体化 アメリカの戦争に引き込まれる恐れは

 集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法が施行されてから29日で8年になりました。
 4月の日米首脳会談では米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化で合意する方針ですが、そうなれば、自衛隊の指揮権の独立性が損なわれ米国の軍事行動に巻き込まれる恐れは更に大きくなります。米国には圧倒的な軍事力と情報収集力があるのですから、日米の軍事的な一体化が進めば進むほど、有事の際に日本が主体性を発揮しにくくなるのは明らかです。
 そもそも航続距離が極めて長く爆薬積載量も莫大な米国製巡航ミサイル・トマホークを日本が400発も所有するというのは戦争を放棄した国としてあるまじき行為で、何よりもその運用において上記の懸念が具体化されるわけです。
 東京新聞が掲題の記事を出しました。
 併せて同紙の関連記事「『ウクライナは、あすの東アジア 危機感あおって防衛力強化を正当化する岸田首相、侵攻2年で日本も変わった」を紹介します。岸田政権の軍国主義指向は留まるところを知りません。
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加速する米軍と自衛隊の一体化 アメリカの戦争に引き込まれる恐れは 安全保障関連法施行8年
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 集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法が施行されてから29日で8年となった。自衛隊幹部が米国製巡航ミサイル「トマホーク」を米軍と情報共有して敵基地攻撃に使う可能性に言及するなど軍事的な一体化は加速。4月の日米首脳会談では米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化で合意する方針だが、強大な米軍の影響力で自衛隊の指揮権の独立性が損なわれ、日本が米国の軍事行動に巻き込まれる懸念は消えない。(川田篤志)

◆海自トップ「トマホークで日米連携攻撃も可能」
 海上自衛隊トップの酒井良海上幕僚長は26日の記者会見で「日米がそれぞれのトマホークで同じ目標に攻撃を行うことはシステム上は可能だ」と表明。「実施するかどうかはその時の戦術判断による」と強調した。
 岸田政権は2022年末に改定した国家安保戦略で敵基地攻撃能力の保有を決めるなど、16年3月に安倍政権で施行された安保法を受けた防衛政策の転換を次々と進める。「存立危機事態」になった際、集団的自衛権の行使で自衛隊が敵基地攻撃を行う可能性があり、日米が協調したトマホークの運用も想定される。

 制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長も28日の会見で「トマホークはもともと米軍の装備なので、さまざまな形で日米連携が行われていく」と指摘する。日本は米国からトマホーク(射程1600キロ以上)を最大400発購入することを決めており、25~27年度にかけて順次納入される
 在日米軍は25~29日、米海軍横須賀基地で海自の隊員らに対し、トマホークの実戦配備に向けた初めての教育訓練を実施。トマホークの運用に必要な座学研修や、米艦艇での実戦を想定した訓練を行った。今後も2カ月ごとに日米で訓練を行い、運用に習熟した隊員を増やしていくという。

◆岸田首相は「独立した指揮系統」を強調するけれど
 木原稔防衛相は29日の会見で米軍の支援を歓迎し、安保法施行に伴い「日米同盟はかつてないほど強固となり、抑止力、対処力は向上した」と主張した。
 だが、米国がサイバーや衛星などを含め圧倒的な軍事力と情報収集力を誇る中、日米の軍事的な一体化が進めば進むほど、有事の際に日本が主体性を発揮しにくくなり、米国の意向に左右される側面は否定できない。トマホークの発射でも、日本が狙う相手国の軍事拠点の選定などで米軍の能力に頼らざるを得ない
 岸田文雄首相は4月のバイデン米大統領との会談で、敵基地攻撃能力の保有を踏まえ、日米の共同対処能力の向上に向け、米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化で一致する見通しだ。
 首相は「自衛隊と米軍は独立した指揮系統に従って行動する」と繰り返すが、共同作戦計画などで一体的な運用がさらに強まるのは確実だ。日本が独立した指揮系統を維持できるのか、米国の軍事行動に組み込まれる事態は想定されないのか、疑問は尽きない


「ウクライナは、あすの東アジア」危機感あおって防衛力強化を正当化する岸田首相、侵攻2年で日本も変わった
                         東京新聞 2024年2月24日
 ロシアによるウクライナ侵攻後、岸田文雄首相は、軍備増強を続ける中国や核・ミサイル開発を強行する北朝鮮を念頭に、東アジアでも同様の事態が起こる恐れを繰り返し強調してきた。危機感をあおって防衛力強化の必要性を訴え、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の倍増を推し進めるなど防衛政策を大きく転換させた。 (川田篤志、我那覇圭)

◆中国や北朝鮮をロシアに重ね合わせる首相
 首相はウクライナ侵攻から4カ月後の2022年6月、アジア安全保障会議や北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で「ウクライナは明日の東アジアかもしれない。そうした事態を防ぎ、自らを守るため抑止力と対処力の強化が必要だ」と主張した。力による一方的な現状変更を試みるロシアと、海洋進出を図る中国や北朝鮮を重ね合わせることで、防衛力強化を正当化しようとする思惑がにじんだ。
 防衛省はウクライナが侵略された理由について「十分な防衛力を持たず、高い軍事力を持つロシアを抑止できなかった」と分析。日本も周辺国に「日本への侵攻は困難と思わせる防衛力を備える必要がある」との理屈を持ち出し、戦後の安保政策の大転換となる敵基地攻撃能力の保有や防衛費の倍増につなげた。
 日本は戦後、憲法9条に基づく平和国家として、国際紛争を助長しないため、武器輸出に抑制的な姿勢を示してきたが、その立ち位置も一変している。

◆変わった武器輸出ルール、なし崩し的な拡大も
 侵攻から1カ月後、交戦中のウクライナに対しても自衛隊の防弾チョッキなどを供与できるようルールを急きょ改定した。だが、自民党内では、それでは不十分として「欧米のような軍事支援をしなければ、日本が他国に攻撃された時に助けてもらえなくなる」とルールの大幅な緩和を求める声が高まった。
 政府は昨年12月、武器輸出ルールを約10年ぶりに抜本改定し、これまで国際共同開発品を除き禁じられていた殺傷能力のある武器の輸出も条件付きで可能にした。ウクライナへの軍事支援で武器・弾薬の在庫不足に悩む米政府の要請を受けて自衛隊が保有する迎撃ミサイル「パトリオット」の対米輸出も矢継ぎ早に決定した。

 日本が米国の在庫を補完し、米国のウクライナへの武器・弾薬の供与を後押しする形となり、他国には日本によるウクライナへの間接的な軍事支援と映る懸念がある。武器輸出のなし崩し的な拡大は国際紛争の助長にもつながりかねない。