2024年4月6日土曜日

陸自靖国参拝やっぱり公務 黒塗り文書の文面明かに/靖国神社がキナくさい

 陸上自衛隊幹部による靖国神社への集団参拝を「私的」参拝とする防衛省の調査結果について、日本共産党の穀田恵二議員は3日の衆院外務委員会で、独自入手した文書を示し、参拝が「公務」として計画されたことを裏付けました。
 そして「この事実を隠し、私的参拝だったなどと国会と国民を欺く調査結果を公表した木原稔防衛相、防衛省の責任は極めて重い」と批判しました。しんぶん赤旗が報じました。

 併せて護憲の弁護士 澤藤統一郎氏が靖国神社と天皇・軍部との関係を明らかにしたブログ「靖国神社がキナくさい ~自衛隊と靖国の直接の関係がクローズアップされている~」を紹介します。
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陸自靖国参拝やっぱり公務 黒塗り文書 作成は装備計画部
                        しんぶん赤旗 2024年4月4日
穀田氏追及
 陸上自衛隊幹部による靖国神社への集団参拝を「私的」参拝とする防衛省の調査結果について、日本共産党の穀田恵二議員は3日の衆院外務委員会で、独自入手した文書を示し、参拝が「公務」として計画されたことを裏付けました

 陸上幕僚監部の小林弘樹副長(当時)らは1月の参拝にあたり、「実施計画」を作成。防衛省は穀田氏からの開示要求に対し、一部を黒塗りしたものを提出していました。今回、穀田氏が入手した文書は、黒塗りがない原本の写しで、「装備計画部」と部署名が明記されたものです。(写真)
 穀田氏は「この記載からも、実施計画は『私的文書として作成されたもの』ではなく、装備計画部が公務として作成したのは明らかだ」と追及。鬼木誠防衛副大臣は、「(担当者が)所属部署を便宜的に記載したもの」と答えました。
 穀田氏は、「この事実を隠し、私的参拝だったなどと国会と国民を欺く調査結果を公表した木原稔防衛相、防衛省の責任は極めて重い」と批判しました。
 さらに穀田氏は、陸上幕僚監部が内局の人事教育局からの聴取をまとめた「私的参拝」とするための6要件(表)を提示。穀田氏は「この文書からも、小林副長らは、私的参拝の要件を満たさない、『部隊参拝』を禁じた事務次官通達に違反することを十分認識した上で参拝したということだ」と述べ、調査結果の撤回、やり直しを求めました。

図

(写真)穀田恵二衆院議員が入手した1月の小林弘樹陸幕副長(当時)らの靖国神社参拝の「実施計画」(上)。日付の下には「装備計画部」と明記されています。防衛省が穀田議員に開示した「自衛官の参列に関する根拠等」をまとめた内部資料(下)。「私人としての参列については、以下の要件を満たす必要がある」と6要件をあげています。



靖国神社がキナくさい 自衛隊と靖国の直接の関係がクローズアップされている
                    澤藤統一郎の憲法日記 2024年3月31日
(タイトルの全文)
靖国神社がキナくさい。これまでは、安倍晋三だの高市早苗なんぞの右翼政治家と靖国との関係が警戒の対象だった。ところがこのところ、自衛隊と靖国の直接の関係がクローズアップされている。これは危うい。権力中枢が、本気になって戦時を想定しているということなのだから。

明日、靖国神社の宮司が交代する。新任の宮司は、自衛隊元海将の大塚海夫。元自衛隊幹部が靖国のトップに就任することの意味は小さくない。なお、10人いる崇敬者総代のうち、2人が自衛隊幕僚長級の元幹部だという。このところ、自衛隊の集団参拝も報じられている。靖国と自衛隊。相寄る魂のごとくであるが、元来が禁じられた仲なのだ。

今年2月発行の靖国神社「社報」に大塚新宮司の寄稿が掲載されているという。この人は現職の自衛官時代に靖国神社奉賛会に入会しており、「国防という点で英霊の御心を最も理解できるはずの我々こそが」「その思いを受け継ぎ、日本の平和のために尽力すべき」と述べているそうだ。この新宮司の発言、これは危ない

靖国は、天皇のために命を捨てた皇軍の将兵を、天皇への忠誠故に顕彰する目的で、天皇の発意によって創建された宗教的軍事施設である。当初は内戦における天皇軍の戦死者を祀り、内戦が終わってからは対外的侵略戦争の戦死者を護国の神として祀る神社と性格を変えた。皇軍の戦死者は天皇の勅によって祭神となって合祀される。合祀の儀式である臨時大祭には、大元帥としての軍服をまとった天皇が必ず親拝した。靖国の宮司は陸海軍の最高幹部が務め、その境内は陸海軍が警固した
ことほどさように、靖国とは徹頭徹尾天皇の神社であり、軍国神社である。神社であるからには宗教施設であるが、その宗教を何と呼称するかは微妙な問題。「国家神道」という表現は分かりにい。天皇を神とも祭司ともする、「天皇教」というネーミングが分かりやすい。天皇教は、明治政府が拵えあげた新興宗教にほかならない。もちろん、鍛え抜かれたマインドコントロール手法を誇ったカルトである。

理性をもっている人間を戦争に引き込むのは難事である。その理性を捨てさせる手段の一つとしてこのカルトがつくられ、国民を洗脳して戦争に総動員した。天皇教の教団は、全国の学校に訓導(教師)という布教師を配して、こう教えた。
「おまえの命など取るに足りない。天皇に絶対随順して命を捨てることこそ臣民の道であり、永遠の大義に生きることなのだ」「つまらないおまえでも、戦地で死ねば、天皇陛下によって靖国に祀っていただく名誉に浴することができる」「靖国に祀っていただけるのだから、笑って死ね」
信者に対して、財産だけでなく命をも捨てよと求める、これこそ究極のカルトである。恐るべきは、20世紀の中葉まで、このマインドコントロールが成功したことである。こうして、240万もの将兵が戦死して靖国の英霊となった。
新しい宮司の先の「靖国」への寄稿は、「国防という点で英霊の御心を最も理解できるわれわれ自衛隊員こそが、天皇のために命を捧げて英霊となった旧軍人の尊い思いを受け継ぎ、日本の平和を守るための強力な軍隊を作り国防精神を昂揚すべく力を尽くさねばならない」との誓いと読める。
軍隊でも戦力でもないはずの自衛隊が、天皇の軍隊である旧軍にかくも親近感をもち、かくも精神的な一体感をもっていたのかと、驚愕せざるを得ない。

79年前の夏、敗戦によって大日本帝国は消滅した。神権天皇も、陸海軍を統帥する大元帥としての天皇もなくなり、陸海軍も解散した。しかし、天皇制は清算されることなく残った。陸海軍の付属施設だった靖国神社も宗教法人として生き延びた。そして、さほどの時を経ることなく自衛隊が創設された。戦前の残滓の跳梁に警戒を要する事態となって、現在に至っている。
戦争の惨禍を経て、その反省の内に日本国憲法の原理に貫かれた、平和な民主主義国家が誕生した。しかし、面倒なことに、象徴天皇という異物が生き残り、宗教法人靖国神社制も残り、旧軍に似た自衛隊が誕生して、靖国と天皇、靖国と自衛隊の癒着に警戒しなければならない事態が生じているのだ。
戦前のままの精神構造をもった守旧派連中は、靖国の国家護持を求める運動を起こしたが挫折し、次に靖国神社への天皇・内閣総理大臣・国賓等の公式参拝要請運動を展開した。憲法改正運動と並ぶ、右翼・保守派の悲願となって今日に至っている
靖国をめぐっては、永く保守とリベラルが反目を続けてきた。そして、ずいぶんの昔から、リベラルの運動体内部では、「靖国問題の本質は反戦にある。将来、戦争が近づけば靖国問題が喫緊の重要課題となる。戦死者をどう葬るべきかが浮上するからだ」と言ってきた。つまりは、ながらく「将来」の問題だった。
それが今、リアリティをもって語らなければならない事態となったということではないのか。自衛隊が戦争参加を覚悟すれば、戦死者をどのように葬り、追悼し、顕彰すべきか、その問題に直面せざるを得ないのだ。このところ急ピッチで報じられる、自衛隊と靖国との接触は、その新たな危険な事態の兆しと見なければなるまい