2024年4月17日水曜日

岸田国賓待遇訪米 とてつもない代償/賃上げ効果を信じれば1兆円詐欺のいいカモに

 米国との「グローバル・パートナーシップ」とは、米国が行う世界のあらゆる領域での紛争戦争に日本も参加するということで、岸田首相がそれを得意満面に口にしたのは、日本もそこまで格上げされたという意識からなのでしょうが、憲法との不整合は愚か何もかもズレまくっています。

 米国が第2次世界大戦後に唯一の超大国となったのは、本土に全く戦火が及ばなかったからでした。米国はいま「台湾有事」を口にし、「インド・太平洋」での中国の独善的な行動に対し関係国に中国に対抗する連合結成を呼びかけています。そこで戦乱を起こすことで、米国だけが無傷で残るという、「夢よもう一度」を狙っているからだという見方があります。  ⇒「No. 2114 米国は南シナ海で危険なゲームをしている(耕助のブログ)

 原著者のアマウド・バートランドはそこで「米国は、第二次世界大戦のようなシナリオ、つまり世界中が火の海になって、米国はその非常に有利な地理的条件の恩恵を享受することになるというのをもう一度やりたいと思っているのではないか」ということを真剣に自問する必要があると述べています。
 東大名誉教授の高橋哲哉氏今の世界情勢について、「米国は位置的に真ん中にいて、左右に対立するロシア、中国・北朝鮮を抱えているが、距離は隔てていることがわかる。グローバル・パートナーシップとか言って、アメリカは直接の対決を避け、近隣国に代理戦争をやらせているわけです」と述べています。
 もしも台湾有事が起きれば、戦端を切るまでは米国が主導しますが、その後は日本が中国との交戦国となって、中国も一定程度傷つきますが日本はほぼ灰燼に帰すことになります。
 「米国から褒められたい一心」だけで振る舞うのではそうした帰趨になるということで、決してリーダーの取るべき道ではありません。
 併せて日刊ゲンダイのもう一つの記事:「賃上げ効果を信じれば1兆円詐欺のいいカモ」を紹介します。
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よくも意気揚々と帰国できたものだ 岸田国賓待遇訪米 とてつもない代償
                         日刊ゲンダイ 2024/04/15
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 世界はいま、第5次中東戦争危機にさらされている。シリアの首都、ダマスカスにあるイラン大使館周辺がミサイル攻撃され、7人が死亡した一件は、イスラエルの仕業とみたイランが報復を宣言。イランの革命防衛隊は13日(現地時間)にイスラエルの特定目標にミサイルやドローンで攻撃を加えたことを発表した。
 国連安保理はすべての関係者に自制を求め、日本政府はイスラエル在住の邦人に慌てて注意喚起をしているが、こんなときにとんでもない約束をしてきたのが、岸田首相だ。

 国賓待遇訪米で舞い上がり、日米同盟をインド太平洋地域だけでなく、世界のあらゆる領域・レベルで協働する「グローバル・パートナーシップ」に“格上げ”してきた。そのために、日米の“軍事同盟”をさらに強化、米軍と自衛隊の指揮統制の連携を深め、あらゆる面で一体化を進めていこうとしている。世界中で戦争や紛争が起こり、米国もお手上げ状況なのに、日本は「一緒にやりますよ」とばかりに全面協力を申し入れたのも同然なのだ。
 そんなことをいつ、国民は頼んだのか。どこで議論して決めたのか。その見返りが国賓晩餐会であり、岸田がリクエストしたとかいう、ポール・サイモンの歌だったのか。支持率1割台首相の憲法破壊には言葉を失うばかりだ。

すべては米国から「褒められたい」一心
 東大名誉教授で哲学者の高橋哲哉氏は今の世界情勢をこう見ている。
 「世界地図の中央にアメリカをイメージしてください。右側には大西洋があり、その先にヨーロッパがある。そのヨーロッパはロシアと対立し、ウクライナが最前線になっている。その南にはイスラエルがあり、イランと対立している。一方、アメリカの左側に目を転じると、太平洋があり、その先に日本、韓国、台湾があり、中国、北朝鮮と対立している。こうしてみると、米国は真ん中にいて、左右に対立するロシア、中国・北朝鮮を抱えているが、距離は隔てていることがわかる。グローバル・パートナーシップとか言って、アメリカは直接の対決を避け、近隣国に代理戦争をやらせているわけです」
 くしくも岸田はウクライナを見て、「明日の東アジアかもしれない」と危機感をあおった。しかし、決定的に違うのは、ウクライナは攻められたのに対し、日本は攻められてもいないのに自ら「代理戦争」のお先棒を担ごうとしていることだ。

 米国言われるままに、中国との外交努力を放棄。覇権主義への批判に明け暮れ、対立をあおり、有事の際には自ら橋頭堡になろうとするこうした言動のどこに国益があるのか。すべては首相が米国から「褒められたい」一心なのではないか。
 そうして、ついには、インド・太平洋にとどまらない協力を申し出て、日米安保を歴史的大変質させたのが、今度の国賓待遇訪米なのである。バイデンは自衛隊と米軍の統制向上を指して、「日米同盟は全世界の道しるべになる」と言った。国民は目を白黒させている。

第3次大戦前夜にあり得ないような無神経
 今度の首脳会談では、他にも聞き捨てならないセリフがいくつもあった。バイデンが言った「日米は過去3年間で真にグローバルなパートナーシップに変貌を遂げた」というのもそのひとつだ。
 岸田が首相に就任してから2年半。この間、岸田はNATOの首脳会議に出席したほか、安保3文書を決定、敵基地攻撃能力を認め、防衛費のGDP比倍増や、その財源を増税で賄うことも閣議決定、トマホークの爆買いなども決めている。
 2023年3月にはウクライナを電撃訪問、5月の広島サミットにはゼレンスキー大統領を招待したのも記憶に新しい。こういうところばかりに血道を上げてきたのが岸田なのだが、言うまでもなく、ロシアとウクライナの戦争は日本にとって遠い国の話だ。
 インド、ブラジルなどグローバルサウスの国々はしたたかにロシアとの対立先鋭化を避けていた。にもかかわらず、東アジアの岸田がNATOに首を突っ込み、ウクライナの戦争にのめり込んでいったのである。
 一体、この男は誰のために仕事をしているのか。平和憲法を誇りにする国の首相なのか。挙げ句が自衛隊と米軍の指揮統制強化、武器の共同開発と生産、米英豪との軍事協力、日米豪のミサイルネットワーク構築など、世界規模の軍事同盟の“仲間入り”なのである。前出の高橋哲哉氏が言う。
「岸田首相のこうした言動に何か戦略、思想があるのでしょうか。何も考えずにアメリカについていっているだけで、中身があるようには見えません。いま世界を見渡せば、第3次世界大戦前夜のような緊張感が漂っています。あちこちで緊張、対立、戦闘が繰り広げられているし、その背景には帝国主義、植民地主義、反ユダヤ主義、極右の台頭など、第2次世界大戦前と似たような状況が見て取れます。そんな中、NATOや米国は日本を軍事同盟に引き込み、NATOの東アジア事務所にしたいのでしょう。それにホイホイ乗ることが国益なのか。また、その議論が国民の間で共有されているのか。ロシアや中国についていくよりマシと思っているのかもしれないが、米国についていくだけの属国になれば、矢継ぎ早にミサイル配備を進める南西諸島など沖縄が戦場になることも覚悟しなければいけません」

国民が気づいたときはもう遅い
 国民はいざとなれば、「政権を引きずりおろせばいい」「日本は民主主義の国だ」とタカをくくっているのかもしれないが、大きな誤解だ。
 防衛ジャーナリストの半田滋氏は今度の首脳会談の危うさをこう指摘する。
「共同声明にうたわれた“米軍・自衛隊の指揮統制の枠組み向上”について、指揮系統が一体化するのではないか、という疑問が出ていますが当然です。岸田首相や林官房長官は“それぞれ独立している”と型通りの答弁をしていますが、いざ敵基地攻撃をやるにしても日本側には何の情報もないのです。米軍からいつ、どこを撃て、という情報がもたらされなければ何もできない。アメリカにとって都合の悪い情報は教えてもらえないので、独自の作戦なんて無理なのです。どう考えても、自衛隊は米軍の道具になるしかなく、今度の共同声明で恒久的な従属関係が完成したと思いました」
 すでに法制面では、存立危機事態に認定されれば、米国の戦争に日本は自動参戦する安保法制が成立している。そこで米軍が「撃て」と言えば「戦争は嫌です」なんて言えっこない。その領域も今度の声明でインド・太平洋に限らなくなった。世の中、世界大戦前夜なのに、なんてことをしてくれたのか。それがマトモな国民の実感だ。
 それなのに、岸田は意気揚々と帰国した。米議会の上下両院での演説では「日本の国会では、こんなすてきな拍手をうけることはない」などと軽口をたたき、記者団には「日米両国がグローバル・パートナーとして連携していく重要性を発信することができた」と喜々としていた。国内で袋叩きの岸田にしてみれば、バイデンに気に入られることがすべてなのだろう。保身のために自衛隊を差し出し、沖縄を最前線にしても平気の平左。あり得ないような神経の持ち主だ
「国内報道ではトランプ返り咲きも見越して、共同声明に米国との関係強化を盛り込んだことを成果とする見方もありましたが、トランプなんていつチャブ台返しをするかわからない。むしろ、日本が進んで自らの手足を縛るだけだと思います。岸田首相はこれまでも安全保障上の重大転換を閣議決定だけで決めてきた。その延長線上に今回の共同声明もある。その問題点を大メディアが報じないのが不思議です」(半田滋氏=前出)

 この暴挙をひっくり返し、平和国家を取り戻すためには政権交代しかないのである。


賃上げ効果を信じれば1兆円詐欺のいいカモ
                          日刊ゲンダイ 2024/04/16
 大体、公的医療保険料はあくまで「医療サービス」を目的に支払うものだ。負担を増やすなら本来、医療サービスの拡充に回さなければおかしいのに、支援金の上乗せ分のサービスを享受できるのは子育て世代に限られる。「受益者負担」の原則に反し、支援金は「流用」にほかならない。
 「目的外使用による負担増を軽減するため、本来の目的である『医療・介護』の歳出を抑制するのは本末転倒。もうムチャクチャな制度です」(浦野広明氏)
 ましてや被用者保険は労使折半だ。事業主の負担も増えるため、支援金創設は岸田の言う「賃上げ効果」を抑制しかねない。

 そもそも、実質賃金は物価高騰に追いつかず、前年同月比マイナス続き。今年2月まで実に23カ月連続の減少だ。物価を押し上げる「円安地獄」も収まらない。15日のニューヨーク市場で1ドル=154円半ばに急落、1990年6月以来、約34年ぶりの円安水準を再び更新した。
 それでも岸田は「物価高を上回る所得増」にシャカリキだ。一定割合の賃上げを実現させた企業の法人税を軽減する「賃上げ税制」を拡充。中小企業が賃上げ分を適正に価格転嫁できるように後押し。24年春闘は33年ぶり賃上げ率5%超の高水準で、6月には1人4万円の定額減税も実施される。今夏には実質賃金がプラスに転じ、景気の好循環をもたらすかのような言説も飛び交う。
 しかし、そんな戯言に惑わされるような国民はいいカモである。日本人はつくづくお人好しだけに、心配になる。結論から先に言おう。いつまで待っても実質賃金は上がらない。経済評論家の斎藤満氏は強引な賃上げの弊害をこう指摘する。
「経済は一種の均衡の上に成り立ちます。実質賃金が今、マイナスなのはそこが均衡だからです。政府が旗を振り、無理やり賃金だけを引き上げようとすれば、人件費上昇分が当然、価格転嫁されます。せっかくの賃上げが物価高でカキ消される悪循環に陥ってしまうのです。企業が生産性を向上させ、売り上げを伸ばさなければ、賃上げと物価上昇のイタチごっこが延々と続くだけ。結局、実質賃金は増えません」

平安時代さながらの“ペテン貴族”支配
 専門家の一部から上がる「これから賃上げ効果が出てくる」という期待の声にも懐疑的だ。
物価は政府の統計以上に高騰しているのが現実だからです。スーパーに行けば数%どころか、2割くらい値上がりしている商品ばかり。政府の調査対象となる品目は限られており、内容量を減らす『実質値上げ』などもカウントしていません。物価統計は年金支出などに影響するため、政府には値上げ幅を小さく見せたい思惑がある。一方、個人消費は弱く、好調なのはインバウンドで潤うサービス業くらいなものです。個人消費が上向かないのに、政府が価格転嫁を奨励すれば、景気は冷え込むいっぽうです」(斎藤満氏=前出)
 とりわけ苦しいのは、年金頼みの高齢者だ。4月から医療保険料も介護保険料も跳ね上がった。賃上げ税制による法人税控除のシワ寄せも、庶民に押し付けられていく。そこに少子化対策の負担増が重くのしかかってくるのである。
 よくぞ岸田は臆面もなく、「実質負担ゼロ」などと言えるものだ。アベノミクスの「トリクルダウン理論」も足かけ10年以上のヒドイ詐欺だったが、岸田もえげつないタマだ。就任時に掲げた「所得倍増」を、いつの間にか「資産倍増」にスリ替え。今度は1兆円詐欺とは、安倍元首相に劣らない大ボラ吹きである。
 この国の首相には代々政治一家のボンボンで、口から先に生まれたような犯罪的な“ペテン貴族”しか就けないようだ。
「NHK大河ドラマ『光る君へ』の中で、段田安則さんが演じる藤原兼家が、息子の道長にこんなセリフを言っていました。“おまえが守るべきは民ではない。家の存続が政だ”。脚本家・大石静さんの強烈な自民党政府への批判だなと思いましたよ。今の政治は平安時代そのままです」(斎藤満氏=前出)
 そう言われれば、段田安則と岸田の顔はソックリだ。今を逃すと1兆円詐欺の魔の手から抜け出せなくなる。もう政府の戯言に騙されるな。