2024年4月24日水曜日

安保政策に便乗した冤罪 公安警察がでっち上げた大川原化工機事件

 大川原化工機事件では、生物兵器の製造に転用可能な噴霧乾燥機を国の許可を得ずに輸出したとして、20年3月に警視庁公安部が横浜市の大川原化工機(株)の社長ら3人を逮捕しましたが、社長らは一貫して無罪を主張したため、11か月間も拘置所に抑留されました
 その後、同乾燥機は生物兵器の製造に転用することは不可能であることが明らかになり、検察が立件を断念したことで3人はようやく解放されました。
 しかしこの間、胃がんが判明しても拘置所内で十分な治療を受けられなかった相談役はその2日後に亡くなりました。また数十回にわたり取り調べを受けた女性職員はうつ病を発症しました。
 警察と司法の暴走でこれだけの悲劇を生みました。決して杜撰な捜査ということだけで片付けられる問題ではありません。
 しんぶん赤旗が社長にインタビューしました。

 被疑者が罪を認めない限り何時までも警察の拘置所に収容して置くといういわゆる「人質司法」は日本特有のもので、新憲法下でも数十年に渡り検察が行っている「世界の非常識」にあたるシステムです。
 直接的には検察がその責めを負うべきですが、数十年来それを放置して来た「司法(裁判所)」もいわば「共同正犯」の立場にあります。
 国連の人権機関はこれまで数次にわたって、中世期のシステムだとして日本に改善を求めて来ましたが、日本の検察は頑として受け入れずに現在に至っています。是正勧告を受け入れるのは検察の名折れだとでも思っているのでしょうか。
 一家の働き手が無期限で拘置所に入れられていては、その家族は生活が出来ません。今回のケースではそれに該当しませんが、これに該当するケースでは、拘置所を出るために無実であっても「自白」するしかなく、これこそ冤罪を生むシステムそのものと言えます。
 冤罪について言えば、日本の刑事事件において有罪率が99・9%というのも極めて異常で、海外の例では70%程度であることを見れば30%が冤罪という推定が成り立ちます。

 「人質司法」が中世の封建制度に匹敵する人権蹂躙のシステムであるのは火を見るよりも明らかなのに、それが人権擁護の府であるべき「司法」において公然と行われているのは異常の極みというべきでしょう。
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安保政策に便乗した冤罪 公安警察がでっち上げた大川原化工機事件
大川原正明社長に聞く
                       しんぶん赤旗 2024年4月22日
 大川原化工機(横浜市都筑区)は2020年3月、軍事転用のおそれがある装置を不正に輸出したとして外為法違反の疑いをかけられ、大川原明社長ら3人が警視庁公安部に逮捕されました。安全保障の名のもとで企業活動に介入、監視する政府の経済安全保障政策に関連づけて作り上げられた事件とみられます。検察官は初公判の直前に起訴を取り消しました。異例の結末になった冤罪事件について、大川原社長聞きました。   (丹田智之)

 公安都のみたては、大川原化工機が輸出した噴霧乾燥機(液体を粉末にする装置)が「あるべきではな’いところで見つかった」というものでした。事実無根の容疑で逮捕、起訴され、警察署や拘置所での身体拘束が約11カ月も続きました。
 公安部が内偵捜査に着手したのは17年5月ごろです。18年10月の強制捜査のあとから一貫して無実を主張してきました。任意の事情聴取は、役員や社員を含めて290回を超えます。初めは「捜査に協力すれば分かってもらえるだろう」と考えていたのです
 ところが公安部は強制捜査後の1年半の間、私たちを遼捕し起訴するために検察官と経済産業省の幹部を説得していました。安保政策関逓への注目に便乗し、世間の話題になる事件に仕立てようとしたのでしょう
 約30年間で300台くらいの噴霧乾燥機を輪出してきましたが、ここ15年くらいは全ての売り先に対して軍事利用しないとの誓約書を提出してもらていますそもそも生物兵器などを製造することが不可能な機器仕様です。ぱく防止対策がされておらず、最低限の除菌・殺菌ができる機能もついていません。

 ー国会では政府が指定する秘密を大幅に増やして民間企業の技術者や研究者を監視、処罰する経済秘密保護法案が審議されています。冤罪の当事者として言いたいことはありますか
 私たちは健全な輸出産業でるべきだと考えています。化学機械を製造する同業者が不当な容疑で逮捕、起訴起訴されることがあってはなりません。
 経済安全保障自体には賛成すが、同法案は、何が安全保障に該当するのかが明確ではないと感じます。「安全保障支障を与えるおそれがあ」という規定が解釈を広げしまう問題もあります。事機密とは違う分野に法規制を拡大しないで欲しいという思いがあります。

人質司法 懲役より酷
 -起訴後の保釈購求を 東京地裁が何度も却下し ました。拘置所で長期の 身体拘束が続くことは 「人質司法」と呼ぱれます。
 警察署内の留置施設では体調管理が難しく、精神的なダメージも大きかった。拘置所でも弁護士などを除いて接見が禁じられ、面会が許されている懲役よりもひどいと感じました。あまりにも理不尽です。察官は「証拠」があるから起訴したはずです。危害を与えることのない人は、そもそも逮捕する必要性もないはずですし、起訴の時点で速やかに保釈するべきだと思います
 基本的に警察官は自分たちに都合がいいことだけを供述調書に記し、都合が悪いことは残しません。そうした行為が常態化しています
 公安部が立件に不利な実験データ″を隠していたことも明らかになりました。公正な捜査とは言えません。
 会社の損害も大きく、周囲から犯罪者と見られることで社員の家族が苦しみました。当初は警察、検察の情報だけが報道されてきたからです。そうしたマスコミの姿勢も間われます

 大川原化工機事件 

 軍事転用が可能な装置を中国と韓国に輸出したとして同社の大川原正明社長
3人が外為法違反で逮捕、起訴された事件。犯罪が成立する事実がなく、2021
年7月に検察官が起訴を取り消しました。同社元顧問の相嶋静夫さんは長期の勾
留で病状が悪化し、保釈もされずに死亡しました。逮捕と起訴は違法だと主張す
る同社側は国と東京都を訴え、昨年12月に東京地裁が損害賠償を命じました。
 この訴訟では、警視庁公安部の捜査員が事件について「ねつ造」と証言しまし
た。