2017年10月19日木曜日

19- メディアは「北に圧力」に大賛成でいいのか

 新聞・テレビのメディアは選挙に入ると森友・加計学園問題を全く報じなくなり、「中立報道」を強制されているテレビは政党や候補者を公平に並べることにばかり気を配り、視聴者の疑問や迷いに答える内容にはなっていません。これでは政権交代の機運はなかなか盛り上がりません。
 安倍首相は自公で過半数を占めれば退陣しないと明言しているので、自民党が政権党である限り国民がどんなに忌避しても居続ける積りでいます。

 安倍政権は「この国を守り抜く」をスローガンに、街頭演説で安倍首相は北朝鮮問題について一番長く時間を割いているということです。実際、彼は北を理由にすれば何をやっても許されると思っているようです。
 安倍首相は北朝鮮問題で「軍事行動を含めすべての選択肢がテーブルの上にある」という米国の立場を「一貫して支持する」と言い続けてきた世界でただ一人の首脳ですが、そのことは「日本に北朝鮮からの核ミサイルが飛んできても仕方がないと容認することに他なりません。現実に朝鮮労働党の幹部は日本の原発もミサイルの標的になると明言しています。
 北朝鮮が日本を射程に収めるミサイルと所有してから久しくなりますが、安倍政権が登場するまではそんな発言はしませんでした。彼こそが国難の元凶というべきです。

 安倍政権は、憲法9条の第3項に「自衛隊を明記」する改憲を主張し、9条の1項(戦争放棄)と2項(戦力不保持)は維持するので「心配はない」と説明しますが、これもまやかしです。
 先の憲法違反の安保法制で「集団的自衛権の行使ができるとされた」自衛隊が憲法に明記されれば、「後法優先の原則」によって1項と2項は空文化し、世界のどこででも戦争ができる自衛隊が憲法上の保障を得ることになります。

 日刊ゲンダイの記事「大メディアの能天気 “北に圧力”の大政翼賛会でいいのか」を紹介します。
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大メディアの能天気 「北に圧力」の大政翼賛会でいいのか
日刊ゲンダイ 2017年10月18日
(阿修羅「文字越し」から転載)
9条改憲で対米軍事的従属が加速
 衆院選は投票日まであと4日だが、なぜ今選挙なのか、有権者は依然、よく理解できないでいる。世論調査で内閣の支持と不支持が再び逆転したのに自公が300議席の圧勝予想という、ちぐはぐな結果がそれを物語っている。
 そんな悩める世論に対して、判断材料を提供するのがメディアの役割である。国民が安倍首相を信任する気になれないのは当然だ。モリカケ疑惑で見えた権力の私物化。違憲の解釈変更で集団的自衛権の行使を無理やり容認。そして平和憲法の改悪危機。中世の王政のような独裁と戦前を思わせる戦争国家への逆戻りという不穏な空気を感じ取っているからだろう。

 ところが、大新聞は安倍暴政に対して、なんと危機感の薄いことか。応援団の産経や読売は論外だが、朝日の17日の1面は〈星の合体重力波で観測〉だった。日経の16日1面は〈サービス業、採用計画未達〉と、来春入社の大卒の内定企業に関する調査ものである。“中立報道”のテレビはもっと酷くて、政党や候補者を公平に並べることにばかり気を配り、視聴者の疑問や迷いに答える内容とはほど遠い

 35年以上、テレビ報道に携わってきたジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「放送法があるので政治的公平性にこだわるのは仕方がありませんが、無理に体裁を取ろうとするので、有権者には何が問題なのかがわかりにくい。各政党の批判はほとんどなく、一律30秒など時間配分で公平さを出していて、選挙公報のようになってしまっています」
 消費税を上げるのか、凍結なのか。原発再稼働を認めるのか、ゼロにするのか。そうした論点も重要ではあるが、今回ほど、安倍政権の政治姿勢そのものを問わなければならない選挙はない。
 安倍首相は大勝利を収めた途端、「全権委任を得た」とばかりに暴走するのは間違いない。トランプ米大統領とともに北朝鮮への圧力を強め、米軍と一体化して戦争国家へ突っ走ることになるだろう。大マスコミは独裁や民主主義の破壊への警鐘をもっと鳴らすべきじゃないのか。

 今度の選挙は、この国の行く末にとって分水嶺となりかねない重大な選挙なのである。
 姑息な安倍政権は、すでに選挙後に向けてのさまざまな布石を打っている。
 きのう政府が正式に発表したトランプ来日もそうだ。来月5~7日だというが、その際、北朝鮮による拉致被害者の家族と面会することも明らかになった。そうしたらテレビは、横田めぐみさんの母・早紀江さんの記者会見を大々的に流して大騒ぎである。

 自民党の選挙のキャッチフレーズは「この国を、守り抜く。」である。街頭演説で安倍は、北朝鮮問題について一番長く時間を割く。日米共同での米大統領と拉致被害者家族の面会という“演出”は、北は恐ろしい国という国民感情をあらためて起こし、北への圧力や武力制裁までをも正当化する狙いがあるのではないか。北を理由にすれば、何をやっても許されると思っている政権である。テレビはまんまとその策略に乗っかっている。

 選挙後、安倍は改憲を急ぐのだろう。16日、安倍側近の萩生田幹事長代行は「希望と改憲で協力する可能性がある」との認識を示し、いよいよ本音を隠さなくなった。自公に希望、維新で3分の2の改憲勢力。大政翼賛会ができあがる。
 9条改憲について、安倍は「自衛隊を明記」と説明するから、世論は半数近くが「賛成」だ。しかし、これはまやかし。どう改めるのか、自民党は条文を明らかにしていない。条文を見ないと判断できない。これで賛成してしまったら、白紙委任を与えるようなもので、有権者は後悔することになる。

 京都精華大専任講師(政治学)の白井聡氏はこう言う。
「9条に3項を加えるというのは入り口で、最終的には全面改定にもっていこうとしているのではないでしょうか。私は、9条改憲を望む人たちの目的は2種類あると思っています。ひとつは対米従属レジームを永久に維持し続けること。そのためには9条は邪魔なのです。9条があることで軍事的な従属に一定の歯止めがかかってきたからです。もうひとつは秘められた反米意識の発散。先の戦争で敗れた米国に対し本当は憎悪を抱いているのに、それにへつらうことで権力を維持してきたのだから、表立っては言えない。そこで、米国の置き土産である憲法をズタズタにすることで、フラストレーションを解放しようというわけです。しかし、9条改定によって逆に軍事的従属が強まるという自家撞着が起きる。その事実を理解しているのでしょうか」
 米国と軍事一体化が加速することになるのである。

■「自民に任せないと不安」は間違い
 対北朝鮮で安倍は「すべての選択肢がテーブルの上にある」という米国の立場を「一貫して支持する」と言い続けてきた。これは「軍事行動を含め」という意味であり、そんなリーダーは世界中で安倍だけだ。ティラーソン米国務長官でさえ、「外交的努力を優先」としているのに、である。安倍は本当に恐ろしい。
「朝鮮戦争は現在、休戦状態なのですから、これを終わらせない限り緊張はなくなりません。本来、日本がやらなければならないのは、一方の当事者である米国に朝鮮戦争終結を働きかける外交努力なのですが、トランプ大統領を軍事オプションを含め100%支持している安倍首相にそれは期待できません。『自民党に任せないと北朝鮮対応は不安』と思っている有権者が少なくありませんが、それは違う。むしろ逆です。トランプ大統領を100%支持するということは、日本に北朝鮮からの核ミサイルが飛んできても仕方がないと容認しているようなものなのです。その覚悟をはっきりと国民に求めない安倍首相は卑怯です」(白井聡氏=前出)

立憲民主の猛烈な追い上げに自民は震撼
 ナチスのような民主主義の乗っ取りクーデターに対抗するには、心ある国民が総決起するしかない。メディアの情勢調査では自公で300議席となっているが、実際には、その多くが今も大接戦だ。自民が強いとされる九州のある陣営は、「モリカケ批判にさらされて選挙運動にならない。とても圧勝という雰囲気ではない」と首をひねっている
 本紙3ページのリストを見て欲しい。自民に鉄槌を下せる注目選挙区はこれだけあるのだ。そのうえ比例は、立憲民主党が猛烈な追い上げで、希望を抜いて第2党の勢い。自民は震撼している。真の野党への集中で、自民に一泡吹かせることになるのである。

 前出の鈴木哲夫氏もこう言う。
週末のFNNの世論調査で、安倍内閣の支持率と不支持率だけでなく、小池都知事の支持率と不支持率も逆転しました。当初は『安倍か小池か』という政権選択の選挙になりそうでしたが、希望の失速もあり、選挙期間の中盤で、安倍さんと小池さんのいずれもNOという事態になった。『自民はいいけど安倍首相はイヤ』『野党に投票したいけど希望はイヤ』という有権者が少なくなく、まだ迷っているということでしょう。そのうえ『支持政党なし』という回答が地域によって増えていることも興味深い現象です。通常、投票日が近づくほど『支持政党なし』は減っていくもの。増えているのはやはり有権者が悩んでいるからです。こうした人たちが投票に行けば、ドラスチックに結果が変わる可能性があります」

 立憲の枝野代表の街頭演説が、民主主義の原点だと、多くの共感を呼んでいる。
〈立憲民主党をつくったのは枝野幸男が立ったからではありません。枝野立てと背中を押したあなたがつくったのです。今の政治には声が届かない。私たちの方を向いていない。そうした皆さんの選挙です〉
 そうだ。まさに独裁から民主主義を勝ち取る選挙なのである。