五十嵐仁・法大名誉教授の論文はどんな場合でも原則的な立場を崩さずに、いつも未来の中に明るさを見出そうとしています。
小池新党(とそれに絡まる前原氏)のハチャメチャぶりは日ごとに明らかになって来ていますが、五十嵐氏は、それを軽く「小池にはまってサア大変」と揶揄する一方で、そこにもアベ暴走政治をストップするという最優先課題を実現するチャンスがあるので、それに向けて全力を尽くすべきだと説きました。
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選挙情勢の激変によって安倍首相退陣という希望が生まれた
五十嵐仁の転成仁語 2017年9月29日
希望する人は新党へ。なるほど、それで「希望の党」というのですか。
国会は解散されましたが、それよりも小池百合子東京都知事が立ち上げた希望の党と民進党の去就の方に関心が集まっているようです。
民進党の前原代表は希望の党との事実上の合流を打ち出しました。これで、民進党は衆院で姿を消すことになります。
総選挙をめぐる情勢は大きく変わりました。「小池にはまってサア大変」というところでしょう。
民進党の事実上の解党を決断させられた前原さんは「はまって」しまった1人です。しかし、それ以上に「サア大変」となったのは安倍首相ではないでしょうか。
総選挙の構図が都議選に似通ってきたからです。結果も都議選と似ているとすれば、自民党は歴史的な惨敗を喫することになります。
安倍首相は「森友」「加計」学園疑惑から逃げるため、「今なら勝てる」という計算のもとに解散を仕掛けたにちがいありません。野党の臨時国会開催要求を拒み続けるという憲法違反を犯したすえの決断でした。
国会解散を表明した時点では、安倍さんを始め自民党の多くは多少議席が減るかもしれないがそれ以上に野党は苦戦し、民進党は議席を減らすと思っていたでしょう。小池さんの新党立ち上げの準備は間に合わず、前原代表は野党共闘を見直すと言っていたのですから。
ところが解散した途端、あれよあれよという間に中道保守の連合が姿を現し、野党の待ち伏せ攻撃にあったようになりました。安倍首相は大いに慌てたでしょう。
前原さんは「名を捨てて実を取る」と言っています。あのまま都議選と同様の結果になれば、民進党は壊滅し、存亡の危機を迎えていたにちがいありません。
それを避けるために、公党間の約束や信義を投げ捨て市民や共産党を裏切るような形で「名を捨てた」というわけです。それだけ追い詰められていたということになりますが、このようなやり方がどれだけ支持され、「身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ」ということわざ通りになるかどうかは分かりません。
しかし、小池人気に頼って、生き残りをかけた乾坤一擲の勝負に出たことは明らかです。その結果、思いもかけぬ政権選択の選挙となり、安倍首相の退陣があるかもしれないという可能性が生まれることになりました。
もちろん、直ぐに政権が交代するというほど、世の中は甘くありません。しかし、自民党が現有の286議席より54議席減らせば、衆院の過半数である233議席を割ることになります。
そうなれば、公明党が35議席の現有議席を確保しても、衆院の3分の2である310議席を大きく下回ることになります。政権が交代しなくても、解散を決断した安倍首相の政治責任が問われ退陣せざるを得なくなるでしょう。
希望の党も改憲を掲げていますが、小池さんは9条改憲は最優先ではないと言っています。国会に進出してすぐに安倍9条改憲に同調するとはかぎりません。
この時点で重要なのは、選挙情勢の激変によって「アベよ、アバヨ」と言えるかもしれない可能性が出てきたということです。このチャンスを生かして、アベ暴走政治を許さずストップするという最優先課題の実現に全力を尽くすべきでしょう。
その後のことは、その後に考えればよいのです。まずは、衆院の投開票日に、涙目になって視線が空をさまよい茫然としている安倍首相の姿を見るために、包囲しせん滅する体制を固めようではありませんか。