2017年10月7日土曜日

救いがたい前原代表の政治的幼稚さ / リベラル立憲民主党は大歓迎

 この度の前原氏の。希望の党との合流騒ぎを評価する識者はさすがにいません。
 小池百合子という強烈な個性の持ち主が設けた「踏絵」という隘路を通過させる力など何もないのに、「全員が移れるようにする」と空約束をした上に、いざ「立憲民主党」が作られて多くの民進党員がそちらに向かうことになっても、「それは想定内のことで自分の判断は正しかった(要旨)」と強調するというのでは、もはや誰も彼の人間性を信用しないことでしょう。

 高野孟氏は、そういう政治的幼稚さは万死に値すると述べました。痛烈な言葉です。
 高橋乗宣氏は、民進党の全体的合流の成否や可否以前の問題として、小池氏は安倍氏と変わるところのない極右なので、仮に政権の座についたとしても、改憲や日米同盟の強化に邁進し日本を「戦争できる国」導くだけなので国の行き先は真っ暗だとして、枝野幸男氏らリベラル派が「立憲民主党」を立ち上げたことを大歓迎すると述べました。

 日刊ゲンダイの二つの連載記事を紹介します。 
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 永田町の裏を読む
民進党をブチ壊し 前原代表の政治的幼稚さは万死に値する
高野孟 日刊ゲンダイ 2017年10月5日
 私は8月10日付本欄で民進党の代表選について、「前原が勝てば同党は破滅に向かうしかなく、枝野が勝つことでかろうじて蘇生への活路を開くことができるだろう」と予測した。ところが案に相違して前原が勝ってしまって、その直後の9月7日付では、早くも取り沙汰され始めた前原と小池百合子都知事との連携話に関して「戯言」と断定し、その理由について次のように述べた。

 前原は代表選を通じて、安倍のそれとうり二つの「9条加憲論」を封印して党内リベラル派からの批判を回避したが、ホンネがそこにあることには疑いがなく、もし小池と結べば「手に手を取り合って剣呑な方向に転がり込んで」いって、「安倍改憲路線への対抗軸になるどころか、大政翼賛会のようになって、民進党は死ぬ」と。

 まさに前原の迷妄によって民進党は死に、そのがれきの中から枝野による「リベラル新党」結成という「かろうじて蘇生への活路」が切り開かれることになった。だから私が言ったように、初めから枝野を代表に選べばよかったのだ。彼の下で、2015年安保法制反対の国会包囲デモの統一戦線から16年4月北海道5区の衆院補選と同年7月参院選、そして今年7月の仙台市長選での野党プラス市民の選挙協力へという積み重ねを正しく継承しつつ深化させていく方向に踏み出せばよかった。そうすれば、党内の保守派や改憲派はいたたまれずに出て行って、何もこんな恥ずかしいドタバタ劇を演じなくとも、民進党はリベラル路線ですっきりまとまって総選挙に挑むことができたはずなのだ。
 直近の代表選にはそのような党の方向性が懸かっていることを、どうも民進党の皆さんの大多数は理解していなかったらしく、安易に前原を自分らの代表に選んで酷い目に遭うことになった

 それにしても、前原の政治的幼稚さにはあきれる。06年の「偽メール」事件で代表を辞任した際には、鳩山由紀夫幹事長、野田佳彦国対委員長が芋づるで辞任して執行部が崩壊したくらいで済んだけれども、今回は自分が代表する党そのものをブチ壊そうという話で、現職の国会議員だけでなく立候補予定者や地方議員、支援団体関係者まで含めて、何とかこの党をもり立てようと頑張ってきた何千何万という人たちの生き方を愚弄した。しかも、蓋を開けてみれば「全員が離党して希望に移行する」というのは真っ赤な嘘だったのだからお話にならない。万死に値しよう。

  高野孟  ジャーナリスト
   1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。


 日本経済一歩先の真相
日本の将来危うい 有権者はリベラル派の決起に感謝すべき
高橋乗宣 日刊ゲンダイ 2017年10月6日
 小池百合子都知事とは、つくづく上昇志向の強い女性だなと思い知らされる日々である。彼女が代表を務める希望の党は衆院定数の過半数に届く233人以上の候補擁立を目指す。3日に1次公認候補192人を発表したが、この先、どれだけ候補を積み上げることができるのか。

 現在の停滞する政治状況下で、新たな動きを求める有権者は多い。このまま選挙に突入すれば、今年の都議選のような圧勝とはいかなくとも、希望はかなりの議席を稼ぎ出しそうだ。
 その場合、票も議席も奪われるのは自民党だ。自民党には2世、3世議員が掃いて捨てるほどいる。岸信介元首相の孫が首相の座に納まっていること自体が象徴的だ。
 希望の躍進で、世襲議員がはびこる政界の閉塞感を打破する可能性に期待する向きもあるだろう。だが、問題はその後の日本の将来にどのような影響を与えるかだ。

 安倍首相と小池代表は昨年まで自民党で同じ釜の飯を食べてきた、きょうだいのようなものだ。小池代表は都知事になって、まだ1年余り。何かを成し遂げたという具体的な実績は何もない。思い当たるのは、リオから五輪旗を東京に持ち帰ってきたことぐらいだ。

 彼女はなぜきょうだいゲンカを仕掛けてでも政権の座を射止めようとするのか。その理由が有権者には見えてこない。安保関連法は断じて継続、憲法改変にも手をつけるというが、これでは落ち目のアベ政治となんにも変わらない
 唯一の違いといえば、改憲の理由か。希望は地方分権のための改憲を掲げるが、ハッキリ言って意味不明だ。小池代表の口からアベノミクスに代わる具体的な経済政策もついぞ聞かない。何のためのきょうだいゲンカなのかが、さっぱり分からないのだ。

 むろん、自民党が議席を大きく失えば、安倍首相も責任を取って身を引かざるを得ない。はたして自民党内にポスト安倍の適任者がいるのか。「安倍1強」と言われてきたのも、リーダーたるに足る人材が枯渇しているためだ。いずれ小池代表に首相の座を奪われることは十分にあり得る。
 個人的には安倍政権の終焉はうれしい限りだが、小池代表がその座を奪ったところで、これまでのアベ政治と何も変わらない。恐らく改憲や日米同盟の強化に邁進し、そして日本を「戦争できる国」へと導くことになる。この国の先行きは真っ暗闇だ。

 暗黒時代の到来を危惧していたところ、枝野幸男氏らリベラル派が「立憲民主党」を立ち上げた。この動きは大歓迎だ。今度の総選挙の結果、自民と希望とそれ以外のリベラル政党が、少なくとも「三者分立」くらいの形勢にならないと、日本の将来は極めて危うい。有権者は枝野氏らの決起に感謝すべきだ。

  高橋乗宣  エコノミスト
 1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。