2014年の解散総選挙では、自民党の萩生田光一副幹事長が在京TVキー局の編成局長と報道局長宛に、衆議院解散前日の11月20日付で「圧力文書」を送付しました。
それは選挙があるので「公平中立」と「公正」な放送を心がけろと要求するもので、「出演者の発言回数及び時間等」「ゲスト出演者等の選定」「テーマについて」「街角インタビュー、資料映像」などについて、こと細かな指示が書かれていました。
A4一枚の文書に、ナント「公平中立」、「公正」、「公平」という言葉が13回も登場し、古賀茂明氏によれば、それを受け取ったテレビ局は一読すれば具体的に何をするなと言われているのかが「ピンと来る」ようになっていたということです。
そして暗に「政権党の言うことを聞かなければ国会に呼びつけるぞ」との脅しが読み取れる文章になっていたということです。
その時は確か選挙が済んでからそのことが明らかにされ批判に晒されましたが、後の祭りでした。
今回はさすがにその手法はとれないので、ネトウヨを組織化した別働隊・J-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ)によるメディア・バッシングに徹しているということです。
J-NSCは自民党が在野時代に安倍信三氏の腹心の世耕氏などが組織したもので、広告代理店の数次の下請け組織が中心になっていると言われますが、それが今日のネトウヨの跳梁を招きました。
安倍自民党が選挙でもネトウヨ・J-NSCを重要視しているのは明らかで、公示日の直前に開かれたJ-NSCの緊急総会には、わざわざ安倍首相が顔を出してメンバーを激励しています※。
安倍首相は、かつて小泉政権で内閣官房副長官に登用された時、NHKの番組内容に実質的に干渉したのを手始めに、以後一貫してメディアに対して様々に干渉してきました。
LITERAは、この総選挙で安倍自民党が臆面もなく行使している手法を報じていますが、一層陰湿なものになってきていることが分かります。
LITERAの記事を紹介します。
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安倍自民党のあくどすぎるメディア戦略!
広報副本部長に抜擢の和田政宗がテレビ番組を名指しで恫喝、ネトウヨ煽動
LITERA 2017年10月17日
自民圧勝が伝えられる衆院選。調子に乗った自民党がまたぞろ、テレビ報道に報道圧力を加え始めた。2014年の解散総選挙では、安倍首相の側近である萩生田光一衆院議員による在京キー局への「圧力文書」の送付が発覚したが、今回は、自民党のネトウヨ議員・和田政宗参院議員がその先兵役をになっている。
和田議員は選挙を間近に控え自民党広報副本部長に就任したばかりだが、連日、テレビ局や番組名を名指しするかたちで、こんなツイートを繰り出しているのだ。
〈テレ朝社員でモーニングショー出演の玉川徹氏の印象操作が酷い。今日は日本人を馬鹿にするような発言も。「自民堅調」との世論調査に対し「安倍総理はやめなくていいんだ」。「森友加計問題は日本人は関係ないんだ」という発言をいずれも嘲笑しながらコメント。論評の域を超え印象操作に近い発言が続く〉
〈12日の報道ステーション、45分間の党首討論は何だったのだろうか。森友問題、前川問題(加計学園獣医学部新設について)に30分を割き、憲法9条改正について15分で全て終了。何か意図があるのだろうか。9条改正は必要だとしても、北朝鮮問題や経済政策など国民に直結する課題を全く議論させず〉
〈報道のTBSは完全に死んだ。総理の生出演。キャスターは質問で課題を明らかにする力の発揮のしどころであったが、そもそも質問力すらなかった。星浩キャスターの外れたイヤホンから強い口調のディレクターの指示。総理の話を遮りまくり〉
〈TBS サンデーモーニング。森友問題・前川問題(加計学園獣医学部問題)を取り上げ争点にしようと必死。安倍総理の地元で「厳しい批判にさらされている」とコメントしたが根拠が希薄、印象操作に近い。〉
和田議員のこうしたツイートはいずれも、「保守速報」や「netgeek」などのネトウヨサイトで大きく取り上げられ、ネトウヨの間で拡散。テレビ局への「電凸」などを引き起こしている。
ようするに、現役の国会議員が名指しでテレビ番組を恫喝し、ネトウヨを煽動しているのだ。これだけでも報道の自由の侵害行為としか思えないが、さらに唖然とするのは、和田議員のメディアバッシングの内容のデタラメぶりだ。
当たり前の報道を「印象操作」と叫ぶ和田議員
たとえば、12日放送『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の玉川徹氏に対するクレーム。実際の放送での玉川氏は、毎日新聞の選挙序盤情勢調査の結果、自民党が圧勝するという数字が出たことについて言及するかたちで、「安倍総理はやめなくていいんだな(といふうに自民党内でなる)」と述べたたうえで、こう言ったに過ぎない。
「そうすると、たとえば森友・加計問題とか、いろんな問題がありましたよね。あれで支持率が下がったりしましたけど、『日本人、全然関係ないんだね、そこ』っていう。そういうふうなのが第一印象ですね」
つまり、森友・加計問題であれだけ疑惑が膨らみ、安倍首相が説明責任を果たさないことへの不満が支持率の低下で表れたのに、選挙ではそれらの問題とは無関係に自民党が議席を伸ばすらしいという逆転現象が、国民の意識と乖離しているのではないかと指摘したのだ。和田氏はこれを「印象操作」「日本人を馬鹿にする」などと言っているが、意味不明にもほどがあるだろう。「日本人」云々と言う前に、日本語読解力をもっと鍛えたほうがいいのではないか。
『報道ステーション』(テレビ朝日)の党首討論に対するクレームも、てんで見当違いだ。森友・加計問題に時間を割いたのは、それが間違いなく国民の関心ごとだからにほかならない。実際、マスコミ世論調査では、これまでの安倍首相の説明が十分でないと思う国民が8割近くにのぼっているし、この間、依然として安倍首相は「丁寧な説明」を放棄。そのうえ、本来、新証拠が出てきて野党から追及を受けるはずだった臨時国会を冒頭解散で消しとばしたのだから、代わりにメディアが議論の水を向けるのは当然の行為だ。
さらに呆れるのは『NEWS23』(TBS)に対するいちゃもんである。これは9月25日の安倍首相の生インタビューのことだが、そこで星浩キャスターらから森友・加計学園について突っ込まれた質問をされた安倍首相は、「籠池理事長は詐欺で逮捕され起訴された人物」と何度も繰り返し、追及を逃れようとするのがやっとで、疑惑の本丸である国有地売却問題には一切答えられなかった。にもかかわらず、和田議員は鬼の首をとったかのごとく、星キャスターのイヤホンからディレクターの指示が漏れていたことをあげつらう。
だからなんだというのか。質問に答えず好き勝手にPRだけしようとする首相を、番組側が話を戻そうと努力するのは当然のことだ。むしろ、国民が聞きたい話を「遮りまくり」だったのは安倍首相のほうである。
「批判者をTBSは至近距離で撮影」「子どもは動員」…ネトウヨばりの妄言を連発
しかも、和田氏がトンデモなのは、こうしたメディアの放送内容に対する恫喝めいたクレームだけではない。ツイッターではほかにも新聞社や安倍政治に反対する市民に対して、ネトウヨばりのいちゃもんをこれでもかと飛ばしている。
〈日本記者クラブでの党首討論。一部の質問者はジャーナリストとして大丈夫かと疑問を感じた。本来は厳しい質問で詰将棋をしていくのだが朝日や毎日の質問者は自分の主張に基づきやりこめようという質問の仕方〉
〈安倍総理が柏駅前で街頭演説。菅野完氏がメルマガで集結を呼び掛けたこともあり、大声を張り上げ批判している人達がいたが10人程度。それにしても、ごく一部しかいない批判的な人達を、TBSはなぜ至近距離で撮っているのだろうか?我々は批判の声にも真摯に向き合い、やるべき政策を実行し続けます〉
〈添付したリンクの写真をご覧ください。動員されマスクをした子供が写っています〉
「我々は批判の声にも真摯に向き合い」が聞いて呆れる。一応補足しておくが、7日のJR柏駅前での安倍首相の演説では、批判する市民たちがプラカードを掲げながら「安倍やめろ」のコールをあげたが、和田議員はTBSがそこにカメラを向けたことを批判し圧力をかけることで、その声をなかったことにしようとしているのだ。しかも、産経新聞はこの和田議員のどうしようもないツイートをそのまま記事にしたが、和田議員はさらに産経がアップした写真にひとりの子どもの姿があったことを大げさに取り上げて「動員」などとぬかしている。
バカを言え。動員というのは普通、組織的に呼びかけて日の丸を振るような支持者を街頭演説の場に集めてきた自民党のようなやり方のことを言う。批判者の近くに子どもがいただけで、それが「批判勢力は子どもまで組織動員している」かのように喧伝するのは、悪質なデマゴギー以外の何ものでもない。
そもそも和田議員といえば、前述したとおり“ネトウヨ議員”として知る人ぞ知る人物だ。元NHKアナウンサーで、2013年の参院選でみんなの党から出馬しネットを駆使した選挙運動を展開して当選。憲法9条や天皇を国家元首にする改憲を訴え、教育勅語を絶賛したり、慰安婦問題等でも歴史修正主義をぶつなどバリバリの極右で、ブログやSNSなどでネトウヨに大向こう受けする発言を連発し、ネトウヨ向けネット番組『報道特注(右)』にもレギュラー出演している。
そんな和田議員は、みんなの党の分裂後、極右政党である次世代の党(現・日本のこころ)に籍を移して党要職に務めていたが、昨年離党して自民党会派入りを宣言。今年9月に正式に自民党へ入党した。そういう意味ではネトウヨ議員らしい煽動ともいえるのだが、問題なのは、このネトウヨ議員がひとりで好き勝手に安倍政権に批判的なメディアを叩き、悦に入っているというわけではないということだ。
安倍首相にも密着…メディアバッシングは党ぐるみの「広報戦略」か
和田議員は、自民党正式入党直後の9月27日に〈私は、党の選挙広報戦略チームに入りました〉とツイートしていたが、上述したように、なんといきなり自民党広報副本部長にも抜擢されていたのだ。この自民党広報本部は、戦略局や報道局、新聞出版局、ネトウヨを組織化した別働隊・J-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ)、そして和田氏のいう「選挙広報戦略チーム」を統括する部署。つまり、自民党は、こんなネトウヨむき出しでメディアバッシングを繰り返し、報道圧力をかけまくっている議員を、あろうことか選挙の広報の中心人物に抜擢しているのである。
それだけではない。たとえば首相動静によれば10月2日と6日と、ただの一年生議員、それも入党直後にもかかわらず、異例といえるほど安倍首相と面会している。また、和田議員のツイートによれば、上記の2日以外も安倍首相に密着し、党首討論や街頭演説、ネット番組への出演にも同行しているらしい。
ようするに、前述のようなメディア批判ツイートやデマゴギーも、ただのネトウヨ議員のたわごとではなく、党ぐるみの「広報戦略」=メディア対策だと思われるのだ。いや、和田議員が安倍首相と行動を共にしていることを考えれば、直接、その悪質なネットでの発言も、安倍首相や幹部と相談のうえでやっている可能性もあるだろう。
安倍首相は『NEWS 23』の党首討論で、加計問題の情報の開示を求めた星キャスターに対し、「イヤホンちょっと大丈夫ですか」というネトウヨまがいの皮肉をぶつけたが、これも前述した和田議員の入れ知恵ではないかとさえ言われている。
いずれにしても、和田議員のネトウヨ丸出しのデマ攻撃、ネトウヨを使った報道の自由への侵害行為はたったひとりの議員の問題ではない。自民党、そして安倍政権の体質なのだ。
自民党がJ—NSCの総会でネトサポに他党叩きをアドバイスしていたことについては本サイトでもお伝えした
(http://lite-ra.com/2017/10/post-3499.html)が、本当にこんな政党にいつまでも政権を担当させていいのか。このままいくと、ロシアや中国のような言論弾圧社会になってしまうのは確実と言っていいだろう。 (編集部)