安倍首相が「同一労働・同一賃金の実現に踏み込む」」と述べたのは2016年1月の施政方針演説でした。先ずは正規・非正規間の賃金格差・待遇格差を是正するという意味になる筈です。
同一労働・同一賃金の理想を実現すれば間違いなく歴史に名を残す首相になれます。それだけの大事業なのですが、何故か労働行政を所管する厚労省に事前の相談はなく、発言の壮大さに霞が関の官僚たちは首相の真意を測りかねたということです。
その理想を実現するためには、何よりもリーダーに「社会の在り方」の観念についての一大変化が求められ、財界などのあらゆる抵抗を排除する覚悟がなければなりませんが、安倍首相にはそんなものはなく「真意を測りかねる」というものでしかありませんでした。
事実、それから2年近くが経過しようとしていますが、正規・非正規間の賃金格差・待遇格差は何も改善されていません。安倍氏の口の軽さは分かり切っていたことですが、改めて空しさを覚えます。
頼りにならないのは司法も同じです。
レイバーネットが、同じ仕事をしているのに正規社員の半分しか収入がないのは、「労働契約法20条に反する」として会社を訴えた東京メトロの売店で働く4人の非正規労働者の、控訴審の様子を伝えました。
(関係記事)
2016年12月14日 「同一労働・同一賃金」を問う裁判が結審へ
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東京東部労組メトロコマース支部
非正規差別なくせ裁判 第2回控訴審 報告
須田光照 レイバーネット 2017年10月16日
(東京東部労組)
東京メトロ駅売店の非正規労働者でつくる全国一般東京東部労組メトロコマース支部が正社員との賃金差別をなくすために起こした裁判で控訴審の第2回口頭弁論が10月16日、東京高裁で開かれ、約100人の支援者が駆けつけてくれました。心より御礼申し上げます。
冷たい雨が降りしきる中、支部組合員と支援者らは午前8時30分から裁判所正門前でアピール行動を開始。ビラをまきながら、「非正規労働者にも人間らしい生活ができる賃金を」などとマイクで訴えました。多くの友好労組・支援者から連帯の発言を受けました。
同10時30分からの口頭弁論では、支援者で傍聴席が今回もあふれ、非正規差別をなくす熱意に法廷が包まれました。
裁判後、組合は再び裁判所正門前で報告集会を持ちました。弁護団から今後の裁判闘争のポイントを解説してもらった後、原告組合員4人からそれぞれ闘う決意を表明しました。9月に非正規労働者への格差是正を判決で獲得した郵政ユニオンの浅川さん(写真下)から連帯の発言を受けました。最後に全員で裁判所に向けたシュプレヒコールと団結ガンバローで締めくくりました。
原告組合員のうち疋田組合員は現在3つの仕事を掛け持ちしてクタクタになりながら闘っています。これも低賃金で貯金も年金も少なく、メトロコマースを定年になっても退職金がまったく出ないからです。こうした非正規労働者の怒りと苦しみの声を裁判所はきちんと聞くべきです。
次回の裁判は公開の法廷ではなく、原告・被告双方が出席して訴訟の進行に関して協議する「進行協議期日」(11月28日)となります。今後、公開の法廷で口頭弁論が行われる際には、みなさんの支援参加をあらためて呼び掛けますので、よろしくお願いいたします。