2017年10月29日日曜日

スパコン日本一をベンチャー企業が達成

 12月放送予定NHK番組「プロフェッショナル 仕事の流儀 齊藤元章」の予告記事が「WEB特集」に載りました。

 ベンチャー企業が独自開発したスーパーコンピューター(以下スパコンと略称)『暁光26日、14.13ペタ」という日本一の処理速度を記録しました(ペタは数字の単位ペタ=1000兆=0.1京=10の15乗 という関係で、「14.13ペタ」は14.13ペタ/秒という計算速度を表しています)。

 専用の発電所を有する重厚長大型のスパコン『の開発に1000人以上の開発者が参加し構想から6年かけて完成させましたが、『暁光』は、参加者25名ほどで構想からわずか3年半で完成させました
 スパコンの頭脳に当たる「プロセッサー」には通常2つから8つの「コア」が組み込まれていますが、『暁光』で開発した「プロセッサー」には何と2000以上のコアが組み込まれ、冷却方式も通常の空気冷却より30倍も効率の良い液体冷却を用いることで、1台の大きさが僅かに業務用のコピー機ほどという驚異的な小ささを実現しました。

 それとは別に現在世界一のスパコンは中国製で、その性能(計算速度)は実に93.0ペタということです。しかも中国は5年以上世界1位を守り続けていて、中国一強時代を築いているということです
 日本の政府は、アメリカの兵器商法に乗せられて、とても迎撃能力があるとは思えないイージス・アショアなどに何の疑問も持たずに大金をはたいていますが、スパコンに関する戦略は持っていないのでしょうか。
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WEB特集】スパコン日本一!ベンチャーが達成
NHK NEWS WEB 2017年10月27日
ベンチャー企業が独自開発したスーパーコンピューターが「14.13ペタ」という処理速度を記録しました。これは理化学研究所のスーパーコンピューター「京」などを抜いて、日本一の性能です。なんと、このベンチャー企業が、スパコン事業に乗り出してから、わずか3年半での快挙。少ない人員や予算で国家プロジェクトや大手企業を上回ったのはなぜなのでしょうか? (経済社会情報番組部ディレクター 大隅亮)

速くて小さい! 夢のコンピューター
2017年10月24日の午前10時ごろ、都内にあるベンチャー企業の一室が沸きました。
スーパーコンピューターを管理するモニターの画面には「13.77ペタ」という数字が浮かびました。日本の歴史上もっとも処理速度の速いコンピューターが誕生した瞬間でした。その2日後には、「14.13ペタ」を達成、これは1秒あたり1京4130兆回の計算速度です。ことし6月に発表された最新の世界ランキングに当てはめると6位に相当する性能で、省エネ性能を示す、消費電力1ワットあたりの計算回数では、1秒間に146億9000万回と、世界1位に相当します。

記録を出したスーパーコンピューター「Gyoukou(暁光)」は、ベンチャー企業のExaScalerとPEZYComputingが開発し、神奈川県にある海洋研究開発機構
JAMSTEC)に設置されています。
1台の大きさは業務用のコピー機ほど。最大の特徴はこの「小ささ」です。これ1台で、私たちが持っているスマートフォン100万台と同等の計算ができると言います。従来のコンピューターとは比べものにならないほどコンパクトなのです。

すでに研究室や民間企業の一室にこの超小型のスーパーコンピューターを導入する動きが始まっていて、脳機能のシミュレーションなど、これまで解けなかった難問の解決にも使われています。将来1社に1台スーパーコンピューターが設置される時代が来るかもしれません。

小さなベンチャー企業がなぜ?
驚くのは、これを開発したのが、小さなベンチャー企業だということです。
スーパーコンピューターは科学技術や軍事開発にとって欠かせないことから、世界各国が国家プロジェクトとして開発競争を繰り広げています。日本では国家プロジェクトである「京」の開発に1,000人以上の開発者が参加し、構想から6年かけて完成させましたが、この規模は国際的には珍しくありません。

ところが今回のベンチャー企業でスーパーコンピューター事業に参加しているのは25名ほど。協力会社を合わせても、ごく少人数で制作しました。そして開発に乗り出してからわずか3年半での快挙達成でした。

えっ、液体につけても大丈夫なの!?
人員の少なさをカバーしたのが、独創的なアイデアの数々でした。今回のスーパーコンピューターを見てまず驚くのは、機械類が液体にじゃぶじゃぶと浸かっていることです。
ほとんどの人が「壊れないんですか?」と聞くそうですが、これは電気を通さない性質の「フッ化炭素」という特殊な液体なので大丈夫です。空気を送って冷やすより、30倍も効率よく冷却できると言います。
スーパーコンピューターに詳しい世界的な研究者、ジャック・ドンガラ氏も視察に訪れ「これほどユニークなスパコンを実用化しているのはほかに知らない」と話していました。

異業種からの参入が常識を変えた
さらに、スーパーコンピューターの頭脳にあたる「プロセッサー」も独自開発、驚きのアイデアが詰まっています。私たちがふだん使うパソコンには必ず1枚プロセッサーが入っています。そしてその中では、2つから8つの「コア」が計算を行っています。
それに対して今回スーパーコンピューターのために設計されたプロセッサーには2,000以上のコアが組み込まれています。パソコン数百台分の処理を、たった1枚のプロセッサーが行うのです。

ベンチャー企業を率いているのは、齊藤元章さん(49歳)です。
もともとは、東京大学の医局で働く医師でした。大学院生の時にベンチャー企業を設立し、20年近くアメリカで医療システムの開発・販売をしてきました。実は齊藤さんは当時「CTスキャン」を開発していたそうですが、膨大な画像を処理するのには、コアの数が多いプロセッサーが必要だと感じていたと言います。こうした異業種での経験が、イノベーションを生み出したのです。

中国一強時代を変えられるか?
今回、ベンチャー企業が出した処理速度は「14.13ペタ」。これは日本一速いわけですが、実は世界の中ではまだ上がいます。2017年6月の世界ランキングでは、世界1位の中国は93.0ペタという処理速度で圧倒的な存在です。そして中国は5年以上、世界1位を守り続けており、まさに「中国一強時代といえます。

私は「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組の取材で、半年にわたって齊藤元章さんに密着してきました。途中、予期せぬ問題が重なってコンピューターがまったく動かない時期もあり、撮影していて心苦しい時もありました。
2017年11月には最新の世界ランキングが発表されますが、王者・中国に対して、齊藤さん率いるベンチャー企業がどこまで迫ることができるかに注目しています。番組では、舞台裏で起きていたドラマや、ネコ好きのお茶目な素顔も放送する予定ですので、ぜひご覧ください。「プロフェッショナル 仕事の流儀 齊藤元章」
12月放送予定です。