2017年10月27日金曜日

27- 小池劇場 誤算の行方(下)(東京新聞)

 東京新聞の連載記事“誤算の行方”の「下」です。
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<誤算の行方>(下)小池劇場もう通じない 傷ついた発信力「都政に専念を」
東京新聞 2017年10月26日
 「これまでの、自民党がばらまくような政治ではなくて…。ばらまきって言うと失礼ですが」
 希望の党が惨敗した衆院選の余波が続く二十五日朝、出張先のパリから成田空港に降り立った東京都の小池百合子知事は、いつになく慎重に言葉を選んだ。
 一カ月前の九月二十五日。小池氏は新党立ち上げの記者会見で、自民を意識しながら「都政を進めるに当たり、国政の壁がドカンとある」と訴えた。そんな威勢のよい批判は、「排除」発言の失敗もあって影を潜めていた。

 都庁には、会見から一週間余で「都政に専念して」といった電話やメールなどが計千七百五十件も寄せられた。国政と都政の「二足のわらじ」批判に、小池氏は「国政での勢力確保は東京にとってもプラスになる」とかわしてきた。だが、そのもくろみは外れた。
 パリから帰国して約六時間半後、国会内で開かれた希望の両院議員懇談会で、小池氏は当選者らにこう呼び掛けた。「私は都知事として都政にまい進していきたいので、国政は国会議員の皆さんに委ねていきたい」

 二〇二〇年東京五輪・パラリンピック、豊洲市場への移転問題など、都政の課題は山積している。東京大会の準備について、都幹部は「知事は政権を批判し、対話でなくけんかを選んだ。しこりが残る恐れはある」と影響を懸念する。
 小池氏は二十四日、パリ郊外にある世界最大級の卸売市場「ランジス市場」を視察し、市場問題に取り組む姿勢をアピールした。都は今後、豊洲市場の土壌汚染対策をPRして風評被害を払拭(ふっしょく)し、移転に向けて業者をまとめなければならないが、業界関係者からは「発信力があるうちに取り組んでほしかった」との声も上がる。
 別の都幹部は「より心配なのは足元」と漏らす。衆院選公示まで、庁内では「知事は辞職して国政に打って出る気ではないか」との臆測が広がった。「都政は踏み台か」。不信感は今もくすぶる。

 七月の都議選で、小池氏が率いて躍進した「都民ファーストの会」も揺れている。十一月に政治資金パーティーを開く予定だが、ある都議は「なかなか券が売れない」とこぼす。周辺は「神通力はもう通じない。地道にやるしかない」と見据える。

 厳しい立場となった小池氏に「私の状況によく似ている」と自分を重ねるのは、今回の衆院選に出馬して落選した前滋賀県知事の嘉田由紀子氏。一二年の衆院選で「日本未来の党」の代表を兼任したが惨敗し、求心力は低下した。
 「それでも私は、琵琶湖の環境対策などを実現しようと県政にしがみついた」と知事職に専念した経験を振り返る。「(再起できるかは)小池さんが都政にどう向き合うか次第だ」 (内田淳二、木原育子、榊原智康、唐沢裕亮が担当しました)