元外務官僚の孫崎享氏が掲題の記事を出しました。ガザのパレスチナ人犠牲者は、ハマス保健省の発表で4万人を超えました(ガレキの下の犠牲者を除きます)。実際の数はその数倍と言われています。
一方イスラエル側の死者は1139人で、それは主に昨年10月7日にハマスが越境攻撃したときの死者ですが、イスラエル軍は当日ハマスに占拠されたビルを自国民もろとも爆撃したので、ハマスによって殺されたと見るのは間違っています。
孫崎氏は、公式発表の犠牲者数で比較しても、パレスチナ人の死者数は30倍に上る(40倍の間違いでは?)としています(上述の事柄を勘案すると実際の倍数は100倍ほどになります)。まことに恐るべき殺害行為が、現在進行形で行なわれているということです。
バイデンは今頃になってイスラエルに殺戮行為を止めるように言い出しましたが、この殺戮は米国の援助がなければ遂行できなかったのですから、共同正犯の罪は免れません。
長崎の平和祈念式典にイスラエルの代表を呼ばなかったという理由で、駐日大使を参加させなかったG7各国(ドイツを除く)も似たようなものです。西側諸国によって世紀の蛮行、世紀の非常識が行われているということです。
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日本外交と政治の正体 孫崎享
死者が増え続けるガザ戦争を許してはならない
日刊ゲンダイ 2024/08/15
(記事集約サイト「阿修羅」より転載)
イスラエル軍が10日、パレスチナ自治区ガザの学校施設を攻撃した。
ロイター通信は避難していた100人超が死亡し、数十人が負傷したと報じた。アルジャジーラは11日時点で、ガザ戦争で「パレスチナ人の死亡は4万319人、イスラエル人は1139人」と報じている。確かにパレスチナ側が先制攻撃をした。しかし、先制攻撃された方は無制限に相手の人々を殺していいというものではない。
しばしば怒りの発露として「倍返し」や「3倍返し」、さらには「10倍返し」という、とんでもない言葉もあるが、ガザの戦争では、すでに「30倍返し」になっている。
イスラエルは「自己の戦略を達成するためには、敵側の、戦闘に参加していない人を無制限に殺してもいい」と考えているのだろうか。こんな攻撃が許されるわけがない。国内外の多くの人がそう思っているだろう。
一般市民を標的にして大量の死人を出したのは第2次世界大戦である。
東京大空襲の死者は11万5000人以上。原爆投下で広島では9万~16万6000人が死亡、長崎では6万~8万人が死亡とされている。
これらの死者は「戦争を早期に終わらすため」などとして正当化されている。
ドイツに対する攻撃では、ドレスデンへの爆撃が最も激しい戦闘のひとつとされているが、ドレスデン市歴史調査委員会による調査結果では「死者約2万5000人」とされている。
つまり、人類は「自己の戦略の成就のため」には3万人の民間人の犠牲者が出ることを容認しているのだ。
8月9日に長崎で行われた平和祈念式典で、米英などG7の6カ国の駐日大使が欠席した。イスラエルの要人が招待されなかったことが影響しているとみられている。G7の大使は4万人の死者を出していることを人類の蛮行とは見ていないのである。
旧約聖書の記述にはこうある。
「あなたが行って所有する土地に、あなたの神、主があなたを導き入れ、多くの民、すなわちあなたにまさる数と力を持つ7つの民をあなたの前から追い払い、あなたの意のままにあしらわせ、あなたが彼らを撃つ時は、彼らを必ず滅ぼし尽くさねばならない。彼らとの協定を結んではならず、彼らを憐れんではならない」
G7の大使は、この教えは現代にも有効だと思っているのであろうか。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。