マスコミに載らない海外記事に掲題の記事が載りました。
MI6という世界トップの情報組織を持つ英国は、ウクライナ戦争においてゼレンスキーを最も督戦してきた国家です。開戦後1か月余りの22年3月の時点で、ゼレンスキーは仲介国の意見を取り入れて自分の安全が保障されるならと、一旦「停戦合意」に傾いたのですが、それに強硬に反対したのが英国でした。
スターマーは2024年に首相の座に就きましたが、欧州の首脳連中と同様に「ロシア問題により過激化」し、ロシアが「自由と民主主義」に対する最大の脅威と考えてロシアに焦点を当てた戦争計画を立てていることに、英国民が怒っているということです。スターマーは「ディープステート」や軍産複合体や親イスラエル・ロビー団体の操り人形だと広く見なされているということです。
元々英国には移民問題という難題や深刻な財政危機問題があるのですが、そうした国内問題から目を逸らすため、他のEU諸国と同様対ロシア戦争に焦点を当てることを選んだとも見られています。これでは登場したばかりのスターマーですが、国民の信頼は得られません。
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裏目に出るイギリスの戦争計画:危機におけるスターマーの指導力
マスコミに載らない海外記事 2025年8月19日
Strategic Culture Foundation 2025年8月9日
多極化世界は現実のものとなり、イギリスのような旧植民地大国にとって、この移行は特に苦痛を伴うものになっている。
キア・スターマーは2024年からイギリス首相を務め、2020年からは労働党党首を務めている。彼はもはやイギリス国民に人気がない。あるいは、そもそも真の人気者ではなかったのかもしれない。就任前から彼を良く知っていたイギリス人はほとんどいなかったからだ。ヨーロッパの首相や大統領連中同様、彼は「ロシア問題」により過激化し、欧米諸国におけるいわゆる「自由と民主主義」に対する最大の脅威と彼らが考えるロシアに戦争を仕掛けようとしている。この姿勢は明らかにイギリス国民の怒りを買っている。
国民は一体なぜ怒っているのか? 多くのヨーロッパ諸国同様、ロシアとの仮想戦争に必要な国防予算が増額されたためだ。凍結されたロシア資産を、武器購入・生産に充てるだけでなく、イギリス政府予算のほぼ全額が国防費に充てられている。
多くのイギリス・メディアや、有名なFoundation for Economic Educationによれば、キア・スターマーの政策、特にロシアに焦点を当てた戦争計画は、就任から僅か一年でイギリス国民の信頼を事実上失墜させたという。
更に、イギリス議会報告によれば、福祉・医療費はイギリス予算の大きな部分を占めており、近年、障害者給付金は急増している。スターマー政権は「パーソナル・インディペンデンス・ペイメント(PIP)」と呼ばれる新制度を創設した。これはオランダの制度をモデルとしていたが、費用が高すぎて最終的に廃止された。
政府はこの新制度によって年間50億ポンド(68億ドル)の節約を見込んでいたが、その成果は得られなかった。現在、世界的「地政学的」緊張が高まっているため、この制度は国防費の増額に充てられることになった。イギリス国民にとって、これはCOVID-19パンデミック以降既に悪化していた医療制度の更なる悪化を意味する。
キア・スターマーは「ディープステート」や軍産複合体や世界経済フォーラムや親イスラエル・ロビー団体の操り人形だと広く見なされている。就任以来、彼は多くのEU諸国と同様に深刻な財政危機に陥っているイギリスを率いてきた。イギリスは移民問題という大問題に直面しており、移民は今や国全体に大きな影響を与えている。この状況は、一部は大英帝国の遺産、そして一部はイギリスが主要な欺瞞的役割を果たした近年の中東戦争に起因している。こうした国内問題から目を逸らすため、イギリス政府は他のEU諸国と同様、ロシアとの対立に焦点を当てることを選んだのだ。
戦争計画は期待通りには進んでいない。トランプ政権下のアメリカが、アメリカのNATOへの資金提供意欲に益々疑問を抱く中、イギリスはイギリスを筆頭とする新たな連合「有志連合」を結成し、主導的役割を担うと決定した。この動きは、かつてのイギリス帝国の未だ残る野望を反映している。またイギリスは、主要欧州諸国との二国間同盟協定を通じて集団防衛の強化も目指している。
「有志連合」に加え、ドイツとイギリスは2025年7月17日にケンジントン条約に署名した。この協定には、攻撃を受けた場合の「相互援助」と、共同生産する戦闘機など軍事装備品の海外受注を確保するための「共同輸出作戦」に関する規定が含まれている。これは、第二次世界大戦後、ドイツとイギリスの間で締結された最初の条約だ。
歴史的に、そしておそらく現在もなお、イギリスはロシアとの対立において主導的役割を担おうと努めてきた。イギリス諜報機関は過去に、特にシリア、クリミア、ウクライナに関して、様々な物語を捏造してきた。
これらの反ロシア作戦の鍵は、イギリスのStatecraft Instituteにある(現在アクセスできない)。イギリスは長年にわたり、世界的な紛争や地政学的不安定化の中心的存在で、アメリカやEUと連携してカラー革命や戦争を画策してきたが、主導権を握ることもしばしばあった。イギリス諜報機関(MI6、MI5)は重要な役割を果たしている。例えば、スクリパリ事件やアレクサンドル・リトビネンコのプルトニウム中毒疑惑は、この研究所に運営されていたと報じられている。
同研究所は、2018年の私の論文(および他の著者の論文)の後、アノニマスによってハッキングされ、それ以来オンライン上でアクセスできなくなったと主張している。しかし、これはロシアや中国や中東諸国に対する彼らの活動が停止したことを意味するものではなく、彼らはおそらく別の名前と役割で活動を続けているだろう。
最近の証拠は、イギリスが特別軍事作戦(SMO)地域に直接関与していることを示唆している。実際、イギリスは2022年初頭、あるいはそれ以前、2014年からロシア軍との戦闘作戦にNATO軍と傭兵を含む兵士を派遣している可能性がある。
情報筋によると、2025年7月28日にウクライナ軍がテンドラ砂州に上陸した際、イギリス傭兵がこれに関与していたという。テンドラ砂州は黒海の砂州で、ヘルソン州の一部を形成している。この島はテンドラ湾と黒海を隔てている。ロシア治安部隊の報告によると、オチャコフに駐留・訓練を受けていたイギリス傭兵がこの地域への侵入を試みたが失敗し、その後ロシア軍に敗れた。
イギリス本土では、住民の間で不安が高まり続けている。生活環境は著しく悪化している。様々なYouTubeブロガー(信頼できる人もいればそうでない人もいる)が、イギリスの現状、特に都市部の暴力と犯罪について、多少誇張しながらも描写している。これらの問題は、軽視された福祉国家と、移民・難民の増加に起因している。
更に、ガザ地区で進行中のジェノサイドは、イギリス全土で大規模抗議活動を引き起こし、その規模はベトナム戦争時の抗議活動に匹敵するほどだ。多くのイギリス人は、イスラエルによるパレスチナ人への侵略と見なす行為に対する政府の支援に反対している。
イギリスはパレスチナを国家として承認していない。エルサレムに非公認の総領事館を設置しており、「エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザ地区におけるイギリスの利益を代表」し「イギリスとパレスチナ自治区間の政治、商業、安全保障、経済上の利益」に取り組んでいる。
この姿勢は、1948年までイギリス委任統治領の支配者だったイギリスの植民地時代を反映している。この時代が現在のイスラエル占領とパレスチナ人の苦しみへの道を開いたと多くの人が主張している。
最近、キア・スターマーは、フランスのエマニュエル・マクロンやカナダのマーク・カーニー(両国ともパレスチナを承認していない)などの欧米諸国指導者の例に倣い、パレスチナの国家承認の可能性を示唆したが、9月まではない。
批判する人々は、その頃まで、アメリカ軍事支援が継続されれば、ガザの子どもたちをイスラエルは更に何千人も殺害しているかもしれないと主張している。その一方、主に(アメリカ政府の80%と推定されるシオニスト政治階級を含む)裕福なアメリカ・エリート層はトランプ大統領が提案したガザのビーチ・リゾートなどのプロジェクトを推進している。
キア・スターマー率いるイギリスは「旧」ヨーロッパの多くの国々と同様、かつてイギリスが世界の半分を支配していた帝国主義の過去にしがみついている。しばしば現代の人種差別を生み出したと非難されるイギリスは、今や国内の衰退と諸問題に苦しんでいる。これは植民地時代の歴史に対する因果応報とも言えるだろう。かつてイギリスが、その帝国に輸出した抑圧は、今やイギリス本土にまで及んでいる。
しかし、この衰退はイギリスだけに限ったことではない。ヨーロッパ全土で同様の兆候が見られる。イギリスの強力な同盟国であるアメリカでさえ、ローマ帝国滅亡以前と同じ衰退を反映した政策を絶えず変える大統領の下で、MAGA運動は支持を失いつつある。多極化世界は現実のものとなり、イギリスのような旧植民地大国にとって、この移行は特に苦痛を伴うものになっている。
記事原文のrl:https://strategic-culture.su/news/2025/08/09/britains-war-agenda-backfires-starmers-leadership-in-crisis/
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。