2025年8月25日月曜日

ガザに飢饉認定 国連総長「人災だ」 イスラエル「ガザ市制圧」を公言

  国連機関などで構成する専門家組織は22日、ガザ地区の最大都市ガザ市とその周辺地域で「飢饉が発生している」との判断を正式に示しました。「飢饉」は農作物の不出来を表す言葉なので違和感がありますが「総合的食料安全保障レベル分類」で「最悪事態。壊滅的状況」に当たるレベルです。

 国連のグテレス事務総長は22日、「これは人災。道徳的に非難されるもので人類の過ちだ」とイスラエルを非難し、即時停戦とガザヘの十分な人道支援の再開を強く求めました。
 共産党国会議員団は22日、虐殺と飢餓からガザの人々の命と人権を守るため、パレスチナに対する国家承認やイスラエルへの制裁など具体的行動を緊急に取るよう日本政府に要請しました。
 イスラエルは、ガザ市制圧へ9月中旬にも作戦を拡大する方針です。そうなれば「さらなる人道状況の悪化」「大虐殺」は避けられません。トランプは何故止めようとしないのでしょうか。
 しんぶん赤旗とNHKの記事を紹介します。
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ザに飢饉 正式認定 専門家組織アフリカ以外で初
                       しんぶん赤旗 2025年8月24日
 国連機関や支援団体などで構成する専門家組織は22日、食料状況に関する報告書を発表し、パレスチナ・ガザ地区の最大都市ガザ市とその周辺地域で「飢饉(ききん)が発生している」との判断を正式に示しました。ロイター通信などが伝えました。
「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」の報告書によると、8月15日現在、ガザ区全域の住民のほぼ4分のに相当する約51万人がフェーズ5の飢饉、壊滅的状況にひんしています。このうち約28万人がガザ市を含むガザ地区北部に居住。この地域が飢饉に陥っていると判断しました。
 また、ガザ中部デイルバラ、南部ハンユニスも来月末までに飢饉に見舞われる恐れがあると警告しました。
 IPCには欧州連合(EU)、ドイツ、英国、カナダが資金を提供し、21の支援団体、国連機関、地域機関が参加しています。これまでに2011年にソマリア、17年と20年に南スーダン、24年にスーダンの計4回、飢饉の発生を認定しています。アフリカ大陸以外で飢饉発生を認定するのは今回が初めてです。
 地域が飢饉にあると分類するには、少なくとも人口の20%が極度の食糧不足、子どもの3人に人が深刻な栄養失調、1万人に2人が毎日飢餓や栄養失調、病気で死亡することが条件となります。
 イスラエルは3月、ガザ地区への物資搬入を禁止しました。5月に再開しましたが、食料不足は続き、ガザ保健当局によると、7月に入り、栄養失調による死者が連日、報告されています
 イスラエルのネタニヤフ首相は「報告書は完全な虚偽」と強く否定。「イスラエルは飢餓を政策としていない」と主張しました。


国連総長「人災だ」 イスラエルを非難
                       しんぶん赤旗 2025年8月24日
【ワシントン=洞口昇幸】イスラエルの軍事攻撃や封鎖の継続でパレスチナ自治区ガザの中心部ガザ市で「飢饉(ききん)が発生している」とする国連機関などによる報告書の公表を受け、国連のグテレス事務総長は22日、「これは不可解な出来事ではない。人災であり道徳的に非難されるもので人類の過ちだ」と訴えました。イスラエルを非難し、即時停戦とガザヘの十分な人道支援の再開を強く求めました。
 グテレス氏は、声明で飢饉は「生存に必要なシステムの意図的な破壊」で引き起こされていると指摘。ガザを占領するイスラエルには「住民の食料や医療物資を確保する国際法上の明確な義務がある」と述べ、「免罪され、この状況が継続することは許されない。もう言い訳は通用しない。行動すべき時は今だ」と強調しました。


パレスチナ・ガザ危機 虐殺と飢餓から命と人権守れ 
      共産党国会議員団 政府に緊急要請
                       しんぶん赤旗 2025年8月23日
 日本共産党国会議員団は22日、国会内で、虐殺と飢餓からパレスチナ・ガザの人々の命と人権を守るため、パレスチナに対する国家承認やイスラエルへの制裁など具体的行動を緊急に取るよう日本政府に要請しました。田村智子委員長と山添拓政策委員長、本村伸子、堀川あきこ両衆院議員が、外務省の三宅浩史審議官に要請書を手渡しました。要請書全文

 イスラエルは1月に国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の活動を禁止する法律を施行。ガザ地区の食料配給所が激減し、集まった人々への発砲・殺害も相次ぐなど、危機的な人道状況を引き起こしています。さらにイスラエル政府は新たにガザ市制圧に関する計画を決定。今月20日にはエルサレム周辺の大規模な入植地建設を承認するなど、新たな領土拡大に乗り出しています。
 田村氏は「イスラエルの攻撃が子どもたちの死者を次々と生む悲惨な状況になっている」「これまでと次元が違うところに来ているという危機感から緊急に要請した」と要請の趣旨を説明。イスラエルへの制裁を加盟国に呼びかけた昨年の国連総会決議にふれ、制裁を国際社会に働きかけるよう政府に求めました。
 「日本とイスラエルの経済関係は深まっている」などと制裁に消極的な姿勢を示した三宅審議官に対し、田村氏は「イスラエルは重大な国際法違反を延々と繰り広げている。国際的な制裁の対象だ」と強調し、日本政府はその立場を明確にすべきだと要求。政府がイスラエルからの無人攻撃機輸入を検討している問題でも、「制裁対象国から巨額の武器を購入するなどありえない」と厳しく批判しました。
 山添氏はガザの危機的な状況にふれ、「これまでの延長ではない対応が必要だ」と指摘。「2国家解決に向けた国際社会の覚悟を示していくためにも、日本政府の態度が問われる」と述べ、パレスチナ国家をただちに承認するよう求めました。三宅審議官は「9月の国連総会に向けて政府内で検討を重ねている」と答えました。
 本村氏は、トランプ米政権がイスラエルのネタニヤフ首相に逮捕状を発行した国際刑事裁判所(ICC)に次々と制裁を科していることを批判。「米国政府にイスラエルへの加担を一切やめるよう要請すべきだ」と迫りました。


イスラエル ガザ市制圧へ9月中旬にも作戦拡大 イスラエル報道
                     NHK NEWS WEB 2025年8月23日
パレスチナのガザ地区の最大都市ガザ市の制圧に向けて、イスラエル軍が早ければ9月中旬にも作戦の拡大を始めるとの見方をイスラエルメディアが報じました。
国連はガザ市などで「飢きん」が発生していると発表していて、イスラエル軍が作戦を拡大すれば、さらなる人道状況の悪化は避けられない見通しです。
イスラエル軍はガザ地区への攻撃を続け、地元メディアは23日、南部ハンユニスや中部への空爆で19人が死亡したと伝えました。
イスラエルは今後、ガザ地区での軍事作戦を拡大し、100万人近くが身を寄せているとされる最大都市のガザ市を制圧する方針を示し、イスラム組織ハマスへの圧力を強めています。
これについてイスラエルメディアは22日、軍が、早ければ9月中旬にもガザ市への攻撃を始める見込みだと報じました。
作戦を開始する前には正当性を確保するため、北部のガザ市から住民を南部に退避させる計画で、近く、退避通告を出す予定だなどとしています。
国連は22日にはガザ市とその周辺で食料不足が最も深刻な「飢きん」が発生していると発表していて、現地では栄養失調などによる死者も相次いでいます
イスラエル軍が軍事作戦を拡大すれば、現地のさらなる人道状況の悪化は避けられない見通しです。

ユニセフ事務局長 “飢きん 最も恐ろしいことの一つ”
                     NHK NEWS WEB 2025年8月22
日本を訪問中のユニセフ=国連児童基金のトップ、ラッセル事務局長は22日、都内でNHKの単独インタビューに応じました。
この中で事務局長は、パレスチナのガザ地区の北部ガザ市とその周辺で食料不足が深刻化し「飢きん」が発生していると発表されたことについて、「豊富な資源がある時代に、子どもがおなかをすかせて死ぬことは、最も恐ろしいことの一つだ」としたうえで、「飢きんがガザ地区全体に広がらないようにしなければならない」と述べて、支援物資の供給が急務だと強調しました。
そのうえで、「紛争が続く中で支援物資などを供給するのは非常に難しい。ガザの子どもたちのよりよい未来のため、この紛争を止めなければならない」と述べ、停戦の必要性を訴えました。
ユニセフによりますと、ガザ地区ではおととし10月にイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってからこれまでに1万8000人以上の子どもが死亡しています。

支援物資 ヨルダンの倉庫で山積みに UNRWA“搬入制限解除を”
ガザ地区をめぐり、イスラエルは支援物資がイスラム組織ハマスの手に渡るのを防ぐためとして、ことし3月から国連による物資の搬入を制限しています。
このためガザ地区では食料事情が急速に悪化していて、地元の保健当局は、これまでに112人の子どもを含む271人が栄養失調などによって死亡したとしています。
国連の支援拠点となっているヨルダンの首都アンマン郊外にある倉庫には搬入できずに留め置かれた支援物資が山積みになっています。
倉庫には小麦粉32トンのほか、コメや油、それにパスタなど600トン、それに抗生物質などの医薬品が入った箱が天井付近まで積み上がり、一部は通路にも置かれていました。
UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の清田明宏保健局長は「ガザの人たちが飢え、亡くなっている中、状況を解決できる食料があるのに持って行けないというのは、許されない状況だ」と述べ、一刻も早い停戦の実現と、搬入制限の解除を強く求めました。


子どもたちが拾うのは…ガザ地区 物資投下の “限界”と混乱
                     NHK NEWS WEB 2025年8月24日
パレスチナのガザ地区では、イスラエルが支援物資の搬入を制限するなか、上空からの物資の投下が連日行われています。ただ、投下された物資に当たるなどして死傷者も相次いでいるほか、届けられる物資の量にも限りがあり、支援を行う国も、陸路での円滑な搬入に向けて国際社会としてイスラエルに圧力をかけるよう訴えました。
ガザ地区では、イスラエルが陸路での支援物資の搬入を制限していて、7月末からは各国が輸送機を使って上空から物資を投下する活動を連日続けています。
ヨルダンの首都アンマン郊外にあるヨルダン空軍の基地では、21日午前、ヨルダン軍やオランダ軍など各国の輸送機が待機し、ドイツ軍の輸送機では物資の積み込み作業が行われていました。
コメやパスタ、牛乳、缶詰などの食料は輸送用の台の上にまとめられ、パラシュートをつけて投下されます。
1台当たりの重さは300キロから1トンあり、基地を飛び立った輸送機はイスラエルの許可のもとガザ地区の上空に入り、次々と物資を投下しました。
ただ、物資の投下は、ガザ地区の人たちの助けになる一方で、危険も伴います。
ガザ地区の当局によりますと、投下された物資が直撃したり、海に落ちた物資を取ろうとして溺れたりするなどして、これまでに23人が死亡し、124人がけがをしたとしています。
また、国連によりますと、トラックを使った場合と比較して、輸送機で届けられる物資の量ははるかに少ないということです。
ヨルダン政府のモマニ報道官は「上空からの物資の投下だけでは不十分で、解決策にはならない。少しでも深刻な状況を改善する助けになればというだけだ」と述べたうえで、陸路での円滑な物資の搬入に向けて国際社会はイスラエルに圧力をかけるべきだと訴えました。

投下された物資を激しく取り合う人々 物資が直撃する事故も
NHKが物資の積み込み作業を取材した輸送機は、ヨルダンの基地を飛び立ち、ガザ地区上空で物資を投下しました。
NHKガザ事務所のサラーム・アブタホン カメラマンは、中部ヌセイラトの近くで、これらの輸送機から投下された物資に集まる人たちの姿を撮影しました。
映像では、多くの男性や子どもたちが空を見上げてパラシュートの付いた物資の動きを確認しながら、落下地点を目指して走っていきました。
落下地点には大勢の住民が殺到し、住民たちが物資を激しく取り合い、大きな混乱が起きていて、そのさなかに左肩をナイフで傷つけられたという男性もいました。
大人たちが食料などを回収したあとには、子どもたちが地面にしゃがみこみ、こぼれ落ちた豆やパスタなどを拾い集めていました。
子どもの1人は「売れるように豆を拾っています」と話していました。
投下される物資は重いもので1トンほどもあり、物資が直撃して住民が死亡する事態も相次いでいて、この日も物資の1つが「ドン」という大きな音をたてて住宅の屋根に落ちていました。
その直後、住宅前の通りでは、男性が長い棒を振り回しながら、物資を手に入れようと集まった人たちを追い払おうとしていました。
物資を手にれることができなかったという男性は「10人家族ですが、きょうは何も入手できず、家には食料も水もありません。物資の投下は屈辱的で、住民を死に追いやっています」と話していました。