2025年8月18日月曜日

米ロ首脳会談の評価(植草一秀氏)/ゼレンスキー「英雄」から「腐敗の象徴」へ ほか

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 アラスカで行われたウクライナ戦争終戦に向けてのトランプ・プーチンの両首脳会談について西側のメディアは高く評価しませんが、植草氏は大きな意味のある会談だったと評価しました。そしてプーチン「トランプが大統領であったなら戦乱は起きていなかった」と述べたことは事実であるとして、ウクライナ戦争の前史について語ります。
 その前史においては挙げて米国が責めを負うべき立場にあります。22年2月22日にロシアは特別軍事作戦を始動しましたが、当時バイデン大統領は「米軍は一切関与しない」からとまで言ってプーチンに軍事行動を煽ったのでした。
 それ以後西側のメディアはロシアが「悪玉」一辺倒の立場を貫いています。
 植草氏はロシアが軍事行動に至った経緯を簡単に述べていますが、それをリアルに伝えるものはオリバー・ストーンが制作したドキュメンタリー『ウクライナ・オン・ファイアー』であり、それを視聴しなければウクライナ問題の本質を理解することは不能であると述べます。

 併せて、川口 マーン 惠美の記事「ゼレンスキー英雄から腐敗の象徴~ウクライナ報道の“手のひら返し”の深層」 と
 櫻井ジャーナルの記事「アラスカでの米露首脳会談が終了、罵詈雑言を浴びせるしかないネオコンの苦境」を紹介します
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米ロ首脳会談の評価
               植草一秀の「知られざる真実」 2025年8月16日
米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領がアラスカで会談した。
事前の告知通り、この会談で停戦の合意は形成されなかった。グローバル資本勢力のメディアは会談を高く評価しないが大きな意味のある会談だったと言える。

プーチン大統領は「トランプが大統領であったなら戦乱は起きていなかった」と述べたが、これは事実であると言える。
2022年2月24日にロシアは特別軍事作戦を始動した。これをグローバル資本勢力メディアはロシアによる軍事侵攻と表現してきたが一面的な評価に過ぎない。
ウクライナ東部で内戦が生じており、東部2地域が独立を宣言し、ロシアは2国を国家承認した上で同2ヵ国と友好相互援助条約を締結。2ヵ国からの要請に基づいて国連憲章第51条が定める集団的自衛権を行使した。ロシアはこのロジックで特別軍事作戦を始動させた

この主張に対する反論が存在するが、ロシアがこの主張を示してきたのは事実である。
グローバル資本勢力メディアはロシア側の主張を伝えずに、一方的に「ロシアによる侵略」と表現してきた。2年2月のロシアの特別軍事作戦始動に至る経緯を踏まえるとロシアの主張が一概に否定されるものではないことが分かる

ウクライナはかつてソビエト連邦に所属する共和国だった。ウクライナが独立したのは1991年8月。独立して34年しか経過しない歴史の浅い国家である。当初は親ロシア国家であったが2004年と2014年に、それぞれ政権転覆が生じている。政権転覆を主導したのは米国と見られる。

米国は世界一極支配戦略の核としてウクライナでの親米政権樹立に執着し続けてきた。
2014年に暴力革命によって政権転覆が図られた。この暴力革命により非合法政府が樹立されたが、この非合法政府をいち早く国家承認したのが米国である。
樹立された非合法政府は「ウクライナ民族社会設立」を宣言し、東部のロシア系住民地域に対する激しい弾圧と武力攻撃を展開した。これにロシア系住民が抵抗してウクライナ内戦が勃発。

このウクライナ内戦を収束するためにミンスク合意が制定された。
東部2地域に高度の自治権を付与することで内戦を終結させる合意が成立した。東部2地域に高度の自治権が付与される場合、ウクライナのNATO加盟は消滅する。
ウクライナのNATO加盟を防ぐことがロシアの最大の要請だった。

ミンスク合意は国連安保理で決議された国際法である。
ウクライナ政府がミンスク合意制定に動いていれば2年の戦乱は生じていない。
しかし、ドイツのメルケル首相は、ミンスク合意がウクライナが対ロシア戦争への準備を行う時間稼ぎのものであったことを暴露した。ミンスク合意はだまし討ちだったのである。

この間の経緯をノンフィクションで描いているのがオリバー・ストーンが制作した『ウクライナ・オン・ファイアー』https://www.nicovideo.jp/watch/sm42397460
このドキュメンタリーを視聴しなければウクライナ問題の本質を理解することは不能である。

ロシアはウクライナのNATO加盟を死活的問題と捉えてきた。その上で、米国に対しても現実的な問題解決の現実的提案を提示し続けた。これを意図的に無視してロシアの軍事行動を誘発したのは米国である。ゼレンスキーは米国の傀儡政権として米国の工作にそのまま乗った。
ウクライナ戦争は米国が仕組んで創作した戦争と言って過言でない。その総指揮者はバイデン前大統領だった。

この意味で22年の米国大統領がトランプだったら戦乱は生じていないとの発言は正鵠を射ている。ゼレンスキーは昨年4月に任期を満了しており、現在は大統領としての地位に対する正統性を有していない。
最重要であるのは戦乱の終結。これまでの経緯を踏まえると、現在の占有値を基準に停戦を実現させるしかない。戦乱の継続は新たな犠牲者を増やすだけだ。
トランプとプーチンが主導してゼレンスキーを譲歩させる方向で停戦協議が遂行される可能性が高い。この方向で停戦が実現する場合、トランプはノーベル平和賞を受賞することになる可能性が高い。

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ゼレンスキー「英雄」から「腐敗の象徴」へ…ドイツで起きたウクライナ報道“手のひら返し”の深層
                  川口 マーン 惠美 現代ビジネス 2025.08.01
戦争で急にウクライナを持ち上げ始めた独メディアの変遷
ウクライナのゼレンスキー大統領をあたかも世紀の英雄のように持ち上げ、ウクライナ国民がその大統領の下で一丸となって、ロシアの横暴に抗していると報道し続けていたドイツの主要メディアであったが、7月初め、突然、「ウクライナはヨーロッパで一番腐敗した国である」と言い出した。何のことはない、ウクライナ戦争の始まる前までは広く共有されていた認識だ。

それなのに、ウクライナ戦争勃発以来、主要メディアがその常識を覆したことに、私ははっきり言って驚いていた。そして、その後はあれよあれよという間に、「ウクライナの戦いは民主主義の防衛」というストーリーが作り上げられ、ドイツ政府がウクライナに莫大な支援を注ぎ込んでいるのは正当なこととされた。しかも、ウクライナはロシアと互角に戦っており、勝利さえあり得るかのような報道が続いたのだ。
ただ、戦地に動員されたら最後、休暇も貰えないまま呻吟しているウクライナ兵士たちの姿が、愛国と勇気の象徴とされていたのはおかしくないか? 
常識で考えれば、激戦に巻き込まれて帰れなくなったわけでもなし、ドイツの記者が訪れて塹壕内の住まいなどを取材しているというのに、兵士らが何年も休暇ももらえないのは奇妙だった。
一方、独立系のメディアはどこも、兵士のリクルートが日増しに過激になっているということを、繰り返し報道していた。路上で突然、何者かに乱暴に拘束され、そのまま徴兵、トラックに積まれて前線へ…。ドイツ語ではこういう兵士を「大砲の餌」という。大砲の砲身に詰められる弾丸のように、使い捨ての資源という意味だ
そうするうちに今年の7月、ゼレンスキー大統領はEUに、傭兵の給料を支払うお金まで要求した。「傭兵はウクライナを守るための大切な武器である」として。実は、ウクライナで多くの傭兵が戦っているという話は、やはり独立系のメディアがかなり前から報道していた。
しかし、その一方で、ドイツに避難している120万人のウクライナ人の6人に1人が健康そうな徴兵年齢の男性なのは何故か? 彼らの運転するウクライナナンバーの自家用車が、現在、ドイツでは結構目に付く。
 
ウクライナ報道が変わり始めた理由
ところが今、冒頭に記したように、主要メディアによるウクライナ報道が俄に変わり始めた。すでにゼレンスキー大統領の報道写真は、これまでのような勇姿ではなく、顔の半分が影になったようなものや、邪悪そうなイメージのものに変わりつつある。ちなみに、こういうあからさまな印象操作をするから、ドイツのメディアは信用できない。
ただ、報道の中身だけは少しまともになった。報道内容の転換のきっかけは、国家汚職対策局(NABU)と特別汚職対策検察庁(SAP)という汚職を摘発する機関を当局の管理下に置くという法案に、ゼレンスキー氏が署名したこと。腐敗撲滅にとっては完全な逆行となる

ウクライナの腐敗度は尋常ではない。ここ数年、この両機関のおかげで最高裁の長官や国防相が逮捕されたが、そんなものは氷山の一角だ。それどころか、西側から受けた膨大な支援を一番多く着服しているのは、ゼレンスキ氏だと言われている
ただ、ウクライナの秘密警察はソ連のKGBの流れを引いているので、国民の監視や野党の弾圧にかけてはことのほか“優秀”だ。国民の間でいくら不満が膨張しても、これまではゼレンスキー批判は全て封じ込められてきた。ちなみに氏が大統領の任期がとっくの昔に切れているにもかかわらず、未だに選挙をしないのは、大統領でいる間は逮捕される心配がないからだそうだ。
ところが、今回だけはそうは問屋が下ろさなかった。ゼレンスキー氏の怪しさなど百も承知ながら、散々英雄扱いしてきたEUが、やおら、氏に、法案についての説明を求めたのだ。
しかも、その途端、なぜか突然、ウクライナ国民も立ち上がった。7月22日に首都キエフの大統領府前で始まった抗議活動は、25日には1万人以上に膨れ上がった。その他、オデッサ、ドニプロ、リヴィウなどでも小規模のデモが起こったという。
デモの目的は、公には、汚職摘発のための機関を骨抜きにしようとする政府への抗議。汚職対策が滞ればEU加盟への道が閉ざされてしまうというのが、デモ参加者の最大の懸念とされた。ただ、国民が弾圧されている同国で、このようなデモが起こったこと自体がすでに不思議だ。しかも、EUと連携したかのような絶妙なタイミングで。一体何が起こっているのか?
 
背後にはNATOの思惑
思えば11年前の2014年にも、キエフで大規模なデモが起こり、親露政権であったヤヌコヴィッチ大統領が失脚した。当時、ウクライナ国民は民主主義への希望に燃えたが、この動きの背後にいたのがオバマ政権であり、CIAであったことは、今では周知の事実だ。マイダン革命といわれたこの運動は、結果として、ウクライナに民主主義をもたらすことはなかった。
それを思えば、今回も当時と同じく、何らかの外国勢力が国際NGOなどを駆使して介入し、裏から糸を引いている疑いは否めなかった。つまり、背後にいる人たちの目標は、ズバリ、「ウクライナ国民によるゼレンスキー排除」か。そうだとすれば、その後のシナリオは?
7月23日のNZZ(新チューリッヒ新聞)に、NATOのロブ・バウアー元提督(オランダ人)のインタビュー記事が載った。それによれば、ロシアは敵で、NATOの目的はロシア成敗。NATO設立の本来の目的は、「ロシア人を締め出し、アメリカ人を引っ張り込み、ドイツ人を抑え込むこと(keep the Russians out, the Americans in and the Germans down)」だったので、NATOの精神は今も変わっていないらしい。
そう思えば、今のNATOが停戦を望んでいる振りをしつつ、ウクライナへの武器供与をどんどんエスカレートさせてきた矛盾も、ウクライナ戦争を終わらせまいとしている理由も、ストンと腑に落ちる。
しかし一方で、現在、そのNATOの永遠の作戦が、急速に狂い始めているのではないか。なぜなら、現在の米国を率いているのがトランプ大統領だからだ。米国の大統領が対ロシア戦争を邪魔するなど、NATOにとっては想定外だったに違いない。
ただ、そうは言っても、米国抜きのNATOが戦争を継続することは不可能だ。だからこそ、戦争継続派のドイツ、フランス、英国の政府が右往左往しているのだ。そして、その他の多くの政治家も、この事態に付いていけていない。
さらに、メディアに登場する“専門家”(実際は政府の代弁者・政府と見解の異なる専門家は主要メディアには呼ばれない)の予測も、最初から外れてばかりだ。ロシアの侵攻後、彼らはEUの対ロシア経済制裁を過大評価し、「ロシアはすぐに音を上げるだろう」と言った。
しかし、それが失敗したと見ると、今度は「ロシアは周辺国を侵略するつもりだ」とロシアの悪魔化に励み、今では、「ロシアは和平を拒絶し、ヨーロッパに攻め込む機を狙っている」と国民の恐怖を煽っている。そしてEUは案の定、突然、ここぞとばかりに軍備増強に莫大な予算を注ぎ込み始めた。
停戦が1日延びれば、ウクライナでもロシアでもさらに多くの命が失われていく。しかし、EUのエリート政治家たちがそれを憂えているとは思えない。だから、和平交渉にはロシアがのめない条件を出し、「ロシアが和平を拒んでいる」と非難。ロシアにしてみれば、勝ち戦の自分たちが、なぜ不利な条件を呑まなければいけないのかというところだろう。
 
振り回されるウクライナの未来
ドイツ政府は目下のところ軍拡にことのほか熱心。自動車産業が斜陽なので、戦車やミサイルで雪辱を図るつもりだろう。すでに今、軍需産業は近年にない大繁盛だが、これを継続させるには是非とも戦争が必要だ。火種はすでにあちこちで燻っている。
では、ゼレンスキー大統領は? これまで氏の存在は、世論をウクライナ支援で固めるために大いに役立った。だからこそ皆、氏が集金に来るたびに、差し出されたシルクハットの中に景気良くお布施を投げ込んだのだ。
ただ、ゼレンスキー氏は自分が操り人形であることを忘れ、あまりにもつけ上がり過ぎた。必要がなくなった人形は捨てられる。失脚の時が近づいている

蛇足ながら私は、ゼレンスキー氏の力強い後援者であった欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も、早晩、セットで辞任になると思っている。世界に不幸をもたらし、役職を離れた途端に罪に問われるかもしれない危ういところが両者の共通点だ。あるいは、スターマー英首相、マクロン仏大統領、メルツ独首相も道連れになるかもしれない。
一方、気の毒なのはウクライナ国民だ。NATOの加盟国でないから、いざとなったら捨て置かれる。列強は容赦なく、土地も資産も天然資源も全てを奪い、その結果、さらに多くのウクライナ人が祖国を捨ててEUに向かうだろう。ヨーロッパの混乱は終わらない
さて、ここで気になるのはドイツ人の動向だ。この3年間、二転三転の公共放送のニュースを素直に信じ、ゼレンスキー大統領の一挙手一投足に感動したり、心を痛めたりしていたドイツ人だが、今後は一気にゼレンスキー批判に転じるのだろうか。

報道のどこら辺に真実があるのか、それを見極めるのは至難の業だ。ドイツの公共放送は、公平な報道をするという条件で国民から少なからぬ視聴料を取っているが、とてもその義務を果たしているとは思えない。特に、大きな声で正義の味方ぶって流されるニュースには、厳重注意。ニュースの吟味と解釈は、私たちの自己責任である。


アラスカでの米露首脳会談が終了、罵詈雑言を浴びせるしかないネオコンの苦境
                          櫻井ジャーナル 2025.08.17
 ウラジミル・プーチン露大統領とドナルド・トランプ米大統領がアラスカのエルメンドルフ・リチャードソン基地で会談、ロシア側からユーリ・ウシャコフ大統領補佐官、セルゲイ・ラブロフ外相、アメリカ側からマルコ・ルビオ国務長官、そして大統領特使のスティーブ・ウィトコフが同席した。会談後、両国から正式な発表はなく、実際に何が話し合われたのかは不明だ。会談はレッドカーペット上での短い会話を含め、3時間にわたった。
 プーチン大統領は会談の「建設的で敬意に満ちた」雰囲気を称賛し、トランプ大統領との合意が新たな国際バランスへの政治的移行への道を開くことを期待すると述べ、トランプ大統領は正式な合意に至っていないことを認めつつも、会談は「非常に生産的」だったと述べた。

 今回の会談でもウクライナ問題に関してロシア側の要求は変化していない。ウクライナの非軍事化、非ナチ化、NATO非加盟の保証、ロシア国境付近への西側諸国軍の展開の制限、ウクライナに対する武器供与の制限、ウクライナにおけるロシア語の特別扱い、また西側諸国が凍結したロシア資産を返還し、ウクライナの中立を維持するほか、領土の「現実」(ドネツク、ルハンシク、ザポリージャ、ヘルソン)を承認することなどだ。
 この会談でトランプが口にしていた「制裁」などは消え、アメリカの有力メディアに登場するコメンテーターはプーチンに対して罵詈雑言を浴びせていたが、それしか「コメント」することができなかったようである。今回の会談で中国などからのウクライナ和平に関する圧力も減ると見られている。

 2013年11月から14年2月にかけてアメリカのバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒し、そこからアメリカの対ロシア戦争は本格化していくのだが、ウクライナ国内にはクーデター体制を拒否する人びとは少なくなく、ミンスク合意による「停戦」で戦力を増強するための時間を稼ぐ必要があった。
 オバマ政権を戦争へと導いたのはシオニストの一派であるネオコンだが、この勢力は1970年代、ジェラルド・フォード政権で台頭、どの政権でも軍事と外交に大きな影響を及ぼしてきた。ソ連が消滅した直後に「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」を作成、それに基づいて世界征服プロジェクトを始めたのもこの勢力。このプロジェクトはソ連が消滅した後にロシアを属国(植民地)にできたという前提で作成されているのだが、その前提た21世紀に入ってプーチンがロシアを再独立させたところで揺らぎ始め、迷走することになった。
 西側の有力メディアはオバマのクーデターを正当化するために「暴君を民衆が倒した革命」というイメージを広め、その「勇敢な革命政権がロシアを倒そうとしている」と宣伝してきた。ロシア軍は崩壊寸前で、ロシア経済は破綻しているというわけだ。これはソ連消滅直後にネオコンが作成したシナリオにはそう書かれているのだが、その御伽話が現実によって崩壊しつつあり、ネオコンの宣伝機関と化している有力メディアは慌てている。

 ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官はアラスカでの会談について、両国間の正常な対話が再開し、危険な状況に陥っている戦略問題と軍備管理問題への対応を始めることが重要なのだとしている。つまり、今回の会談で何か重要なことが決まったということではないということのようだ。ウクライナの問題でもプーチン大統領はこれまでに示してきた停戦条件を維持し、この問題で特に大きな変化は見られなかった
 それに対し、イギリスの情報機関や政策立案者たちは米露首脳会談を阻止すべきだと主張していた。ロシアとアメリカが正常な対話を再開して緊張が緩和されることを恐れている。アラスカで会談が開かれる直前にはアメリカのE-3A(AWACS)、E-7T(AEW&C)、11日からはイギリス軍のRC-135偵察機がクリミアからクラスノダールにかけての空域を飛行、何らかの作戦を目論んでいるのではと見られていた。

 そうした中、8月14日にロシア軍はウクライナ北部のチェルニーユにある軍事訓練場を短距離弾道ミサイルのイスカンデルMで攻撃、数十人が死亡したと伝えられている。ここではウクライナ人約70名とイギリス人約30名の工作員がクリミアとクラスノダールを攻撃する準備を進めていたという。イギリスは追い詰められているようだ。イギリスの対外情報機関MI-6のエージェントだと見られているウォロディミル・ゼレンスキーの立場も厳しくなっている