2025年8月18日月曜日

戦後80年の8月15日 歴史が教える軍事同盟の危険/靖国参拝 政治家の歴史偽造を許さない(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗が終戦記念日の15日、「戦後80年の8月15日 歴史が教える軍事同盟の危険」という主張を掲げました。
 記事は「侵略戦争から何を学び、どう向き合うのか―。『政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起る』(憲法前文)ことを許さないため、今日の課題として鋭く問われています」と書き出され、軍部でさえ確かな勝算も持てないまま日本が太平洋戦争を始めた背景として、「重要な要因のひとつに軍事同盟の存在がある」と述べます。
 日本はついに米国との間に 集団的自衛権の行使を含む軍事同盟を結びました。一部には、それを安心の得られる到達点であるかのように評価する向きがありますが全く逆であり、日本の安全に何の関係もない(米軍が構想する処の)「台湾有事」の際には、日本が米軍の尖兵になることまでが要請されました。それは直ちに日中戦争に直結することを意味します。
 中国、韓国、ロシアは日本の隣国です。そこを敵視する軍事同盟に、戦争を放棄した「憲法9条」を持つ日本が何故入らなければならなかったのか。
 記事は「二度と戦争をしない。憲法に刻まれた原点をあらためてかみしめるときです」と結ばれています。

 併せてしんぶん赤旗のもう一つの主張戦後80年 靖国参拝 政治家の歴史偽造を許さない」を紹介します。
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主張 戦後80年の8月15 歴史が教える軍事同盟の危険
                       しんぶん赤旗 2025年8月15日
 絶対主義的天皇制のもと侵略戦争を続けてきた日本政府がポツダム宣言の受諾を表明、無条件降伏した1945年8月15日から、80年です。
 いま日本の政治の舞台で先の戦争が「侵略戦争」であったことを公然と否定する言動が目立っています。侵略戦争から何を学び、どう向き合うのか―。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起る」(憲法前文)ことを許さないため、今日の課題として鋭く問われています

■侵略美化する暴論
 歴代自民党首相は日本の戦争が侵略戦争であったことを認めないばかりか、安倍晋三首相(当時)に至っては「間違った戦争」という認識さえ示しませんでした自民党の西田昌司参院議員がひめゆり学徒隊の歴史をゆがめるとともに「侵略戦争でなかった」と強弁したのは記憶に新しいところです。参政党の神谷宗幣代表は「領土野心はなかった」「植民地の支配者を追い出しただけ」と美化します。これらは全く事実をゆがめ、歴史を偽造する暴論で、国際社会では通用しません。
 侵略戦争擁護者は米国などが日本を経済封鎖したのが戦争の原因といいますが、事実は日本が中国侵略を拡大し、撤退要求を拒否したため、経済制裁を受けたのです。
 大本営政府連絡会議、御前会議で決定された「大東亜政略指導大綱」(43年5月)では、マライ、スマトラ、ジャワ、ボルネオ、セレベスは「帝国領土と決定」すると領土野心を明記しています。
 だからサンフラシスコ講和会議で、日本に「感謝」した国はなく、侵略の非難がアジア各国から続いたのです。
 今日、教訓としなければならないのは、軍部でさえ確かな勝算も持てないまま、無謀かつ無責任な戦争に突っ込んだ重要な要因のひとつに軍事同盟の存在があるという事実です。日本はドイツ軍の攻勢に力をえ、世界再分割の軍事同盟・日独伊三国同盟によって戦争態勢をつくり、対米英開戦に突きすすんだのです。
 侵略戦争の歴史を見れば、日露戦争も日英同盟に支えられて踏み切ったのです。
 第1次大戦でも、日英同盟を根拠にドイツに宣戦布告、中国にある根拠地を接収し、南洋諸島も占領しました。

■米国の戦争に参戦
 戦争へと道を誤らないためには軍事同盟から手を切るべきです。これは日本だけでなく世界の痛苦の教訓です。だからこそ国際連合が生まれ、武力行使を禁止し、軍事同盟でなく、集団安全保障が打ち立てられたのです。
 もっとも日米軍事同盟は、戦前の日本が結んできた軍事同盟とは大きく違う点があります。それは、占領の継続としての国家的従属の軍事同盟だということです。
 その結果、日本は米国の戦争に巻き込まれ、自動参戦する危険にさらされています。台湾有事を念頭に「日本は西太平洋で最前線に立つ」(ヘグセス米国防長官)というのも米国の要請に他なりません。敵基地攻撃も、実際には米軍の情報、指揮のもとに自衛隊がおこなうことになります。
 二度と戦争をしない。憲法に刻まれた原点をあらためてかみしめるときです。


主張 戦後80年 靖国参拝 政治家の歴史偽造を許さない
                       しんぶん赤旗 2025年8月17日
 戦後80年、戦場で戦った兵士の生存者がごくわずかとなり戦争体験世代の政治家も減るなか、日本の植民地支配と侵略戦争を美化する新たな動きが起きています。国会議員が、日本軍の南京虐殺を公然と否定するなど、看過できません。政治家による歴史の偽造を止める必要があります。
 15日、現役閣僚2人のほか自民党保守派や超党派の議員連盟(自民、維新、国民民主、参政、日本保守など)の国会議員が靖国神社を参拝。参政党は国会議員18人全員と地方議員合わせて88人が集団参拝しました。
 これらの政治家が一様に口にするのは、「国策に殉じた」「尊い犠牲」への「尊崇の念」です。参政党の神谷宗幣代表は「国を守るため、みんなを守るために戦われ尊い命を失った方々」への「感謝と追悼」だとのべました。

■侵略だと認めない
 しかし、先の戦争は中国・アジアへの侵略戦争です。「国を守るため、みんなを守るため」の戦争ではありません。
 これらの政治家の発言の根底にあるのは、日本の行った戦争を侵略戦争だと認めない誤った歴史認識です。
 神谷氏は那覇市での街頭演説(6月23日)で、日中戦争について「(日本は)中国大陸の土地なんか求めてない。日本軍が中国大陸に侵略していったのはうそだ」「中国側がテロ工作をしてくるから自衛戦争としてどんどんどんどん行った」とのべました
 しかし、中国が日本に攻めてきたわけではありません。朝鮮を植民地化した日本がさらに中国に侵攻し、中国の領土に満州国という傀儡(かいらい)国家をつくり、開拓団を送って中国農民の土地を奪い、中国国民に残虐行為を行ったのです日本の侵略に抵抗した中国側こそが自衛の戦いでした
 戦後50年の「村山談話」は日本の「植民地支配と侵略」を「疑うべくもない」歴史の事実と認めました。しかし、戦後70年の安倍晋三首相(当時)の談話は、日本の植民地支配と侵略戦争に触れず、日露双方が朝鮮や中国東北部の支配を争った侵略戦争である日露戦争を称賛しました。

■無残な戦死を美化
 安倍氏ら、日本の侵略戦争に無反省な勢力が政治の中枢を占め、教科書の歴史記述にも介入してきたことが、参政党ら侵略否定の極右的潮流につながっています。歴史の事実に反する参政党の発信がSNSなどで力を持ちかねないだけに、歴史の偽造を許さない取り組みが求められます。
 日本軍兵士は、天皇制政府の誤った国策で無残な死を遂げた犠牲者でもあります。しかし、それを「尊い」と美化することは、いまの「戦争する国づくり」のなかで、誤った国策のために死ぬことを肯定・推奨することです。
 そもそも靖国神社は、国民が戦死をいとわないための精神的支柱でした。戦争犠牲者でも、空襲や原爆の犠牲者など、軍人・軍属以外は祭られていません。戦争犠牲者追悼・不戦の誓いの場所ではなく、いまも日本の行った戦争を「アジア解放」の戦争だとする侵略戦争肯定の施設です。
 政治家の侵略戦争美化を厳しく批判し、対峙(たいじ)していかなければなりません