2025年8月30日土曜日

中国の重要鉱物への支配が米国の防衛サプライチェーンを混乱させる(賀茂川耕助氏)

「耕助のブログ」に掲題の記事が載りました。
 この記事は賀茂川氏による28日付の記事の続報(乃至詳報)に当たるものです。
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   8月28日)中国は自国の部品で作られたミサイルで攻撃されることを望んでいない

 トランプは中国に対して絶対的優位を持っているという認識で関税戦争を仕掛けましたが、レアアース(稀金属元素)という思わざる「伏兵」によって立場が逆転しました。
 まさに不用意にパンドラの箱を開けてしまったわけで 米国の軍需産業は大いに困窮しています。
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中国の重要鉱物への支配が米国の防衛サプライチェーンを混乱させる
                  耕助のブログNo. 2637 2025年8月28日
  China’s Grip on Critical Minerals Disrupts US Defense Supply Chain
                            by Tyler Durden

2023年、レイセオンのCEO、グレッグ・ヘイズは、米国が希土類やその他の材料について、中国からの輸入または中国での加工に依存しているため、北京は事実上、米軍のサプライチェーンを掌握していると警告した{1}。
ヘイズによると、レイセオンは「中国に数千のサプライヤー」を抱えており、そのため「デカップリング⇒断絶)は不可能」だという。
「デ・リスク⇒リスクの低減)はできるが、デカップリングは不可能」と、同氏はFinancial Times{2} に語り、これは「すべての人に当てはまる」と付け加えた。

「中国から米国への年間 5,000 億ドルの貿易額を考えてほしい。レアアースやメタルの95%以上は中国から輸入されているか、中国で加工されている。代替品はない」と彼は述べた。
それから2年後の今、中国の重要鉱物の輸出制限{3}が米国の防衛サプライチェーンに波及し、生産スケジュールが遅延し、製造メーカーは弾薬から戦闘機まであらゆる製品に必要な希少素材を世界中で探し求める事態となっている
要するに、今年初めの米中貿易摩擦の激化を受けて北京はレアアース輸出の管理を強化した。トランプ政権が6月に貿易譲歩合意に達した後、これらの輸出は再開されたが、 中国は防衛用途向けの材料の輸出を厳格に制限し続けている。世界のレアアース生産量の約90%を占め、他の戦略的鉱物の供給も支配する中国は、12月以来、ゲルマニウム、ガリウム、アンチモンの米国への販売を禁止している。これらの3つの金属は、弾丸の硬化、夜間視認光学装置、その他の軍事用途に不可欠だと、The Wall Street Journal {6}は報じている。
一部の請負業者は、在庫が危険なほど少なくなっていると警告している。レオナルドDRSの最高経営責任者(CEO)であるビル・リンは水曜日、同社のゲルマニウムの在庫が「セイフティーストック」レベル(保持する最低限の在庫量)まで減少したと述べた。この金属はミサイルや他のシステム用の赤外線センサーに用いられている。同氏は投資家に対し、「2025年後半までに材料の供給が改善されなければ、製品のタイムリーな納品を継続できない」と述べた。イタリアのレオナルドの米国子会社であるレオナルドDRSは、代替供給元や代替品の探索を進めている。

他の企業ではすでに供給不足により納期遅延が発生している。米軍に部品を供給するドローン部品メーカーは、レアアースから製造される磁石の非中国産調達先を探る中で、注文を最大2ヶ月遅らせた。取引業者によると、一部の材料の価格は数倍に跳ね上がっている。ジェットエンジン用の高温磁石に用いられるサマリウムは、通常価格の60倍で取引されている。
国防総省は防衛関連企業に対し、2027年までに中国産鉱物を含む磁石の使用を段階的に廃止するよう指示した。一部の企業は磁石を備蓄しているが、他の重要な材料については数ヶ月分の在庫しか持っていない。特にリスクが高いとされているのは、リソースが限られたスタートアップ企業が多い小型ドローンメーカーだ。
航空宇宙産業協会(AIA)の国際担当副会長、ダク・ハードウィックは、この問題は業界内で常に議論されていると述べた。「この問題について、我々は毎日話し合っていると言える」と彼は語った。

防衛ソフトウェア企業Goviniの最近の分析によると、米国の兵器システムに使用されている8万点以上の部品に、現在中国の輸出規制の対象となっている鉱物が含まれているという。ほぼすべてのサプライチェーンが少なくとも1つの中国産原料に依存している。
西側のバイヤーたちは中国当局が出荷を承認する前に、製品や生産ラインの画像を含む詳細な情報開示を要求し始めたと述べている。5月、ニューハンプシャー州に本社を置くePropelledは、中国のマグネットサプライヤーから同様の要請を受け、顧客に関する質問リストとマグネットが軍事目的で使用されないことを保証する文書を求められた。「もちろん私たちはそのような情報を中国政府に提供しない」と、同社のグローバル販売担当副社長クリス・トンプソンは述べた。同社が提供を拒否すると出荷が停止し、納期は通常の2倍に延びた
同社は米国、欧州、日本、台湾のサプライヤーに依存しているが、ノースカロライナ州のVulcan Elementsとオクラホマ州のUSA Rare Earthといった新興メーカーを加えた。これらの新規供給元は今年後半まで出荷できず、独自の非中国サプライチェーンを構築する必要がある見込みだ。

ワシントンも対応を開始している。国防総省は、防衛用衛星用のゲルマニウム基板を製造するカナダの企業に昨年 1,400 万ドルの助成金を支給し、米州最大のレアアース鉱山を運営する MP マテリアルズ社 4 億ドルの出資を行った。ロックウェル・マーティン社のジェームズ・タイケット最高経営責任者(CEO)は、決算発表で、MP マテリアルズ社との契約はF-35 戦闘機や巡航ミサイルに必要な磁石の確保にとって「画期的な」ものだと述べた。
マサチューセッツ州に拠点を置く Phoenix Tailings の CEO、ニコラス・マイヤーズは、大手防衛企業は現在、独自の鉱物供給を確保するために積極的な動きを見せていると述べた。「彼らは、自ら関与しなければ磁石を入手できないことを認識している」と語った。

北京の強硬な姿勢は輸送中の貨物にも影響を及ぼしている。今年初め、米国アンチモン社は、オーストラリアで採掘した 55 メートルトンのアンチモンを、これまで問題なく利用してきた中国の寧波港を経由してメキシコの製錬所に輸送しようとした。4 月、中国税関は 3 ヶ月間にわたってこの貨物を保留し、最終的にはオーストラリアへの返送を条件として解放した。貨物が到着したとき、同社の最高経営責任者(CEO)であるゲイリー・エヴァンス氏は、封印が破られていたと述べた。「海運会社も、この件に関わった誰もが、このようなことは今まで見たことがない」と彼は述べた。

Links:
{1} https://www.zerohedge.com/markets/raytheon-ceo-china-has-us-military-balls 
{2} https://www.ft.com/content/d0b94966-d6fa-4042-a918-37e71eb7282e 
{3} https://www.wsj.com/world/china/china-rare-earths-exports-2fd0dab4 
{4} https://www.zerohedge.com/signup 
{5}https://www.zerohedge.com/markets/coming-rare-earth-revolution-and-how-profit-all-you-need-know-about-ex-china-supply-chain 
{6}https://www.wsj.com/world/asia/china-western-defense-industry-critical-minerals-3971ec51 

https://www.zerohedge.com/military/chinas-grip-critical-minerals-disrupts-us-defense-supply-chain