イスラエル軍はすでにガザ地区の75%を制圧しており、最大都市ガザ市には避難民も含め90万人がいます。
8日、イスラエルの治安閣議がガザ地区の最大都市ガザ市を制圧する計画を承認したことに対し、国連関係者や各国が一斉に「ジェノサイドの新段階」「国際法違反だ」などと非難しています。
EUのコスタ大統領、英国のスターマー首相、ベルギーのプレボ外相、フランスのバロー外相、デンマークとオランダの外相らは、声明やXで「さらなる流血を招く誤り」「国際法の重大違反となり完全な行き詰まりを招く」と一斉に非難しました。
パレスチナ自治政府の議長府は「ジェノサイド政策や組織的殺害、飢餓、封鎖の継続であり、国際人道法や国連決議への重大な違反」と非難しました。アラブ連盟のアブルゲイト事務局長は「全面的に拒否する」と表明し国際社会に断固たる対応を訴えました。
トルコ外務省、サウジアラビア外務省、ヨルダン外務省は、「イスラエルのジェノサイド拡張の新たな段階は、パレスチナ人民に対する飢餓、虐待、民族浄化という犯罪である」と強く非難しました。
国連のグテレス事務総長は、「危険なエスカレーション」であり、すでに壊滅的な状況をさらに悪化させる恐れがあると警鐘を鳴らし、「違法な駐留を連やかに終わらせる義務を課した国際司法裁判所の勧告的意見を順守するよう」強く要求しました。
しんぶん赤旗の6つの記事を紹介します。
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ガザ市制圧計画に非難
しんぶん赤旗 2025年8月10日
イスラエル政府が8日の治安閣議でパレスチナ・ガザ地区の最大都市ガザ市を制圧する計画を承認したことに対し、「ジェノサイド(集団殺害)の新段階」「国際法違反だ」などと国連関係者や各国が一斉に非難しています。
欧州各国 国際法・国連決議に違反
【ベルリン=吉本博美】欧州連合(EU)のコスタ大統領はX(旧ツイッター)への投稿で、イスラエルの今回の決定に基づく軍事作戦は「国際法の基本原則と普遍的価値を損なうものだ」と指摘しました。EUとイスラエルの外交関係にも深刻な影響を与えるとして、イスラエルに対し撤回を強く求めました。
英国のスターマー首相はXで、イスラエルの軍事作戦はさらなる流血を招く誤りであり、即時再考するよう求めると表明しました。外務省前では英国在住のイスラエル人と支援者約100人がデモを実施し、イスラエルヘの即時制裁とガザでの停戦を求めました。
ベルギーのプレボ外相はイスラエル大使を緊急召喚し、決定の撤回とヨルダン川西岸の併合を即時中止するよう求めました。さらに声明で、イスラエルの一連の軍事行動はパレスチナを世界地図から完全に抹消する可能性があり「国際法、国連決議、国際司法裁判所(ICJ)の判決に反する」と非難しました。
フランスのバロー外相は声明で「国際法の重大違反となり完全な行き詰まりを招く」と警告。デンマークとオランダの外相もそれぞれ声明を発表し、ガザの人道状況への強い懸念を示し、さらなる壊滅状況を招く決定を撤回するよう求めました。
中東諸国 前例なき大惨事を招く
しんぶん赤旗 2025年8月10日
【カイロ=米沢博史】パレスチナ自治政府の議長府はジェノサイド(集団殺害)政策や組織的殺害、飢餓、封鎖の継続であり、「国際人道法や国連決議への重大な違反」と非難しました。ガザ地区の北部から南部への強制移住を伴う全面的な再占領は、前例のない人道的大惨事を招くと警告し、国連安保理など国際社会に対応を求めました。
アラブ連盟(加盟22力国)のアブルゲイト事務局長は、ガザ住民の大量追放と再占領というイスラエルの真の戦争目的を露呈したものであり、全面的に拒否すると表明。国際社会に断固たる対応を訴えました。
トルコ外務省は「イスラエルのジェノサイド政策拡張の新たな段階」、サウジアラビア外務省は「パレスチナ人民に対する飢餓、虐待、民族浄化という犯罪」と強く非難しました。ヨルダン外務省は、国際法違反を指摘し、支援物資搬入のため検問所を開放するよう求めました。
国連 人権状況さらに悪化
しんぶん赤旗 2025年8月10日
【カイロ=米沢博史】国連のグテレス事務総長は報道官を通じて声明を発表し、「(計画は)危険なエスカレーション」であり、すでに壊滅的な状況をさらに悪化させる恐れがあると警鐘を鳴らしました。イスラエル政府に対し、パレスチナ占領地から全入植者を撤退させ、違法な駐留を連やかに終わらせる義務を課した国際司法裁判所の勧告的意見を順守するよう強く要求。違法な駐留の終結と「2国家解決」なしに持続可能な解決策はありえないとした上で、「ガザはパレスチナ国家の一部であり続けなければならない」と強調しました。
ターク国連人権高等弁務官も声明を発表。計画について「より大規模な強制退去や殺りく、耐えがたい苦しみ、無分別な破壊、残虐な犯罪につながる」とし、「速やかに停止しなければならない」と強調し、ガザヘの全面的な支援物資の搬入を認めるよう求めました。
人質見捨てる行為 イスラエルの家族会
しんぶん赤旗 2025年8月10日
【カイロ=米沢博史】イスラエルの人質・行方不明者家族会は声明で、「占領継続は人質を見捨てる行為であり、軍指導部や国民多数の意思を無視している」と非難しました。戦闘拡大はガザの地下トンネルに捕らわれた人質をさらに危険にさらすとし、交渉による包括的合意こそ唯一の解決策だと訴えました.
「制圧」は全面占領の一環 すでに75%制圧
しんぶん赤旗 2025年8月10日
イスラエル軍はすでにガザ地区の75%を制圧しています。最大都市ガザ市には避難民も含め90万人がいます。このガザ市の制圧は同地区の全面占領の一環です。「どこにいけば? 海に?」との住民の悲痛な叫びをロイター通信は伝えています。
イスラエルはガザ地区を1967年の戦争で占領しました。占領は他国の領土を武力で支配することです。
イスラエルはパレスチナ人の抵抗を受け、2005年に入植地を閉鎖し軍をガザから撤退させましたが、境界を管理し、空域、海域を支配。以来、何度も軍を侵攻、撤退させた後に、23年10月以降、侵攻を続けてきました。
国連機関などは05年以降も、国際法違反の占領状態と見なし、占領の終結をイスラエルに求めてきました。
他方、イスラエルの今回の計画について「再占領」とする表現があるのは、05年以前にあったイスラエル軍の駐留の復活という意味からです。
イスラエルの治安閣議が今回決めた停戦条件の一つは「イスラエルによる治安支配」です。イスラエルが停戦後も軍、治安部隊を駐留させ、武力で支配する意図、全面占領の意図を裏付けています。 (カイロ=米沢博史)
ガザのため立ち上がろう 米ニューヨークでデモ
しんぶん赤旗 2025年8月10日
米東部ニューヨークで8日、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区でのジェノサイド(集団殺害)に抗議して市民がデモ行進しました。「ガザのために立ち上がろう」と銘打った取り組みで、参加者らはイスラエルが飢餓を武器米NYでデモとして使っていると非難しました。
参加者は「米国はイスラエル支援をやめろ」「(イスラエルの)ネタニヤフ首相とトランプ米大統領は戦犯だ」「イスラエルはすべての占領をやめろ」などと書いたプラカードを掲げて歩きました。