植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
太平洋戦争終戦の日は1945年8月15日としてすでに定着していますが、それはポツダム宣言受諾を「国民に通知した日」で、正しくは、東京湾上の米戦艦ミズーリ号上で重光葵外相(当時)が降伏文書に調印した1945年9月2日が戦争終結の日になるということです。
米、英、中の首脳が同年7月26日に発出した「ポツダム宣言」には、「無条件降伏」を受け入れなければ「日本国は迅速且つ完全なる壊滅あるのみ」と書かれていました。それを日本政府が黙殺したところ米軍は広島と長崎に原爆を投下しました。その事態を受けて日本政府はポツダム宣言受諾を決定しました。
ソ連は同年8月8日に日ソ中立条約を破棄して対日戦争に参戦しました。それは同年2月、クリミア半島のヤルタに米大統領、英首相、ソ連首相が集まり、第二次世界大戦後の戦後処理について協議した際に、「ソ連が独降伏後3ヵ月以内に対日参戦する」という約束=「ヤルタ秘密協定」(南樺太、千島列島のソ連帰属などを含む)を実行したのでした。
植草氏は、「ポツダム宣言」(7月26日)の受諾表明(8月15日)、降伏文書の調印(9月2日)、それにソ連の参戦(8月8日)などの関連を説明し、日本が侵略と植民地支配の過ちを犯し、敗戦の決断を先送りして膨大な国民の犠牲を生んだことを明確にしました。
そして私たちがなすべきことは過去を直視して過ちを繰り返さないことであると述べます。
併せて同氏のブログ記事「参政党の危うさ」を紹介します。
記事は、「敗戦から80年経ち、いまや戦争を知る国民は1割になった」と書き起こされ、先の参院選の大きな特徴は極右勢力の台頭であるとして、そのなかでも勢力を伸ばした参政党の憲法草案について取り上げました。
それは要するに明治憲法の引き写しのようなもので、近代憲法論の到達点というべき「国民主権」(権力の源泉が国民にあり国民が国家を統治する権利を持つ)という原則や「基本的人権の尊重」などを悉く投げ捨て、「国民に防衛の義務を課し、教育勅語を尊重し、天皇が元首であり、国が主権を持つ国家に日本を変える」というもので、「日本を大日本帝国憲法下に戻す考え方と解釈して差し支えないと思われる」と指摘します。
一体そんな参政党が何故爆発的な人気を博したのか、ある評論家は「参政党の支持者は政治的リテラシーに欠ける人たち」と評しました。参政党の躍進は今回のみの現象であることを切に願います。
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侵略と植民地支配=国策の誤り
植草一秀の「知られざる真実」 2025年8月15日
80年前の敗戦。日本が降伏文書に署名したのは1945年9月2日。これによって日本敗戦が確定した。戦争終結は1945年9月2日である。
8月15日はポツダム宣言受諾を国民に通知した日にすぎない。
「ポツダム宣言」は主にアメリカによって用意され、イギリス、中華民国の蒋介石がおおよそ同意して7月26日に米英中3国の共同宣言として出された。
その内容は
「戦争を終結するの機会を与ふる」条件として、
・日本に「平和、安全及正義の新秩序」が建設されるまで連合国軍が占領する
・日本の主権は、本州、北海道、九州及四国並に吾等の決定する諸小島に限定する
・俘虜を虐待する者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へる
・全日本国軍隊の無条件降伏
を明記するものだった。
また、第十二項に、
「前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ」
と明記された。
ポツダム宣言は1945年7月27日午前4時20分(日本時間)に公表され、ポツダム宣言に対する日本政府の反応を28日付の朝日新聞朝刊は 「政府は黙殺」「多分に宣伝と対日威嚇」の見出しで報じた。鈴木貫太郎首相は後年の回想録に「この宣言は重視する要なきものと思う(と言った)」と記した。
ポツダム宣言を「黙殺」した直後に米軍は広島と長崎に原爆を投下。この事態を受けて日本政府はポツダム宣言受諾を決定した。ポツダム宣言は 宣言の「条件」を受け入れない「日本国の選択は、迅速且完全なる壊滅あるのみとす」と結んでいた。
敗戦の決断が遅れ、広島、長崎に原爆が投下された。そのために膨大な国民が犠牲になった。
米軍が沖縄に上陸した際、日本政府は沖縄を捨て石にして、本土決戦までの時間を稼ぐことを沖縄の役割とした。広島と長崎に原爆が投下され、日本壊滅が現実のものになることが明白になるまで無謀な戦争を継続した。
そして、ソ連は1945年8月8日に日ソ中立条約を破棄して対日参戦。ソ連のだまし討ちと言われるが、ソ連の対日参戦には根拠があった。
1945年2月、クリミア半島のヤルタで、アメリカのルーズベルト大統領、イギリスのチャーチル首相、ソ連のスターリン首相が集まり、第二次世界大戦後の戦後処理について協議。
会談でソ連は、ドイツ降伏後3ヵ月以内の対日参戦をアメリカとイギリスに約束。これが「ヤルタ秘密協定」。「協定」はソ連の対日参戦と南樺太、千島列島のソ連への帰属などを軸とする戦後の領土問題について合意したもの。
ソ連はドイツ降伏からきっちり3ヵ月目の8月8日の日付が変るタイミングで対日参戦。
9月2日の日本の降伏文書調印後の5日までに南樺太、千島列島等の占領を完了した。
ソ連の対日参戦と戦後の南樺太、千島列島のソ連帰属は、米国、英国の了解の下に決定された協定合意事項である。
日本の国策の誤りは1995年の村山首相談話が示す通り、侵略と植民地支配である。
石橋湛山は侵略ではない「小日本主義」を説いた。
侵略と植民地支配の過ちを犯し、敗戦の決断を先送りして膨大な日本国民の犠牲を生んだ。
私たちがなすべきことは過去を直視して、過ちを繰り返さないことである。
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参政党の危うさ
植草一秀の「知られざる真実」 2025年8月15日
2024年9月時点で日本の人口は1億2376万人。
うち80歳以上が1290万人で10・4%。90歳以上が282万人で2・3%。
敗戦から80年。戦争を知る国民が1割になった。
敗戦時に10歳以上だった国民は全体の2%。戦争を知る世代が消えつつある。
「戦争を知らないやつが出てきて日本の中核になったとき、怖いなあ」と田中角栄氏が述べたという。
7月の参院選の大きな特徴は極右勢力の台頭。
極右に分類できるのは、自民党旧安倍派、保守党、参政党。維新もこれに近い。
参政党が勢力を伸ばした。
参政党の憲法草案を見ると、前文で、「国民も天皇を敬慕し、国全体が家族のように助け合って暮らす」とし、「これが今も続く日本の國體(こくたい)」と記述する。https://x.gd/QfwEB
第一条で「日本は天皇の治める君民一体の国家である」と定める。
参政党草案で天皇は「元首」とされる。主権については「国は主権を有し」と規定する。
「国民」については、父または母が日本人であり、日本語を母国語とし、日本を愛する心を有すること を基準として法律で定める、とする。国民であるかどうかを法律で規定するということ。
国民の権利については権理には義務が伴い、自由には責任が伴うとして、権理及び自由は、濫用してはならない とする。
教育に関しては国語と古典素読、歴史と神話、修身、武道、及び政治参加の教育は必修とする
教育勅語など歴代の詔勅、愛国心、食と健康、地域の祭祀や偉人、伝統行事は、教育において尊重しなければならない の条文を置く。
「国まもり」として 国は、自衛のための軍隊(自衛軍)を保持する と規定し、国民に対しては 国民は、子孫のために日本をまもる義務を負う と定める。
参政党の神谷氏は街頭演説で
いま言ったような歴史認識、先の大東亜戦争は日本だけが悪かった、日本がアジアに侵略した、アジアの人たちにすべて迷惑をかけた、日本は一生謝り続けないといけない、こういった自虐的な歴史観も私たちは反対です と述べた。 https://x.gd/da6ww(54分15秒~30秒)
この歴史観に立ち、国民に防衛の義務を課し、教育勅語を尊重し、天皇が元首であり、国が主権を持つ国家に日本を変えるという。
日本を大日本帝国憲法下に戻す考え方と解釈して差し支えないと思われる。
神谷氏が述べた街頭演説の主張は論理のすり替えだ。
「日本だけが」、「一生謝り続ける」に対する抗議を示して同調を得ようとするものだが、発言の内容の他の部分は否定しきれないものだからだ。
「アジアに侵略した」「アジアの人たちに迷惑をかけた」ことは紛れもない事実。
この事実を認めることを「自虐史観」と称して否定するなら完全な誤りである。
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