独自の視点で世界を斬る田中宇氏が掲題の記事を出しました。
「ウクライナが親露に転向して終戦する」とは耳(いや目)を疑うような話ですが、真実と思わせる内容になっています。
トランプは15日を間近にして、「終戦」よりは「平和の構築」が重要と分かりにくいことを発言しました。しかし結果的にそれは15日の会談の内容がどう振れようとも、自分の構想している方向に誘導できるという自信があったからと思われます。
15日のプーチン・トランプの打合せで合意したことは、「ゼレンスキーは当面、戦後のウクライナの大統領として延命する」、「ウクライナの安全の保障」はNATOではなく、「国連常任理事国(米露中英仏・P5)を中心とした多極型の国際機構を新たに作る」ことで行うというものでした。
この新機構を作ってウクライナの安全を保障するという案は、開戦から1か月後の2022年3月末にロシアが提案し、ウクライナもいったん同意したものの、英国の横やりが入ったため「拒絶」に転じた「イスタンブール協定」の中にすでに盛り込まれていました。
NATOがロシアに適わないことは既に証明されているし、NATOは1992年にロシアのゴルバチョフとの間で「NATOの領域を1ミリたりともロシア側に進めない」と約束したのに、ウクライナをNATOに取り込もうとしてロシアを激怒させたのでした。
こののちどう展開するのか期待が出来そうです。
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ウクライナが親露に転向して終戦する
田中宇の国際ニュース解説 2025年8月19日
ウクライナ戦争は、長期化するほど、これまで米覇権の黒幕だった英国やその傀儡である西欧(総称して英国系)が政治経済の両面で自滅していく。
そのため、既存の米覇権体制を壊して世界を多極型に転換させたいトランプとプーチンは、ウクライナ戦争を早く終わらせたいと言いつつ、実際は長期化するつもりだと私は分析してきた。8月15日のアラスカでの米露首脳会談についても、私はその線で見ていた。
だが8月18日、ゼレンスキーと英仏独伊など欧州の首脳たちが大挙して訪米してトランプと話し合った後のトランプやゼレンスキーの言動を見ると、今回の米露首脳会談に関する私の分析が間違っていたと感じられる。(米露首脳会談を今やる意味)
ゼレンスキーは、自分の政治的・生物的な延命を最重要に考えている。トランプとプーチンは、これまでウクライナ戦争の長期化を画策してきたが、今回方針を大転換し、ゼレンスキーを誘って延命させる代わりに、ゼレンスキーはドンバスとクリミアがロシア領になったことを認め、見返りにロシアなどから(自分と国家の)安全を保障してもらい、ウクライナ戦争を終わらせることにした。
これから、戦後のウクライナの安全を保障するため、国連P5(米露中英仏)を中心とした多極型の国際機構を新たに作る。冷戦型(露敵視)のNATOでなく、多極型の新機構がウクライナに安全を与える。
新機構の主導役はロシアだ。要するに、戦後のウクライナはロシアの傘下に戻る。ゼレンスキーは当面、戦後のウクライナの大統領として延命する。(Europe Demands 'Security Guarantees' For Ukraine ... Russia Can Give Those)(Putin has agreed to ‘security guarantees’ for Ukraine - Trump)
これらのことは、まだ発表されていないが、あちこちに片鱗が見える。首脳たちが「ウクライナはNATOに加盟しないが、NATOの5条のような形でのウクライナへの安全保障の付与は行う」と表明している。8月18日のトランプとゼレンスキーらの会合の主な議題が、終戦後のウクライナへの安全保障のやり方についてだったことも報じられている。('Security guarantees' take center stage at White House meetings)(Zelensky White House meeting today could spell end of the war)
新機構を作ってウクライナの安全を保障する案は、開戦から1か月後の2022年3月末にロシアが提案し、ウクライナもいったん同意したが英国の横やりが入って拒絶に転じた「イスタンブール協定」の中に、すでに盛り込まれていた。(Main Provisions of the Treaty on Ukraine's Security Guarantees (Istanbul Communiqué) (2022))
トランプやマクロンは、トランプとプーチンとゼレンスキーの三者会談が、数週間以内に行われると言っている。その会談をいつどこでやるかを相談するために、トランプがゼレンスキーらとの会合を中座してプーチンに電話して40分間話し合ったと報じられている。(EU, US expect Putin-Zelensky meeting to take place soon)(Trump puts European leaders on hold to talk with Putin)
ロシアは、開戦直後から断続的に行われてきたイスタンブールでのウクライナとの交渉の体制を格上げして、今後の三者会談の枠組みとして使いたいと言っている。
今後いきなりトランプとプーチンとゼレンスキーが会うのでなく、先にイスタンブール交渉を再開して露ウクライナ間で実務者協議をして概要を決めてから首脳鼎談することになるかもしれない。(Trump interrupts Ukraine talks with European leaders to call Putin)
ゼレンスキーは、トランプが大統領に返り咲いてから何度か会ってきたが、8月18日の会合が一番良い会合だったと話している。
もしかするとゼレンスキーは、以前からトランプに、ウクライナをロシアの傘下に戻す形で戦争を終結したいと非公式に提案していたが、トランプやプーチンは、英欧がもっと自滅するまでウクライナ戦争を続けたいので無視していたのかもしれない。(Zelensky hails ‘best’ meeting with Trump)
トランプは再就任後、米国をウクライナ戦争から引き抜いて、英仏独EUなど欧州の英国系だけがウクライナ支援とロシア敵視を続ける構図に移行する作業を続けてきた。
英欧は、自分たちだけでウクライナ戦争を背負うと、財政的・経済的に破綻してしまうのでやりたくない。できない。
トランプは、英欧の反対を押し切って、ウクライナ戦争からの米引き抜きと英欧化をどんどん進め、8月15日には勝手にプーチンをアラスカに呼んで野合してしまった。突然、世界の中心に米露の協調体制が出現した。(米露協調体制の確立)
トランプは、ウクライナの戦争終結に関するプーチンの要求をすべて入れた終戦案を自分の案としてゼレンスキーや英欧に提示した。
ドンバスとクリミアの公式なロシア領化、ウクライナの非武装化と中立化(露側が言うところの非ナチ化)、ロシア主導の多極型国際機構によるウクライナへの安保付与などだ。
トランプはゼレンスキーや英欧に対し、この案に沿って終戦するか、この案を拒否して米国抜きで(米国から高価な兵器を買い続けて)ロシアと戦争し続ける(そして英欧は財政破綻する。米国は諜報面でロシアを支援する)のか、二者択一を迫った。
米国抜きで、英欧は勝てない。英欧とゼレンスキーは、トランプ案を受け入れて終戦する道を選んだ。(An Offer He Can't Refuse)
英国のスターマー首相は、ゼレンスキーに同行して訪米しつつ、トランプにどう対処するかゼレンスキーに教授していたと露側で報じられている。
英国は今回、ウクライナがロシア傘下に戻ることに同意したのか?。それとも、英国自身は猛反対したが、独仏伊など他の欧州諸国がトランプ案を受け入れたので、孤立を避けるためにやむをえず同意したとか?。(Starmer instructed Zelensky how to behave around Trump)
実のところ、スターマーにも選択肢はなかった。就任から3か月しか経っていないのに、スターマーの支持率はどんどん落ちており、英国は総選挙の前倒しが求められている。
諜報界のリクード系(反英派)が英国の左翼やイスラム主義者(移民)を過激化して社会の破壊を進めた結果、英国は草の根右派と左派・イスラム過激派との内戦が近いと指摘されている。
英国自身、米国抜きでウクライナを支援してロシア敵視を続ける余力はもうない。(British Army Colonel: Civil War Is Coming)
ウクライナは、冷戦終結で崩壊したソ連から分離独立した後、親ロシアと親西欧(英国系)との間を行ったり来たりしてきた。
ウクライナは今回、多大な犠牲をはらって親西欧の動き(ウクライナ人が決めたのでなく英国系が政権転覆して引っ張った)をして失敗し、これから親露の方向に戻っていく。
ウクライナは、英国系の傘下にいるより、ロシアの傘下にいる方がましだ。日本人の多数を占める「うっかり英傀儡」の人々には理解不能だろうが。(米露対話と日本)
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。