安倍首相は12月に入って、それまでの対中国牽制の姿勢から俄かに中国の「一帯一路」と連携することを表明しました。しかしそれは世界の趨勢に表面上従ったまでで、反中国の思いはどうしても消せないようです。
今回の6か国訪問は、北朝鮮の脅威を訴えるのを表向きの目的にしていたものの、反中国包囲網を築きたいという下心がミエミエでした。しかし当の6か国はもともと中国と親密な関係にあるので殆ど反応がなかったということです。
安倍首相は再登場してからの5年、海外のあらゆる場面で中国包囲網の構築に執着してきましたが、まったく実を結んでいないどころか、世界各国はどんどん中国に近づいているというのが実態で、今回のバルト3国訪問もロシアを不快にさせた筈だといわれています。
元外交官の天木直人氏は、「今回の訪問は少なからず中国を刺激した筈」、「ロシアを刺激したのは間違いなく、北方領土解決にも影響が出る」、「何が国益なのか、戦略的に外交をやっていないから支離滅裂になってしまう」と述べています。
自分は北朝鮮制裁の先頭に立っていながら、その一方で拉致被害者の救出も断言するという矛盾を自覚していない人間なのだから・・・というしかありません。
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中国包囲失敗し…ロシアまで怒らせる安倍外交の支離滅裂
日刊ゲンダイ 2018年1月16日
首相として初のバルト3国と東欧3カ国を歴訪している安倍首相。北の脅威を訴えることが各国訪問の目的だが、隠れたもうひとつの狙いは、相変わらずの中国包囲網だという。しかし、中国包囲網は完全に失敗。しかも、ロシアまで激怒させている。一体、何をしに遠くまで出かけていったのか。
■国益を損なう欧州6カ国訪問
安倍首相の6カ国訪問の狙いが、中国包囲網にあるのはミエミエだ。外務省関係者がこう言う。
「習近平政権が推進する一帯一路構想の『一帯』とは、中国―中央アジア―欧州を結ぶシルクロード経済帯です。今回、安倍首相が訪ねるバルト3国と東欧3カ国は、ちょうど欧州への入り口の国々。すでに中国は、この6カ国と経済的な関係強化を進めています。安倍首相の訪問が中国を意識したものなのは間違いありません。実際、安倍首相は各首脳と法の支配を含む基本的価値観の確認をし、中国を牽制しています。しかし各国は、ほとんど反応していません。彼らにとっても中国は大事な国ですからね」
政権が発足して5年。安倍首相は「地球儀を俯瞰する外交」と称して中国包囲網の構築に執着してきた。だが、まったく実を結んでいない。それどころか、世界各国はどんどん中国に近づいている。
昨年5月の「一帯一路」の初の国際会議には130カ国以上の代表が出席。日本が参加を見送っている中国主導の「AIIB」(アジアインフラ投資銀行)には、英仏独のほか、ロシア、韓国、オーストラリアなど84カ国が参加表明。今後、米国の参加も取り沙汰される始末だ。包囲されているのは安倍首相の方。元外交官の天木直人氏が言う。
「安倍外交は支離滅裂です。安倍首相は年初に、今年中の日中関係改善に意欲を示し、一帯一路も協力姿勢に転じています。にもかかわらず、今回の訪問は少なからず中国を刺激したはずです。中国と対立するより、取り込んだ方がよほど国益にかないます。何が国益なのか、戦略的に外交をやっていないから、支離滅裂になってしまうのです」
安倍外交がバカ丸出しなのは、今回の6カ国訪問が、ロシアのプーチンまで激怒させてしまうことだ。
もともとバルト3国は、ソ連に併合された過去を持ち、反ロ感情が根強い。
その上、最近ではロシアのクリミア半島併合の際、展開したNATO軍の拠点となった。ロシアにとっては極めてデリケートな国々なのだ。
案の定、エストニアのラタス首相がウクライナ問題をめぐる対ロ制裁に触れ、安倍首相はG7との連帯維持を表明せざるを得なかった。プーチンは面白くないはずだ。
「ロシアを刺激したのは間違いありません。北方領土解決にも影響が出るでしょう。果たして安倍首相は国益を考えているのか。地球儀を眺めて、遊びにいっているような感覚なのではないでしょうか。ロシアと対立する国への訪問がどういう意味を持つのか分かっていないのでしょう。今回も『首相として初の6カ国訪問』と騒がれて、喜んでいるだけに見えます」(天木直人氏)
安倍外交でどんどん国益が損なわれる。